12月も下旬に差し掛かり、東京の寒さも日に日に増していった。
仕事はとても順調で、最後の一週間を残して既に年内の後片付けモードに入っていた。
もう少しで遠野と再会する。俺にはそれが楽しみでもあり、昔の恋人と久々に会うような不安な心境もあった。遠野は今でも変わらないのだろうか、それとも俺が知る遠野とは違っているのだろうか。
しかしそれでも俺は遠野に会いに行く。俺自身がそれを欲するから。
あれから1年と11ヶ月、俺の耳にはいつも強い風の音が聞こえていた。土と草木の香りがする強い向かい風だった。ともすれば吹き消されてしまいそうな小さな命の炎、俺はそんなものにも逃げずに必死に立ち向かってきた。いつだって、遠野と遠野の人たちが背中を押してくれた。俺はそれに気付いていなかったのかもしれないけれど、確かにそんな感触が残っていたように思う。
今も向かい風は吹いているのだろうか。いや、どっちだって良いか……心がそこにあれば。
いよいよ出発の時だ。
今度は俺の生き様を、遠野にぶつけに行く。