公明党の坂口元厚生労働大臣や、小宮山厚生労働大臣は、やるべきことはやったとご満足の様子だが、

国が直接、医療費を支給するなど、真正面から救ってほしかった。加害企業を通して、医療費が支給されるのは悔しい。思っていた中身ではなかったが、大きな第一歩として喜ぼうと思う

 これが、「カネミ油症」の被害患者さんたちのやり切れない想いを表した、政府・加害企業への
精一杯の抗議の声だ。

 2010年3月末現在、カネミ油症患者として認定されたのは1941人。(うち死亡者は557人)被害を訴え出た
1万4000人の僅か14%。

 このような現状での不十分な救済法案が、被害患者を救うとはとても思えないが、追い詰められた被害患者 としては苦汁の決断があったのだろう。

 被害者が、国や加害企業と争わなければ、救済さえされない現状はなんとも嘆かわしい。
原発事故での被爆被害者が、また同じ苦しみを強いられるかと思うとやり切れない想いだ。

 福島原発事故での、被害者を救うのではなく、賠償金の負担で東電が倒れないように
原子力損害賠償支援機構”が東電に支援金を入れる構図は、カネミ倉庫、チッソとまったく同じ、
民主党政権に変わっても、加害企業に優しく被害者に冷い、国の対応は何一つ変わっていない。

 KBC九州朝日放送より
~カネミ油症 KBCが追った42年の記録~
【概要

1968年、北九州市に本社を置くカネミ倉庫が製造した食用の米ぬか油を食べた西日本一帯の1万4000人以上が吹き出物や内臓の疾患、がんなどの被害を訴えた。原因は油に含まれた猛毒のダイオキシン類。

患者の症状は42年がたった今も続くが、公的な救済は一切行われていない。認定患者は2010年3月末現在、1941人(うち死亡者数557人)。被害者は医療費の公的負担などを盛り込んだ「カネミ油症被害者救済法案」の成立を強く訴えている。

被害の発覚

カネミ油症事件は1968年(昭和43年)10月10日、朝日新聞が「正体不明の奇病続出」と第一報を報じたのが発覚の発端だった。西日本各地で吹き出物や手足のしびれ、倦怠感などの健康被害を訴え出る人が相次いだのである。

原因は北九州市に本社を置くカネミ倉庫の米ぬか油「カネミライスオイル」。被害は福岡県を中心に西日本一帯に及び、1万4000人以上が被害を訴え出る「国内最大の食品公害」となった。

人類初のダイオキシン類による食中毒被害

中毒の原因は当初、油の臭みを取る工程の熱媒体として使われた有機塩素化合物PCB(ポリ塩化ビフェ二ール)とされ、患者の症状は次第に軽減されると考えられていた。しかし1974年、油にはPCBが加熱されることで変性した猛毒のダイオキシン類、PCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)が主な原因物質であることが判明する。

2001年には国もダイオキシン類が主原因であることを認め、カネミ油症事件は「人類が初めてダイオキシン類を直接口から食べた」事件であることが明らかとなった。

患者の症状

ダイオキシン類はベトナム戦争(1960年~1975年)でアメリカ軍が使用した「枯葉剤」にも含まれていたことで知られる。症状は吹き出物などの皮膚症状や手足の痺れといったものから、肝機能障害、骨の変形、歯の異常や頭髪の脱毛、流産、がんに至るまで全身の多岐に及び「病気のデパート」とも言われる。

これまで多くの被害者たちが、がんなどを発症し、死亡している。ダイオキシン類は体内での残留性が高いことでも知られており、患者たちの症状は42年がたった今も続いているのが現状である。

次世代被害

ダイオキシン類の大きな特徴の1つは被害が子や孫の世代に引き継がれることである。事件発生当時には油を食べた女性患者から皮膚の色が黒ずんだ「黒い赤ちゃん」が生まれるケースが数多く報告され、社会に大きな衝撃を与えた。

2010年5月、国は認定患者を対象に実施した健康実態調査の結果を公表したが、子供、もしくは孫に「吹き出物がある」、「疲れやすい」などといった被害を訴える患者が調査対象者ののべ半数以上に及んでいる。

差別と偏見

カネミ油症の根本的な治療法は今も見つかっていない。また「黒い赤ちゃん」など被害が次世代に引き継がれていく懸念などから患者たちは事件発生当初から結婚や就職などで激しい差別や偏見に見舞われた。

患者たちは次第に被害について口をつぐむようになり、毎年一部の自治体で実施される油症検診すら受診しない患者が相次ぐようになり、被害の実態把握は大きく遅れた。また患者の多くが家庭の食卓でカネミ油を食べたケースが多いことから、家族ぐるみで油症の症状に苦しみ、働けなくなったり、医療費がかさむなどして生活困窮に陥るケースが相次いだ。

未認定問題と認定基準

2010年3月末現在、カネミ油症患者として認定されたのは1941人。(うち死亡者は557人)被害を訴え出た1万4000人の約14%に過ぎない。

厚生労働省の全国油症治療研究班が定めた認定基準によって被害者の認定、未認定が振り分けられ、現在は血中のダイオキシン濃度が最も重要視されている。しかし、夫婦・家族間で認定、未認定が分かれるケースも相次ぐなど、その基準の妥当性には疑問の声も上がっている。

