
昨日まさに歩いていた風景を、今上から見下ろしていることに形容し難い喜びを感じる。


高清水展望台からは、綾織だけは死角に入ってしまって眺めることが出来ないのだが、逆にこの場所にいる限り俺が綾織の素晴らしい景色を独占出来ると考えると、なかなかのものである気がして来る。

ちなみに、展望台へ続く道と眼下の綾織との間には小さな牧草地帯が横たわっているのだが、運良く鉄の扉が開いていると、少しだけ中に入ることが出来る。

暫し時間が過ぎるのを忘れ、綾織の水鏡を独占する。
どれだけ眺めていても満足することなどないが、最後の目的地である展望台に向け、再び歩き始めなければならない。

綾織展望台(天然)から高清水展望台の小屋までは、もうすぐである。道の傾斜がほぼ平らから僅かに下りに変わったところで、思い出のあの屋根が見えて来た!

小屋の脇からは、既に広大な遠野盆地が見え始めている。しかし本当に一番美しい風景を楽しみたければ、やはり小屋に入るのが一番なので、此処で立ち止まりたいところをぐっと堪えて小屋の入り口へ。


こうして、麓からおよそ1時間40分程度で高清水展望台に到着。パティと初めて一緒に登って来たということが、俺の実力以上のタイムで登頂出来たことへの何よりの助けになった。

新しい相棒に、一度はこの風景を見せたかった。それが今日叶ったことが嬉しい。

白から青に変わった遠野盆地との御対面――。