遠野放浪記 2013.01.14.-12 冬の終わり | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

ということで今回も無事に自宅近くまで戻ってきたわけだが、まだそんなに夜も遅くないので、近くの店で夕食をいただいていくことにした。

このあたりには店が多く、優柔不断な俺には悩ましいところだが、最終的に本郷通りから少し離れた場所にある路地に入り、壱岐坂近くまで歩くと見えてくる「サイノ」というインド料理屋に決めた。


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メニューは結構豊富で、グリーンカレーなんていうのもある。

グリーンカレーというとタイのイメージが強いが、それをインド流にアレンジしたのか、それともインドにも独自のグリーンカレーがあるのか……。


ということでグリーンカレーを発注すると、シェフが「ランチセットにしなくて良いのか」と聞いてきた。

え?今は夜ですよね?と聞き返したところ、どうやらこの店では一日中ランチセットを提供しているみたいだった。全てのカレーをセットにすることが出来、サラダとラッシーが付いてきてしかもライスとナンがおかわり自由という素敵なセットだ。

インド料理屋は基本的に、接客態度・サービス共に素晴らしく良いか、またはその逆かのどちらかだが、ここはシェフの雰囲気も明るく、間違いなく前者。たまにサービスし過ぎで商売としてやっていけるのかと心配になってしまう店に当たることもあるが、まあやっていけるからサービスしているのだろう。

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グリーンカレーはタイのものとは違い、イメージとしてはインドのチキンカレーにココナッツなどを投入した感じでポタージュに近かった。ピリッと甘辛で、今までのインドカレーでは味わったことが無いタイプの美味しさだった。

最初はライスで発注したのだが、ナンも同時に食べられるのが嬉しい。

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さらに、サイドメニューでネワリ焼肉というものがあって気になったので、同時に発注してみた。

名前の通り、ネパールで食べられている肉料理で、日本でイメージする焼肉とは違って、串焼きに近い。

種類は鶏、牛、豚、羊、砂肝の5つで、宗教上の理由で現地ではあまり食べられない牛がラインナップされているのが珍しい(インドカレー屋でも所謂ビーフカレーを見掛けることは少ない)。

値段も1本¥150程で非常に安く、肉をがっちり味わいたいならば全部頼んでみると良い。

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味もボリュームも非常に満足な夕食を終え、やたら陽気なシェフに挨拶して店を出た。


再び本郷通りを交差点まで戻り、菊坂を下って自宅へ。

此処にもサモサという無国籍料理屋(インド分多め)があるのだが、そこのシェフが戯れに作ったのか、小さなかまくらがあった。まさか、菊坂でかまくらを目撃する日が来ようとは。

小さ過ぎて中には誰も入れなさそうだが、元々「かまくら」という言葉自体、この雪の家のことではなく、雪の家の中に祭壇を作って水神様を祀る行事のことを指すので、やはり非積雪地帯に暮らす人々の中のかまくらに対する認識が誤っているらしかった。

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それにしても、菊坂もべちゃべちゃで非常に歩き難い。

普通に歩いていても足元が泥だらけになり、気が滅入ってくる……。

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しかも東京人はそもそも雪になれておらず、ろくな雪掻きもされていないことが惨状に拍車をかけている。

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やはりどんなに大変でも、東北の雪の方が良い。俺もそう遠くない将来に、雪がたくさん降る遠野で暮らしたいという気持ちが強くなる。

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およそ600mの菊坂を下ると、自宅はもう目の前だ。

帰り道で想定外の出来事に見舞われたものの、最終的に無事帰宅できたので、全て良しとしたい。

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ほぼ衝動的に出発した2013年最初の遠野旅行は、これまでとは違う何かを俺に齎してくれたように思う。新しい刺激に満ち溢れ、遠野の素晴らしさを再認識すると同時に、今年も遠野のおかげで素晴らしい一年になるだろうという期待と確信を抱くことが出来た。

次に足を運ぶのは……流石に衝動も一旦落ち着くだろうから(笑)春になってからだろうか。

北国・遠野の春は短く、だからこそ花も自然もそれを謳歌しようと懸命に輝く。思い返せば、初めて遠野を訪れた季節も春だった。再び同じ季節の遠野に身を置くことで、見えてくる何かがあるに違いない。


近いうちの再会を祈り、このあたりで冬の遠野旅行の筆を置く。