裁判と仮払金問題

カネミ油症をめぐる民事裁判は発覚の翌年1969年に始まった。裁判は責任企業のカネミ倉庫やPCBを製造したカネカを相手取り1986年までに8件が提起され、うち5件については被害の拡大責任を問われた国も相手取って行われた。

原告は1985年までにカネミ倉庫だけでなく、国に2度勝訴。しかし、翌86年5月、全国統一民事訴訟第二陣の二審判決で流れは変わり、国に逆転敗訴した。

その後最高裁も原告敗訴の見通しを示したことから、原告は国への訴えを取り下げる。その結果原告は先に受け取った1人当たり約300万円の賠償金の仮払金を返還する義務が生じ、すでに医療費や生活費などにつぎこんでいた原告たちの中には返還に応じきれず、自殺者も現れるようになった。

その事態を重く見た当時の自公政権は2007年に仮払金返還を免除する特例措置法を成立させ、仮払金問題は一定の解決に至る。
2008年には87年の裁判終了後に新たに認定された新認定患者がカネミ倉庫を相手取り損害賠償請求訴訟をおこし、現在も裁判は続いている。

患者救済の現状

カネミ油症の被害者は油症検診を受診して患者と認定されない限り、一切の医療費助成を受けることができない。さらに認定されても責任企業のカネミ倉庫からは見舞金23万円の支給(認定時のみ)と、認定後の医療費の一部が支給されるだけで、過去の裁判の原告への賠償金500万円も経営難を理由に支払いが凍結されたままである。

国は治療研究の資金として全国油症治療研究班に2億6000万円の研究費(2009年度)を、そしてカネミ倉庫には経営を支援するため政府米の倉庫代 およそ1億7000万円(2009年度)を支払っているが、過去の裁判で原告側が国への訴えを取り下げたことを根拠に、患者に直接、医療費などの公的支援を行うことを一貫して拒んでいる。

患者たちの現状 悲願の"公的救済"

事件から42年が経過し、患者の高齢化が進む中、患者たちは経営が脆弱なカネミ倉庫からではなく、国や自治体から医療費の公的支援を受けることを求めている。

政権交代を機に患者と支援者は2010年1月以降、医療費の公的負担などを盛り込んだ「カネミ油症被害者救済法案」の成立を求めて全国で被害者集会を開催し救済を訴えた。そして3月には、患者と支援者が民主党幹事長室に救済法案の成立を陳情。

民主党内でも一部の議員が救済法案の議員立法の検討を進めるなど、法案成立への機運が高まっていたが、2010年6月の鳩山総理辞任などの政局の混乱を受け、法案の通常国会提出は断念された。

患者たちは国が手帳を発行した上で、(1)医療費(自己負担分)の公的支給(2)健康管理手当ての支給などを柱とした救済法案の成立を強く求めるとともに、未認定患者や2世、3世の被害者を広く救済する措置をとるよう求めている。】


 NHKニュースWEBより
「カネミ油症」救済法案成立へ
【昭和40年代に起きた食品公害「カネミ油症」の問題を巡って、超党派の議員連盟が会合を開き、国の支援で患者1人あたり年間24万円程度を受け取れるようにするための法案を、今の国会に提出し、成立を目指すことで一致しました。

 昭和40年代に起きた「カネミ油症」の問題は、福岡県や長崎県など西日本を中心に皮膚炎や肝機能障害などの被害が出たもので、超党派の議員連盟は、被害者の団体の代表を招いて3日、国会内で会合を開きました。

 この中で、民主党は、国が健康被害を受けた人たちを救済するため、原因企業が患者に対する「一時金」を安定して支払えるような措置を取るほか、患者の健康実態調査を行い、その対象者に「支援金」を支給することで、「一時金」と合わせ、患者1人当たり年間で24万円程度を受け取れるようにすることなどを盛り込んだ、総合的な支援策を示しました。

 これに対して、被害者の団体の代表からは「法案を早期に成立させ、救済を進めてほしい」という要望が出されました。

 そして、議員連盟として、今の国会に支援策を実施するために必要な法案を提出し成立を目指すことで一致し、法案は、審議が順調に進めば今の国会で成立する見通しとなりました。

 会合のあと、議員連盟の会長を務める公明党の坂口元厚生労働大臣は、記者会見で「各党で至急、党内手続きを進め、来週後半には法案を取りまとめたい」と述べました。

 患者らの会“大きな第一歩として喜ぼうと思う”

 患者らでつくる「カネミ油症五島市の会」の宿輪敏子事務局長は、記者団に対し「国が直接、医療費を支給するなど、真正面から救ってほしかった。加害企業を通して、医療費が支給されるのは悔しい。思っていた中身ではなかったが、大きな第一歩として喜ぼうと思う」と述べました。

 厚労相“法案成立へ最大限協力”

小宮山厚生労働大臣は、閣議のあとの記者会見で「財源の問題やカネミ倉庫との関係など、いろいろな問題があるなかで、現在、考えられる最大限の対応だ。

 厚生労働省としても、今の国会で法案が成立するよう、最大限協力していきたいと考えており、支援策について患者側の理解が得られるよう説明に努めていきたい」と述べました。】