旧盛岡銀行の向かいにはバイマックルーというタイ料理屋があり、盛岡市内でもかなりの人気を誇っているのだが、今日俺が会いたい人というのは、この店の店長だ。
俺が住んでいる文京区の本郷には、日本一美味いインド料理屋
があるのだが、その店の社長が新弟子時代に修行していた店で先輩だったのが、バイマックルーの店長なのだ。
店に入り、インド料理屋の紹介で来たことを話すと、奥から店長が出て来て歓迎してくれた。
聞けばインド料理屋の社長も、時々岩手に来ているらしく、こんなところでも岩手と縁があったのかとびっくり。人生、何が何の切っ掛けになるのか本当にわからない。
店は俺が入ると同時に満席になった。競争の激しい中ノ橋でも、かなりの人気を誇っているようだ。
料理を注文して待っていると、店長がサービスでチャーイェン(チャイのタイ版)を御馳走してくれた。
程無くして料理が運ばれて来た。
今日発注したのは大人気のイエローカレーと、カニとたまごをスパイスで炒めたタイ料理の定番、プーパッポンカレーだ。
タイのカレーは、日本式ともインド式とも違い、ナンプラーやココナッツミルクといった独特の調味料がとても味わい深い。よく「誰が作ってもタイカレーは失敗しない」なんて言われるが、だからこそ料理人の腕が問われる料理だと思う。
俺も東京で様々な店のタイ料理を食べて来たが、バイマックルーのイエローカレーとプーパッポンカレーは、ちょっと他では食べたことがない美味しさだった。これは盛岡でも不動の人気を誇るわけだ。
たっぷりの美味しい料理でおなかいっぱいになり、そろそろ駅に戻って姉帯村へ向かう準備をしよう……と席を立つ。会計時に、店長に記念写真を一緒に撮っていただけないかとお願いしてみたところ、ちょっとシャイな店長ははにかみながらも応じてくれた。
今日は通過点になる筈だった盛岡で、またひとつの新しい縁が出来た。最後に店長とがっちり握手を交わし、また訪れることを約束して店を後にした。