1997年6月、電事連が時最新の手法で津波想定を計算し、福島原発への影響を調べた記録、
原発事故を起こした「国と東電」の責任を立証する「重要な証拠」は現存しないと、とぼける国側弁護士に、
不快感を示す裁判長。

 司法までも牛耳ってきた 「国と東電」原子力ムラの神通力は、もはや通じない。
潔く縛に付け」と言いたいところだが、残念ながら原発事故の刑事責任を問う裁判ではなかった。
 
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 東洋経済より
原発事故訴訟で追い詰められる国と東電 のらりくらりの答弁に裁判長も不快感
【重大事故を予見させる試算

「出せ」「出せない」というやりとりの対象になった資料の内容は、実のところ、昨年9月3日に原告側弁護団から提出された準備書面に詳しく記されている。同書面ではその内容について次のような記述がある。

「被告国(MITI=旧通商産業省)は、仮に今の数値解析の2倍で津波高さを評価した場合、その津波により原子力発電所がどうなるか、さらにその対策として何が考えられるかを提示するよう被告東京電力ら電力会社に要請…(以下、略)」

  中  略

「電事連は当時最新の手法で津波想定を計算し、原発への影響を調べた。想定に誤差が生じることを考慮して、想定の1.2倍、1.5倍、2倍の水位で非常用機器が影響を受けるかどうか分析している。

福島第一原発は想定の1.2倍(O.P.(福島県小名浜港の平均海面)+5.9メートル~6.2メートル)で海水ポンプモーターが止まり、冷却機能に影響が出ることが分かった。

 全国の原発のうち、上昇幅1.2倍で影響が出るのは福島第一原発以外には島根原発(中国電力)だけであり、津波に対して余裕の小さい原発であることが明らかになった」

 国会事故調報告書によれば、問題の電事連会合が開催されたのは1997年6月。しかし、東電は重大事故が起こりうるとの指摘に対して有効な対策を取ることをせず、福島第一原発はそれから13年後に大津波に飲み込まれた。

  中  略

2006年には全電源喪失の試算も

国会事故調などの調査で明らかになったことだが、津波によって福島第一原発が浸水する可能性は、政府の地震調査研究推進本部による「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(02年7月)や、東電社内での「溢水勉強会」(06年)などでもたびたび指摘されていた。

06年5月の溢水勉強会では、「O.P.+10メートルの津波が到来した場合、非常用海水ポンプが機能喪失し、炉心損傷に至る危険性があること」が報告されたと国会事故調報告書は言及している。

 また、東日本大震災時とほぼ同レベルの「O.P.+14メートルの津波が到来した場合、建屋への浸水で電源設備が機能を失い、非常用ディーゼル発電機、外部交流電源、直流電源すべてが使えなくなって全電源喪失に至る危険性があることが示された。

 それらの情報が、この時点で東電と保安院で共有された」とも国会事故調報告書は述べている。

  中  略

 しかしながら東電は、今回の訴訟での準備書面の中で、溢水勉強会での記述内容については「一定の溢水が生じたと仮定して溢水の経路や安全機器の影響の度合い等を検証したもの」であり、「仮定的検証」に過ぎないと反論している。つまり、東日本大震災級の津波が来た場合のシミュレーションをしていながら、あくまでも実際に来た津波は「想定外」だという主張にほかならない。

果たしてこのような強弁は通じるのだろうか。】