南へ向かう東北本線に乗車した俺は、次の乗り換えまで何をするでもなく、車窓の外の真っ白な風景を眺めて過ごした。
青空が戻って来たとはいえ、冬の日差しは優し過ぎる。その光が届かない場所には、冬の強い冷気が我が物顔で居座っている。
東北の冬は、まだ始まったばかり。これから春になるまで数ヶ月もの間、人々は厳しい寒さと戦って行くのだろう。
岩手県も南の外れが近付き、景色も解放的になって来た。少しずつではあるが、日差しは強さを増し、より暖かい地域へと近付いていることが感じられる。
次に乗り換える列車は、もうホームに到着して乗客を待っていた。
一年が終わる日に遠くへ移動する人もいないのか、車内は空いている。
俺はゆっくりと最後方の席に陣取り、列車の出発を待った。