遠野放浪記 2013.05.03.-16 懐かしい場所 | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

塚沢神社から集落の中を抜ける道を通り、再び峠道に戻る。

後は一路遠野を目指すのみ。ずっと訪れたかった場所に足を運べた昂揚感から、足取りも軽い。


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集落から間も無く、俺はふたつ目の峠の頂上に差し掛かった。

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この峠の名前は知らない。しかし初めて宮守から達曽部を訪れた際に、非常に高い壁として立ちはだかっていたことをよく覚えている。

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峠から下り坂に差し掛かった付近に呼ばれ石がある。遠野遺産の中でも異彩を放つ奇岩で、この何処となく御茶目なフォルムも俺はよく覚えている。

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呼ばれ石が登場したということは、そろそろ上宮守の集落が近い。

見晴らしの良い坂の上からは、もう街が見えてきている。


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この上宮守の外れには、まきばのおもてなしという小さな店がある。

地元産の牛乳を使った濃厚なスイーツが観光客にも人気だとか。上宮守の街からもだいぶ坂を上って来ないと辿り着けないため、アクセスが良いとは決して言えないのだが、それでも2回来て2回ともレジ待ちの客が列を作っている光景が見られるあたり、やはり評判は良いのだろう。

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かく言う俺も、以前達曽部に向かう途中でソフトクリームをいただいた際に受けた衝撃は忘れられない。

濃厚なミルクの味が口いっぱいに広がるソフトクリームには、苦労して足を運ぶ価値が充分にある。宮守のわさびソフトや、長野の善光寺味噌ソフトなど、日本各地に足を運んでは御当地ソフトをいただいてきた俺だが、最終的にはこういった原点に回帰するのが自然な流れなのかもしれない。

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店の裏手から素晴らしい景色を眺め、甘いソフトクリームをいただく至福の瞬間。

孤独な旅路における一服の清涼剤である。

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視界には、上宮守から宮守駅へ向かう道と、これから俺が通ることになる最後の峠道が見えている。

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塞ノ神から小峠を越えたところで、宮守とはお別れ。

後ろ髪を引かれる思いだが、いつかは前に進まなければならない。ソフトクリームを平らげ、俺は再びパティと共に坂を下る。