遠野放浪記 2013.09.23.-10 旅は終わらない | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

東京の、それも大きな街の夜は相変わらずだ。本来は人が眠るべき時間に眠らず、虚構の光の中を、存在しない何かを求めて必死に足掻いているように見える。


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眠らない街の姿は儚く、脆いものに見える。

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俺は虚飾の喧騒を嫌い、裏通り――池之端から東京大学の裏側を通って家路に就いた。

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このあたりには昔から住んでいる人が多く、街の灯りは広小路のそれとは違い、暖かい。

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尤も東京都内であるから、遠野の夜とは比べ物にならないくらいに明るいが、それでも砂上のネオンの光に塗れた街の片隅に、人々のための灯りがあることが感じられる。

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今日の東京は少し雨が降ったみたいで、道は若干濡れていた。

多くの人にとっては取るに足らない事だろうが、自然の恵みはこの街にも等しく齎されようとしていることが間違いなく感じられるのだ。

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本郷通りまで出ると、流石に車の流れが速い。

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坂を下れば、もう俺の家だ。

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結局、今回もこの場所に戻って来てしまった。俺は常日頃から、今この瞬間が人生の終焉であったとしても後悔しない生き方をしてきたつもりだが、俺の意志など些末なもので、こうして次の時間が用意されているあたり、俺の旅はまだ終わることは無いらしい。

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この後は晩ごはんの時間なわけだが、丁度俺の家の近くにある某スーパーの総菜コーナーが投げ売りを始める時間なので、俺も都会のハイエナどもに混ざって夜のおかずをゲットして来ようw



ということで総菜コーナーに残っていたのは、餃子に海老チリ、甘辛肉団子にチキンステーキといった中華セット。米か酒を用意しておかなかったことが痛恨の極みだが、旅が終わって今更自分で料理を始める気も起らない身体には、これだけで充分な御馳走だ。

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さて、今回の旅ではマヨヒガを発見するという目標を掲げて白望山に挑んだものの、その目標に関しては俺は何も成せずに遠野を後にした。しかし、俺の身体が健康で、遠野という土地が其処にある限り、俺は何度でもマヨヒガを発見する旅に出ることが出来る。そしてマヨヒガを発見した後でも、きっと次の謎が俺の前に立ちはだかり、俺を遠野に誘うだろう。

次の遠野への旅は、冬だろうか。それとももう少し早く、その機会に恵まれるだろうか。其処で何が起こるのかは、神のみが知っていること。だから俺は旅を止められないのである。