遠野放浪記 2013.11.02.-02 冬を目指して | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

北関東に差し掛かる頃になって、ようやく夜は明けた。


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黄金の稲穂は刈り取られ、寒々とした地面は白い絨毯が敷かれるのを待つのみだ。今日の空には雲が多く、まだ気が早いながら、今にも冬の精が落ちて来そうな気配すらある。

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冬支度を終え、荒涼とした北関東の田園を列車は走る。

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微かに残る秋の香りを名残惜しむように、カラスたちが地面を突いて何かを探している。

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列車は走る。その町に住む人を駅で見送り、自らは冬を目指して。

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空に垂れ込めた厚い雲の合間から、まだ秋が残っていることを示すかのように、神秘的な太陽の光が降り注いでいる。北関東から南東北へ、季節は巡る。

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この箒川の流れすら止まってしまうような時間が来るのだろうか。やがて来る、全てが凍り付く季節に備えて、山も川も今、何を考えているのか。

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もうすぐ旅の分水嶺である。季節と季節の合間にも絶えず時間は流れ、車窓は新しい表情で俺を迎えてくれる。