達曽部は車を運転する人にとっては要衝の地であるのだが、流石に賑わっているのは十字路付近くらいで、少しそこから離れると途端に交通量も減り、家々の姿も少なくなる。
外野と作屋敷の境目くらい、道路脇に人目を忍ぶように小さな御社が立っていた。
そしてその奥に小さな祠。
少々草が茂ってはいるが、此処もまた地元の人たちに愛されてきたのだろう。
月山神社(仮)の隣には、金龍山宝泉禅寺という小さな寺がある。
達曽部の中心にある八幡神社などに比べて有名なわけではないが、きっとこの寺院が、このあたりの集落の中心を担う存在なのだろう。
孤独な道中でも、たまにこんな心がほっとする光景に出会えるのが嬉しい。
道は稲荷穴まで、ほぼずっと達曽部川と一緒に走る。
達曽部から稲荷穴までは12kmくらいある。附馬牛までの約半分だと考えても、かなりの道程だ。
川向こうに時々見える集落が、何だか別の世界の存在であるような気がして……旅とは孤独なものだ。
今日はパティと一緒なので非常に心強いが、全くの独り旅、逆にもっと大勢での旅……それぞれで、同じ道を歩いても感じることは全く変わるだろう。
やがて、行く手に寺沢高原へ向かう分かれ道が見えてきた。
このあたりから、道はいよいよ中斉に入る。
とはいえ、此処はまだ下中斉という、中斉の入り口に過ぎない。
俺が目指しているのは上中斉なので、まだ先は長い。