【Wahoo!スポーツ】オレンジ軍団の野望に迫る | 欧州野球狂の詩

欧州野球狂の詩

日本生まれイギリス育ちの野球マニアが、第2の故郷ヨーロッパの野球や自分の好きな音楽などについて、ざっくばらんな口調で熱く語ります♪

【管理人注】

 この記事は、管理人自身の頭の中にあるものをそのまま文章にした、完全な創作です。急になんだか書きたくなったので、文章を書く練習も兼ねて、SLUGGERあたりで執筆している、スポーツライターになったつもりでやってみました。実在の人物や団体などとは、一切関係ありません。あらかじめご了承ください。以下のような設定や世界観を前提に、読んでいただければ幸いです。


・舞台は2013年のWBC直前

・オランダ代表の4選手にインタビューしたという設定


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 4年前、WBCにおけるその他大勢の一角にすぎなかったオランダが、優勝候補筆頭とも言われたドミニカを2度破ったことは、当時の野球ファンの間では奇跡として受け止められた。大会前、どんなに目の肥えた専門家やファンでさえも、彼らがプエルトリコとの2強の壁を破って、2次ラウンドに進出するとは、おそらく誰1人信じなかっただろう。もし例外があるなら、それはオランダ代表のメンバー自身と、彼らを送り出した地元の熱狂的なフリークくらいだったはずだ。


 しかし今、そうした受け止め方はもはや過去のものになった。ムードは変わったのだ。2年前にIBAFワールドカップ(パナマ)において世界王者となってから、野球界におけるオランダという国の存在は、確固たるものとなった。少なくとも、4年前はオランダに野球選手がいることさえも知らなかった人々の間でも、今では彼らのことが知られるようになっている-日本においてであれ、アメリカにおいてであれ、その他の数多の国においてであれ。


 ただ勘違いしてはいけないのは、彼らがぽっと出の新参者ではないということだ。野球ファンの間で広くその名が知られるようになる遥か前から、オランダは根拠地ヨーロッパにおける不動の英雄だった。そして今、彼らはヨーロッパの雄から、世界に名だたる強豪へと本格的に脱皮しようとしている。現在のオランダが、今後さらにビッグになるうえで目指しているものとはなんなのか。ジャイアー・ジャージェンス(ブレーブス)、ロブ・コルデマンス(L&Dアムステルダム・パイレーツ)、マリエクソン・グレゴリウス(レッズ)、ブライアン・エンゲルハルト(コレンドン・キンヘイム)の4選手に話を聞いた。


―:前回大会で旋風を巻き起こしてから4年、間もなく第3回WBCが始まりますね。体調はいかがですか?

エンゲルハルト(以下エ):とてもいい感じだね。睡眠もしっかりとれているし、精神的にもいい意味での緊張感を保つことができている。WBCに参加するのは3回目だし、それ以外にも色んな大会にこれまで出てきたから、あまり気負ったところはないかな。早くプレーしたくてうずうずしているよ(笑)。

コルデマンス(以下コ)、グレゴリウス(以下グ):僕らも全く同じだね。

ジャージェンス(以下ジ):そういう意味では、僕は他の3人とは少し違うかな。WBCに出るのは7年ぶり(第1回大会に出場)だし、その時も1イニングしか投げていないからね。今回はエースとしての役回りを託されているわけだけど、主力選手として他国の代表と投げ合うのは初めてだから、その点では若干感覚がつかめていない部分もある。まぁ、これからだよ。


―:ジャージェンス投手は、前回大会には出場されていませんが、それはどういう理由からだったのでしょう?

ジ:前回大会も、オランダ代表の一員として出たくなかったわけじゃないんだ。ただ、前回はその前年度に13勝(10敗、防御率3.68)を挙げて、新人王での投票でも3位に入れたとはいえ、チームの中で確固たるポジションを獲得できていたわけじゃなかった。後半戦では防御率4点台と崩れてしまったし、もちろん実績だってないしね。だから、チームの中で自身をアピールする道を選んだんだよ。ただ、オランダの試合はずっとテレビで見ていたし、同じオランダ人としてその快進撃には誇りを感じていた。だから、今回は何としても出たかったんだ。


―:グレゴリウス選手も、前回の快進撃を外から見ていた1人ですね。オランダのプレーは、どのように目に映っていましたか?

グ:当時の自分にとって、オランダ代表は憧れの存在だったから、彼らが世界の強豪と互角に渡り合うのを見るのは、本当に興奮したよ。「このチームで、いつか自分もプレーしたい」という思いが強くなったね。それが今、こうして叶っているのは嬉しいことだよ。


―:コルデマンス投手とエンゲルハルト選手は、当事者として前回大会での戦いをどう振り返りますか?

コ:ドミニカ、プエルトリコ、ベネズエラ、アメリカという、世界に名だたる強豪国と繰り返しぶつかりながら、ほぼ互角に戦いぬくことができたのは、本当に大きなことだと思っている。これは前回大会での最終戦の後、捕手のシドニー・デヨング(当時)が言っていたことだが、我々には大会でより良い結果を残すことで、「オランダ人も野球をプレーすることができる」ということを証明する義務があった。それは十二分に達成できたはずだよ。

エ:そうだね。負けてしまったことは残念だけど、誰が相手でも諦めないという気持ちは、見ている人たちにも存分に伝わったと思う。個人的には、アメリカ戦でチーム唯一の本塁打を打てたんだけど、空砲に終わってしまったのが残念だね。


―:前回大会では印象に残ったプレーが数多くありましたが、個人的にはケンリー・ヤンセン(ドジャース)の強肩ぶりが衝撃的でした。

ジ:あぁ、あいつは化けものだよ。

グ:間違いないね!!

