20年ぶりに溶接。 | 酋長のひとりごと

酋長のひとりごと

ようやく歴代のブログを1本にまとめました。最初からお楽しみ下さい。

2021年4月より、「夏男のひとりごと」に名前が変わりました。が、「それではつまらん」と外部からのご指摘を先程受けまして、戻します。てへっ☆

大昔、鉄工所のようなところで働いていましたが
溶接の練習をさせてもらったところ
「酋長くんは溶接のセンスはねぇな!」と
お爺ちゃんにダメ出しをくらっていました。
それ以来どうにも心に引っかかっていたのですが
店内から溶接機が出てきました…。



しかも超間抜けな話なのですが、
タウンエースという車はフレーム付きの
セミモノコックボディという構造なのですが、
普通のフルモノコックボディの車のように
サイドシルにジャッキを当てて持ち上げると
そこには強度がまるでないという…。
ええ、ベッコリやってしまいました。
そのままにしておくのも格好悪いので
切開して板金修正しておきます。



まあ、ここまでは慣れているので大丈夫。
(良く分かりませんが、結構引っ張って直してます)

で、ここからが本題で、
切開した穴は塞がないと車検上もまずいので
なんらかの方法で鉄板をボディにくっ付けます。
鉄板の厚さは薄板、0.8mmです。
ここまで薄い板はリベットで留めてしまうことが
一般的な施工方法なのですが

溶接してみたくない?と余計な心が(笑)。




出てきましたのはごく一般的なアーク交流溶接機、
出力は100V時で15Aから50Aといったところです。
200Vを接続すればもっと大パワーですが、
そこまでの出力は今日は不要のようです。

しかし、ここから先は何の知識もノウハウもないので
ご近所にお住いの職人のご隠居さん、てらむらさんに
ご登場いただきました。
ちょっと電話してみたら「うん?今行くわ!」と
有難いことにすぐご足労頂きまして申し訳ない!
ここから要点を箇条書きにまとめます。

1.溶接用眼鏡は絶対要る。
裸眼で作業は見れない。紫外線で目が火傷する。
アークが発生するまでは暗すぎて何も見えないが
光り始めると作業が目視で確認できる。

2.溶接棒は3種類くらい常備する。
母材の厚みで棒の直径も変えるので、
1.6、2.0、2.3mmくらいの3種を用意する。
溶接棒の太さもセッティングのうち。

3.電流値は相場どおりで。
うん、だいたいでいいんじゃね?
実際やってみてきれいに溶け込むか
確認したらいいと思う。

4.体勢がとても大事。
母材と棒の間隔を正確に1mmくらいに保ちながら
溶ける棒を送り出すし、位置も移動させるので
ひじを何かに押し付けて固定する。
肩から全体を動かしているようじゃ駄目だ。
母材も台の上に乗せて固定する。

おおー、なるほど!以上を踏まえて作業です。

そもそもアーク溶接って何じゃらほい?ですが
もの凄いザックリとイメージで説明しますが
高エネルギーの電力を使うと、
絶縁体であるはずの空気中も
場合によっては通電したりします。
すると高温のアーク(火花)が発生しますので
溶接棒と母材が溶けだしてきます。

溶接棒と母材の高温でさらに電力が流れやすくなり
いつしか連続して溶接棒が溶け出すのですが、
つまりアークをパンパンっと出して、
先端を暖気してやる必要があるわけです。



そのまま溶接棒を母材に押し当てても
ただの回路のショートになってしまうので
溶接棒を2,3回タンタンっとタップします。
すると「バチッ!」「バチッ!」という音が
「ジュオッ!」「ジュオッ!」と変化します。
それで暖気完了と判断していいでしょう。



タップする方法もいいのですが、
目測を誤ると母材にすぐくっ付いてしまい
ただのショートになってしまう場合もあります。
本人のやりやすさにもよりますが
この場合母材を棒でなでるようにすると
上手くアークが発生します。
「バチバチバチチチチジュオー!」と
連続的に音が変化します。



その状態まで行きますと、
溶接棒の先端が赤く発熱していますので
溶接をしたい部分にそっと添える感じで
棒の先端を持っていきます。
すると先ほどのように母材にくっ付いたりせず
「ボオオオオー!」という連続音で
母材が溶け始めました!
あとは母材どうしの隙間に鉄を溶かし込むように
イメージをしながらくっ付けていけばokです。

溶け過ぎる時は電流を絞り、
ダマになって溶け込んで行かない時は逆に
電流を開けてやればいいんですね!

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さて、厚さ2mmのアングル材は一応成功しました。
本番の0.8mm薄板にチャレンジです。



はい、見事に失敗して穴があきました(笑)!

アーク溶接は4000℃以上の超高温なので
薄板に関しては相当電流を絞らないと
すぐに溶け落ちて穴が開いてしまうそうです。
手持ちの溶接機は15A以下には下がらないので
(ちょっと特殊な溶接機なら対応しているようです)
このままではどうしようもありません。

そこでてらむらさんがアドバイスです。
「ちょっと慣れがいるかも知れないが大丈夫や。」
「少しづつ点で付けたら溶け落ちん。」
暖気が終わってからボオオオと押し当てると
熱が発生し過ぎてしまうので
タップするのと同じくらいの間隔で
「ボッ!」「ボッ!」と叩くように
溶けた鉄を少しづつ乗せて行きます。

少し乗せては冷却、また乗せるを繰り返すと
一旦穴が広がりますが、厚みが出てくると
順調に穴が埋まって行きます。良かった!



かなり表面が汚いですが、とりあえず埋まりました!
最初はこんなでかい穴にしてしまって…と
ヘコんでいましたが、ともかく終了です。
ここから表面をグラインダーで均してしまえば
大方もとの通りになる、はず。

ついでに弟子みたいな人と練習してましたが
「いかにも物作りって感じで面白いですね!」と
感想を頂きました。
うん、私もそう思った。楽しいです(笑)。
こんな事ならもっと早く取り組めば良かった…。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

しかし、ちょっと経ってから
スラグをハンマーで叩いて落としてみると
…そうは問屋が卸さない!

スラグの巻き込みがひどく、
ちゃんと埋まっていません。
これは遂に機材の変更かのう。