shino.pos.to様より
【「原子力は夢のエネルギー」
そう、そしてそれは悪夢だった……。

ウランも100%輸入だよね

「資源の少ない日本では原子力に頼ることも止むを得ない」 と、もしあなたが考えるとしたら、それはどういう理由からだろう。 「日本にはエネルギー資源が少ないが、ウランだけはある」などという話を聞いたことはない。 ウラン鉱石の輸入先はオーストラリア、カナダなど。ウラン濃縮は7割以上が米国なので、オーストラリアはさておき、日本やカナダを米国の属国だと規定すれば「準国産」と呼ぶのは理解できる。

「資源の少ない日本で原子力が必要」とする理由はたとえば 2010年文部科学省作成の中学生向け副読本「チャレンジ!原子力ワールド」などにある。

「現在日本では石炭や石油だけでなく。天然ガスや原子力の燃料となるウランについてもほぼ全量が海外から輸入されているため、エネルギーの自給率は水力などわずか4%です。
エネルギー源の中で、ウランは一度輸入すると長期間使うことができ、また再利用できることから、原子力を国産に近いエネルギー(準国産エネルギー)と考えることができます。 この考え方によれば、エネルギー自給率は約18%となっています。」 (原子力発電のしくみー前出「チャレンジ!原子力ワールド」p8)

燃料の体積が小さいから買いだめできるってことね。 でも、それで「準国産」と呼ぶのは、なんか無理やり。 それはさておき、「再利用」ができるならば魅力的ではないか。

夢のサイクル

そもそも日本に資源が無いというのはウソで、日本は豊かな自然と資源に恵まれた国なのだが、そのことはここでは置いておく。 「狭い国土に住む日本人は技術力で生きていかねばならない」。この表現も問題アリだが、なんとなく説得力がある。 国土は狭くても人的資源は……知恵ならあるということか。 そこで高速増殖原型炉に名付けられたのが知恵の「もんじゅ」。

原発でウランを燃やすとプルトニウムができる。 ウランは広島型原爆の材料だが、長崎に落とされた原爆はプルトニウムでできていた。 同じように原爆の材料なら、プルトニウムを燃やしても電気が作れるのではないか。 おまけにプルトニウムを燃やすとプルトニウムができる。と、いうことは…… え~、こんなうまい話、乗らないでどうします。

最初の事故

とはいえウランでさえ完全には制御できていないのに、プルトニウムを制御するのは簡単ではない。 ウランは自然界にある放射性物質だが、 プルトニウムは自然界にはほとんど存在せず、原子炉からのみ作られる。 その放射性や危険度はウランより格段に大きい。

高速増殖原型炉「もんじゅ」は10年の歳月と5,886億円の建設費を掛け(日本原子力研究開発機構「もんじゅ」についてお答えします)、 1995年8月29日 初発電を達成した。 同年12月8日 ナトリウム漏洩事故発生 (日本原子力研究開発機構「高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏れ事故と原因究明のあらまし」) (「動燃がカットしたもんじゅナトリウム漏れ事故の映像」YouTube)。 そのセミのように短い一生を終えたかに見えた。



90日間の復活劇

しかし諦められないのか、「もんじゅ」はゾンビのごとく……失礼、不死鳥のごとく復活する。 2010年5月5月6日、じつに14年半ぶりに運転を再開。 しかし同年8月6日、燃料棒交換作業中に炉内中継装置が炉内に落下。 以来何度か引き抜きを試みるも、いまだ成功していない (日本原子力研究開発機構のページ)。 わずか90日間の復活劇だった。燃料棒交換に必要な装置が壊れているわけで、現在「もんじゅ」は運転できないばかりか炉内に残る燃料棒を撤去することもできない、言葉どおりに抜き差しならない事態が続いている。

25 Jun 2011 追記
炉の上部を一部切り取る荒療治の末、昨日2011年6月23日、引き抜きに成功した。今後、炉の復旧作業に入るという 。】一部抜粋

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