白望山を背にし、俺は再び厚く積もった雪の上を歩き始めた。
遠野側へ下り、林道の途中に待たせてあるパティと合流するのだ。
下りの方が足腰への負担は大きく、増してや足元は不安定だ。林道に戻るまでは油断せず、ゆっくりと慎重に下って行く。
振り返ってみると、随分と高いところまで上って来ていたことが実感出来る。登山道は林に覆われていて、上っているときにはそれが感じられ辛いが……。
山はこの僅かな時間のうちにも、刻一刻と姿を変えて行っている気がする。
気を抜くと、あっという間に道に迷いそうだ……。
木が幹の途中でぽっきりと折れていたりと、かなり危険なところもある。
今歩いている頭上の木も、まさにこうならないとも限らない。何が起こっても不思議ではない場所だ。
時折緩やかになり、また厳しくなる斜面を慎重に下り、広場では次の道を見失わないように目配せする。
何とはないが、今俺は白望山と一体になれている気がして、少し誇らしい。
やがて白望山登山で目印になる、大きな洞のある木が見えて来た。
洞の主はやはり留守のようだ。
此処まで来れば、道程は残り半分といったところだ。