岩手県に入ってからも、大地を覆う金色は些かも衰えることは無い。
平泉、前沢、水沢……といった県南の大きな街も、例外なく秋の輝きを謳歌している。
これでもう少しだけでも太陽が顔を出してくれていたら……言うことなかったんだけれど。
列車は沿線の住民も、遠くから来た旅人も分け隔てなく金色の旅路へ連れて行く。
たった2ヶ月足らずの時間が、見るもの全てを変えてしまう。これからまた2ヶ月後には、荒涼とした大地が冬へ向かう姿が見られるのだろう。
秋の日は釣瓶落とし、とは言い得て妙だ。先月まであれだけ長かった日が、今はもう黄昏時へと向かおうとしている。この雲の向こうに、いったい何があるのか。秋を齎し、冬を呼び寄せるのは誰なのか。
花巻の上空は穏やかな顔をしていたが、これはやはり夜が近い空の色。
これが遠野に到着する頃には、どんな表情に変わっているだろう。3年振りの、秋の遠野が近い。