川を渡って丘を越え、俺はまたひとつの小さな街に辿り着いた。
道沿いに、小瀬川館跡と書かれた案内板が立っていた。
ということは、今度こそこの小さな街こそが小瀬川で間違いなさそうだ。
小瀬川さんは城も持っていたらしい。一見見晴らしが良いが、丘を越えなければやって来られないこの土地は、今でこそ舗装された道で走り易いが、当時は守りに適していたのかもしれない。
(説明に大瀬川さんという人の名前が見えるのは内緒だ)
遂に辿り着いた小瀬川は十数件の家が密集していて、これまでに見て来た集落よりも“街っぽい”感じがするが、やはり静かで、昼が近いこの時間帯に人気は無かった。
広い道に延びた家々の影が寂しい。もう少し涼しい時間帯になれば、何処からともなく小瀬川の住民たちが集まって来て、世間話に花を咲かせるのだろうか。
これが小瀬川の街か……。
何となく、この街に白望ちゃんが住んでいると想像しても何の違和感も無いような、のんびりとした空気が流れているように感じる。
しかし、肝心の白望ちゃんは此処にもいない。
白望山にもいなく、小瀬川にもいないとすると、何処に行けば白望ちゃんに会えるのだろうか……。
頭を空っぽにして小瀬川を歩き、特に風光明媚な土地でもランドマークがあるような土地でもなかったが、新しい空気を自分の中に取り入れることが出来た気がした。
今回の旅路の最後に小瀬川に出会うことが出来て、本当に良かった。