既に破綻している、「電力業界も乗り気ではなかった」核燃サイクルを、誰がゴリ押ししてきたのか?
 
 経産省、旧科学技術庁(現文科省)、政府自民党、日立・三菱・東芝・・既得権益に群がるシロアリたち。

 19兆円とも50兆円とも試算される核燃料サイクルの巨額費用は、こっそりと?電気料金に上乗せ・・
果たして原発推進の安倍自民党にその先の展望はあるのでしょうか?

 私たちに残された、「権力の暴走」を止める手立ては選挙での一票だけ。
私たちの誤った選択で、選挙権のない子供たちの運命を狂わせないように・・最低限の大人の責任です。

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なぜ、官僚を選挙で選べない?!無責任が生んだ悲劇。

参考資料 バックエンド・再処理コストの基礎知識

2005年に霞が関や永田町を飛び交った文書 19兆円の請求書―止まらない核燃料サイクル

 47ニュース・原発と国家より
試運転直前のクーデター「19兆円の請求書」 ~頓挫した官僚の決起~
【「19兆円ですよ。そんな巨額の金を、こっそりと電気料金に上乗せしていいんですか」。2004年の春、経済産業省の一室で上司に詰め寄る若い官僚たちがいた。使用済み核燃料を再処理、プルトニウムなどを取り出す核燃料サイクル事業。これに膨大な費用をかける愚かしさを、推進する立場の経産官僚が説いた。クーデターの始まりだった。
 東京電力福島第1原発事故でサイクル事業も岐路に立つ。7年前の官僚たちの行動が、今再び、重い問いを投げかける。
最後のチャンス

 「19兆円の請求書―止まらない核燃料サイクル―」と題する文書が霞が関や永田町を飛び交った。作成者は彼らだ。

文書は①再処理工場を運用すると、総額で19兆円、場合によっては50兆円がかかる②高速増殖炉の実用化のめどが立っていない③放射性廃棄物の体積が大幅に増加する―などと指摘。「国は時代遅れになった政策の誤りを認められない。費用は国民の負担に転嫁されようとしている」と告発した。

 青森県六ケ所村の再処理工場では、プルトニウムなどを使った試運転が始まろうとしていた。一度始まると施設が汚染され、中止にも膨大な費用がかかる。彼らは「今が最後の機会」と思った。

自由化と交換

 サイクル事業について関係者は「電力業界も乗り気ではなかった」と証言する。「会社の判断でやめると経営責任を問われるが、国が中止するなら従うと言っていた」と言う。そもそも「19兆円」は業界自身の試算だ。

 費用の問題を解決するため、東電をはじめとする電力業界は並外れた政治力を発揮する。元官僚によると、03年に電力自由化の枠が拡大される際、電力業界は交換条件として、将来に予想される膨大な再処理費用を、電気料金に上乗せすることを国に要求。自民党政権はこれを受け入れた。
 「文書」が疑問を投げかけたのはこの点だ。事業の安全性や経済性を問題視する声は多く「できのいい怪文書」と言われた文書は一時、サイクル路線中止への流れをつくるかに見えた。
 だが結局は、サイクル推進の立場の政治家や電力業界にあっけなくつぶされ、官僚たちは左遷。クーデターは頓挫し、ある者は役所を去った。

 再処理費用の"前払い"は開始され、これまでに既に2兆円超が積み立てられている。
廃止にも難問

 原発事故を受け、菅直人首相はサイクル事業の見直しを表明。廃止も現実味を帯びてきた。事業は取り出したプルトニウムを使う高速増殖炉があってこそ。ある官僚は「(福島の事故では)水の冷却であれだけ苦労している。国民は『冷却材にナトリウムを使う増殖炉がうまくいくわけがない』と思うだろう」と指摘する。

 六ケ所村の再処理工場も、技術的な問題でつまずき、07年末から事実上停止状態だ。既に機器は汚染され、解体にも数千億円がかかるという。積み立てられた2兆円を充てる案もあるが「事故の賠償に充てるべきだ」との意見もあり、簡単にはいかない。

 一方、再処理工場や各原発では使用済み燃料がたまり続けている。どちらの保管施設も満杯に近く、原発の運転継続が危ぶまれる状況だ。

 前進も後退もままならない使用済み核燃料の再処理問題。原発事故で露呈した原子力政策の長年の矛盾が、行政と業界にのしかかっている。】

 日経ビジネス・原発は何処から何処へより
核燃料サイクルを巡る権力の真意「ブルドーザーのように」進んでいった勢力
【原子力発電には「使用済み核燃料(高レベル放射性廃棄物)」の処理(バックエンド)問題が、影法師のようにつきまとう。しかも、適正な解答は、見出されていない。

 原発は「トイレのないマンション」といわれる。使用済み核燃料の処理方法が確立されていないからだ。原発は自ら出した汚物にまみれて、雪隠詰めになる怖れがある。

 そもそも使用済み核燃料の処理は、ワンスルー方式(1回限りの使い捨て埋設)とリサイクル方式に大別される。日本は資源の有効利用をタテマエとして、後者を選び、最初の原子力長期計画1956から「核燃料サイクル」を国内で確立する方針を掲げてきた。

