遠野放浪記 2014.03.23.-07 恩徳夜話・そのに | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

恩徳も北端に近付き、周囲の山も目線の高さにまで下がって来た。

あそこの家は入り口まで雪掻きがされているため、冬でも住んでいる人がいるのかもしれない。

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この倉庫は開けっ放し。使われてはいなさそうだ……。

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その他の大部分の家は、外壁がかなり風化していたり、完全に雪に塞がれて出入り出来ないようになっていたり。やっと人が住んでいるらしい家を発見出来ただけに、その対比が何とももの悲しい。

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恩徳集落も終わりが近い。道はまた少しずつ傾斜を増し、此処から本格的な峠越えの道に変わって行く。

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この恩徳には、例の遠野最凶の心霊スポットがあることで有名だ。小金目当ての強盗に殺された山伏の怨念が彷徨い、宜保愛子も一目散に逃げ出したというあの屋敷だ。

恩徳に来たからには、怖いもの見たさで件の幽霊屋敷をちょっと探してみようか、なんて思ったりもしていたのだが、何せこの雪ではどの建物が幽霊屋敷なのか、全く見分けがつかない。屋敷の持ち主も、俺が生まれるよりも前に街に下りてしまったというから、今や原形を留めているのかすらもわからない。

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アレだろうか……いやそれとも、こっちだろうか。

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建物の向かいには、遥か昔に滅びてしまった神社があるという話だが、この雪ではそれも発見するのは難しそうだ。

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かつては金や鉄を精錬する技術は大変貴重で、それ故に産鉄民は常に追われ、人里離れた山奥に隠れるようにして暮らした。恩徳の山伏屋敷伝説もそんな悲劇のひとつだし、琴畑や白望山に残るマヨヒガ伝説もそう。殊に小国との境界線上にそのような話が数多く残されているのは偶然ではあるまい。

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おぞましくも悲しい歴史は、雪の下に埋もれたままにしておくのが良いのかもしれない。

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やがて、集落が終わると共に通行止めの看板が姿を現した。この先間も無く立丸峠、冬の間は越えること叶わない。

俺の恩徳巡りの旅も一旦、このあたりでひと区切りだ。また暖かくなったら、足を運んでみよう。