上野から宇都宮を過ぎると、俺が大好きな宇都宮線の車窓が待っている。
北関東にも厳しい冬が訪れ、この時間になってようやく顔を出した太陽がか細い光で大地を照らす。
雪こそ降っていないが、目に見える風景はすっかり変わった。生命の色に溢れていた大地は、その幾つかの色を失い、じっと息を潜めて寒さに耐えている。
遠くの山々は雪を戴き、あの場所が今や人間のものではなくなっていることを示している。
やがて山が近付き、目に見える風景も変化しつつある。
人通りのない寂しい道に、春も夏も秋も、そして今も小さな神様が座している。
もう次の乗り換えが近い。この先には、また懐かしい、真っ白な風景が待っているのだろうか。
北関東から南東北に入り、この季節だけの特別な、ある種異質でありある種誰もが心の中に覚えている風景が待っている。