「夢の原子炉」という筋書きの破綻

 使用済み燃料は、再処理してプルトニウムを分離、回収。MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合燃料)をこしらえる。それを「高速増殖炉(FBR)」に回して稼働させる。高速増殖炉は消費した核燃料よりも多くの核燃料が得られ、そのうえ軍事転用も可能なプルトニウムを生成できるとあって「夢の原子炉」と呼ばれてきた。67年の原子力長計では高速増殖炉を80年代後半に「実用化すること」を目標と定めた。

 ところが、この筋書きは破綻した。
 高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」は、初発電から4カ月足らずの1995年12月、ナトリウム漏出火災事故を引き起こす。管轄する動力炉・核燃料サイクル事業団(動燃・現日本原子力研究開発機構)の事故後のビデオ公開が「情報隠ぺい」と糾弾され、長期間の運転停止を強いられた。

 高速増殖炉のメドが立たないとみた政府は、90年代末に稼動中の軽水炉でMOX燃料を燃やすプルサーマルへと方針を切り替える。プルサーマル導入に際し、資源の活用、エネルギー自給率の向上、余ったプルトニウムを持たないという国際公約の遵守などの利点を自民党政権はしきりにアピールした。

 だが、MOX燃料を使うプルサーマル計画には経済性の欠如、重大な事故発生の危険、再処理をしても利用できるプルトニウムは使用済み核燃料のわずか1~2%(燃え残りウランは溜まり続ける)といった欠点が次々と浮上する。

経産省の若手改革派が進退をかけて投じた一石は…

 が、しかし、プルサーマルを担うはずの原発立地県、福島で予想外の「反乱」が起きる。

 佐藤栄佐久知事(当時)は、プルサーマルを受け入れる4つの条件(MOX燃料の品質管理、作業員の被ばく低減、使用済みMOX燃料対策の長期展望の明確化、核燃料サイクルの国民理解)が崩れたとして、「プルサーマルは白紙撤回されたものと認識」と議会で発言。「核燃サイクル立ち止まり国民的議論を」と呼びかけ、プルサーマルの凍結を打ち出したのである。

「19兆円の請求書」は、そうした流れのなかで経産省の若手改革派が進退をかけて投じた一石だった。朝日新聞の記者とともに私は取材を重ね、「『上質な怪文書』が訴える核燃中止」(週刊朝日04年5月21日号)という記事を発表した。原子力関係者からは、怪文書に同調する声が多数、寄せられた。

「勇気ある行動だ。政府が舵を切れないから、下からこういう動きが出る。高速増殖炉を目ざす時代はとうに終わった。ただ役所や電力業界には高速増殖炉で仕事や研究をしている人が2千人以上います」(元東電副社長)

「政策を変えた途端、過去の政策を前提にした事業や特殊法人が存立できなくなる。責任問題が噴き出す。政治家が決断できないので、役所も上層部にいけばいくほど腰が引けてしまう」(元経産官僚)

佐藤栄佐久知事は、私のインタビューにこう応えた。
「原子力発電所は、使用済み核燃料をきちんと処理する手立てが講じられず、四〇年もの前の古い体質をいまだに引きずっています。

九三年、福島県は、福島第一原子力発電所内に使用済み燃料を一時的にためるプールを増やしてくれと言われ、『二〇一〇年から漸減する』ことを国に確認し、プール設置を認めた。ところが、一年もしないうちに『原子力長期計画』の改定のなかで二〇一〇年に「第二再処理工場を建設する」のではなく、「方針を変える」となり、国との約束は吹き飛ばされました」

 官僚には「顔」がない。2年間隔で次々と部署を代わり、一切の責任をとろうとしない。嘘つきとなじられてもカエルの面になんとか、である。佐藤は語る。

「若手国会議員、マスメディア、関係省庁などから「見直し論」が沸き起こっています。探鉱でガス漏れのチェックに『カナリア』を使いますが、あたかも核燃料サイクルを強引に進める危険を知らせるかのようにカナリアが、あちこちで鳴き始めたようです。この流れを、旧態依然たる勢力が、ブルドーザーのように押しつぶさないよう願うばかりです」
 
 プルサーマル見直しの気運は盛り上がっていた。
 けれども……、週刊朝日に記事が掲載されて間もなく、経産省内では怪文書の犯人探しが行われ、当事者は霞ヶ関から去った。ブレーキのないブルドーザーは、情け容赦なく、カナリアを押しつぶした。

 それから2年後、こんどは佐藤栄佐久が、東京地検特捜部に「収賄罪」で逮捕された。容疑は、弟と共謀して「木戸ダム」を前田建設が受注するよう「天の声」を発し、見返りに弟の土地を前田建設とつながる水谷建設に法外な値段で買い取らせた、というものだった。裁判の過程で、東京地検特捜部がそろえた汚職の証拠や調書は次々と覆されるのだが、それにしても、露骨な逮捕劇であった。

 なぜ、権力機構は、かくも核燃料サイクルを握り続けようとするのだろうか。
 第一に半世紀以上も核燃料サイクルは「国策」に掲げられ、既得権にぶら下がる構造が出来上がってしまっているからだろう。行政は従来の誤りを認めようとせず、電力会社は「止めたい」と言いだすことで責任をかぶることを避けたい。政治は関連地方公共団体や電力会社にひきずられる。】一部抜粋