エ:自分も彼と同じキュラソーの出身だけど、あれほど強い肩の持ち主は初めて見たよ。他にいるとすれば、三塁を守っていたユレンデル・デキャスター(メキシカンリーグ)くらいかな。

コ:4年前のW杯でチームメイトになった時は、まだ捕手から転向して間もなかったから、球は速いけれども粗削りだな、という印象もあった。ただ、ここ数年で彼は本当に化けたね。素晴らしいリリーバーになったと思うよ。

エ:たまに「あいつと同じオランダ人に生まれることができて、本当によかったな」って思うことがあるんだ。だって、国際大会で対戦する必要がないからね(笑)。それほど、彼の存在は打者にとって脅威だと思うよ。


―:前回大会で強烈な印象を残したオランダですが、国際舞台で結果を残したのは2009年が最初じゃないですよね?

コ:その通りだ。オランダは過去20回ヨーロッパ選手権で優勝して、これまで最多となる大会タイトルを獲得してきた。他にも五輪、W杯、インターコンチネンタルカップなど、ありとあらゆる大会で上位に入ってきたんだ。前回のWBCで、一定の成果を残すことができたのも、あくまでもそれらの延長線上にある。色々なメディアでシンデレラストーリーとして扱われて、それは非常に光栄なのはもちろんなんだが、それ以前からの積み上げをずっと続けてきたからこそ、我々があのような戦いをできたのだということは、忘れてはいけないはずだ。

グ:オランダはもともと、ヨーロッパの中では野球が盛んな土地柄だからね。僕は父親がキュラソー出身で、自分自身はアムステルダムの生まれなんだけど、本国にもキュラソーにも、同じように立派な野球文化があるのを実感しながら育ってきた。もちろん、野球を知らないオランダ人だってたくさんいるのは事実だ。オランダはフットボールやホッケーなど、あらゆるスポーツが盛んな国だからね。でも、それだけを以て「オランダ本国では野球は盛んじゃない」と決めつけるのは早計だよ。


―:今、本国とキュラソーというキーワードが出ましたので、それについても伺いましょう。他競技のオランダ代表では、白人と黒人が仲たがいして、チームが空中分解するような話も聞きますが、野球ではそういった話が全くないですよね。人種や出身地に関係なく、皆チームとしてまとまりがあり、仲がいい印象があります。

ジ:残念ながら、そういう話が他競技で存在するのは事実だ。ただ、それは野球では全く関係ないこと。本国と海外領土の選手が一緒に力を合わせるのが、古くからのオランダのスタイルだからね。オランダ本国出身の選手だけでは、前回のような番狂わせは実現できなかったはずだ。同様に、海外領土出身者だけでも結果を残すのは難しい。僕らは常にファミリーであり、一心同体なんだよ。

エ:俺のように、キュラソー出身でも本国でプレーしている選手も多いしね。ディディ(グレゴリウス)にしても、さっき本人が言ったように、本国とキュラソーの両方にルーツを持っている。人種や出身地は違っても、同じオランダ代表の一員である以上、お互いにリスペクトしあって共働するのは当然だよ。

コ:こういう雰囲気は、デヨングとランドール・サイモン(元タイガースなど)が作ったんだ。これからも色々な選手が代表入りするだろうが、この特徴は絶対に変わらないだろうね。


―:それでは最後に、今回チームとして目指している目標を、最年長のコルデマンス投手に伺いましょう。

コ:どの大会でも同じだが、我々は目の前の試合を常にハードにプレーし、勝利のために全力を尽くすという姿勢を貫いている。ブライアン・ファーレイ監督にも、その点は常に言われているからね。それは今大会でも全く変わらない。もちろん、目指すのはあくまで大会の頂点だ。1次ラウンドを突破することさえできれば、その先ではどんなことだって起こりうる。短期決戦での戦い方を知り尽くした我々にも、十分に勝つチャンスはあるはずだよ。今回は前回よりも、遥かに他国からのマークが厳しくなるはずだ。ただ、もし一瞬でもその警戒を緩めるようなチームがあれば、オランダは彼らを必ず倒すよ。たとえどんな強豪だろうとね。


(本文ここまで)


 いかがでしたでしょうか。今回は、現代におけるオランダ代表に焦点を当ててみました。初めて実在の選手に登場してもらったということで、より現実に即して文章を書くのが結構大変でしたね。ちなみに、冒頭に書いたとおりあくまでも創作なので、本人たちがこのような発言を実際にしたという事実はありません。それっぽく書いてはいますが、くれぐれも安易に信じないようにお願いします(最近、Twitterとかでもリテラシーの低い人多いんですよね…)。


 現世界王者として挑むWBCということで、やはりオランダには大いに期待しています。自分をヨーロッパ野球の道に引き込んだきっかけも、彼らですからね。WBCそのものでは、まだ2次ラウンド敗退が最高成績の国なのですが、果たして次回大会ではその記録をどこまで更新できるか?非常に楽しみです。