前回の続きです。
被告の髪の毛からヒ素が検出された事を証拠の一つとして重要視していますが、これもそれだけ聞くと怪しい話ですが、どうも不可解で合理的な疑いを差し挟む余地がある。
被告は10月に逮捕されて、逮捕された当時に身体検査として髪の毛を切られている。その際4カ所から髪の毛を採取している。それを12月に鑑定に出す。これもスプリングエイトという機械を使って鑑定をし、亜ヒ酸が発見されたとなる。
しかしこれが不可思議で、発見された場所というのが16センチほどあるサンプルの髪の毛全体に付着していたというわけではない。事件があったのが7月な訳だから切断面から4.8センチの所に付着していたという話だけ聞くとそりゃそうだと思うのですが、不思議なのはその一点に付着していたというだけで、そこから先全体に付着していたわけではない。髪の毛は一本だけ生えているわけじゃなくて密集しているわけだから、普通であれば先っぽにも付着するだろうし、その間にも付着しそうなものですが、切断面から4.8センチの所に一点だけ付着している。
しかもいったんヒ素が髪の毛にくっつくと化学反応を起こしてしまいその跡は消えない。当然外から付着しているわけだから、その一点だけに付着させるにはどうやればそれが出来るのか?不可解極まりない。そういう不可解さは一切無視して、付着していたという事だけを持って証拠とし、バカマスコミもこれまた垂れ流す。普通そういう証拠として不可思議であるものに対しては、検査の結果を疑いそうなものですが、それが証拠になっちゃうわけですから恐ろしい国です。
被告がヒ素を使ってかつて人を殺そうとしたというのも、その殺そうとした相手は夫であったり、居候の人であったりという話なんですが、夫に対して失敗はするもののヒ素入りの葛湯を飲ませて殺して保険金を取ろうとしたとか、同じく居候の人に対して牛丼やうどんの中にヒ素を混入させて殺そうとしたとか、殺人をやろうとする人だから今回のカレー事件もやっているに違いないというわけです。
しかしそれが本当だと仮にするのなら、それは保険金目当ての事であって、カレー事件は検察ですら保険金目当てではないと言っている。誰が食べて誰が死ぬのかあらかじめわかりようも無いわけだから出来るわけが無い。
カネの為に人を殺しかねない人であるのなら、かえってカレー事件のような事を起こすような何の得にもならない事をする理由にはならない。反対証拠になる。悪事を働いてカネを儲けていたのがカネにもならない事件で全部バレてしまいかねないわけですから。これを理由にしてカレー事件の犯人だというのは普通に考えれば無理がある。他に悪い事をやっているからこっちも有罪に決まっているというのでは暗黒裁判です。
しかも葛湯を飲まして旦那を殺そうとしたという話も、実は旦那さんが自分で飲んだと自分で言っている。被告が入れたという証拠は何一つ無い。何で彼女が入れたという話になっているのかと言えば、居候の人の証言で旦那さんがその事によって病院に入院する。その見舞いに来た時に旦那さんにたいして被告が「早く死んじゃえ」と言ったという証言が理由になっているわけです。普通長い付き合いの夫婦であればそういう罵倒的な言葉も愛情表現であったりする事もあるわけで、これで殺意があったなんて言ったら誰でもしょっぴいて犯罪者に仕立て上げる事が出来るでしょう。
牛丼の話も被告に牛丼を作ってもらってそれを食ったらおかしくなったというだけの話。入れた所を見たわけでもなければ、これは病院にすら行っていない。うどんも同じ。証拠としてはあまりにも弱過ぎる。
この居候だった人というのは警察の宿舎の中で4ヶ月間寝泊まりして、生活の面倒を見てもらっている。その中で出て来た調書。
最初被告が逮捕されたのもこの一連の保険金詐欺事件、殺人未遂事件で逮捕される。カレー事件というのは一番最後にくっついた罪状。旦那と二人で逮捕されて、カレー事件になった段階で彼女の単独犯という事になる。旦那は詐欺で有罪。類似の事件とは言うけれど、目的は全く違う。類似事件といわれているものも被告が有罪だと言うにはあまりにも脆弱なものでしかない。
この葛湯事件の真相は旦那さん曰く、被告である奥さんの母親が平成8年に亡くなった。その時の保険金が1億4千万ほど被告が受取人で入る。旦那さんはその保険金を金庫から拝借して競輪に注ぎ込んで3、4千万使ってしまう。それが奥さんにバレて母親の形見に当るおカネをギャンブルに使ってしまったという事で、滅茶苦茶怒られて喧嘩になる。
その時に旦那さんが自分の体を張って詐欺を働こうと考える。そのカネを返せばいいだろうと。そして自分でヒ素を飲んで入院する。当然妻である被告の夫に対する殺人未遂などあるわけも無いと、旦那さんが自分でそう言っている。
しかしその言い分は家族の言い分で妻を擁護するための虚偽の証言であるという事で一蹴される。
この夫婦は昭和63年から保険金詐欺事件を繰り返して来た詐欺集団の人達で、言わばその道のプロ達。そのプロが自分の家がシロアリ駆除の仕事であるという事は周知の事実で、しかも自分の家の僅か5メートルの目と鼻の先で行なわれたお祭りのカレー鍋に、カネが儲かるわけでも何でも無いのにわざわざヒ素を使って無差別殺人のような事を行なえば、どうなるかは誰にでもわかる。バレるに決まっている。先ず一番最初に疑われる。
しかも近所での評判も悪く、ガラも悪い夫婦、そして当然疑われて捜査されれば、何やら怪しい不自然な保険金にまつわる詐欺と思わしきような振る舞いが見られるとなるに決まっている。何も得する事は無い自滅行為です。普通の判断力があれば、そんな事は簡単にわかる話。
しかしこれが検察や裁判所の解釈になると、疑わしき状況証拠はある。しかし動機が不明。というか普通にこういう前歴を読めばやらない事の証明を強化するような話のような気がするけれど、繰り返し詐欺事件を働いているうちに、つまり旦那さんや居候を殺そうとして保険金をせしめようとしているうちに、感覚が麻痺したって話になってしまう。ヒ素を使って人を殺したりする事に対して抵抗が無くなったという話になる。
旦那さんが自分でヒ素を飲んだというのも一審でその事を言わなかったという事を理由に却下されている。二審になって突然その事を言い出したので信用に値しないと。しかし旦那さんの言い分では担当検事にはその事をちゃんと言ったと言っている。法廷の進行は弁護人を通してと言われていたのでしゃべるような機会が全く無かったと。彼は詐欺罪で有罪になり、2005年まで刑務所に入っているので、アウトプットは法廷でしかない。そしてその事は言うなと言われたふしもある。
牛丼やうどんの問題で対象になっている居候の人の証言が何かと証拠として取り上げられているわけだけれど、この居候の人も詐欺仲間で詐欺事件では共犯者でもある。この詐欺集団は総額で8億から9億稼いでいる。居候の人はその事を不思議に思い、つまり何も仕事をしないで賭け麻雀やったり、ギャンブルに行けば一気に3、4千万も使ってしまうような狂った金銭感覚を持ち、裕福な暮らしをしている林夫婦に対して、どうすればそんなに儲かるのか?という事で近付いて、一緒になってその悪事に手を染めるに至ると、旦那さんは言っている。
しかしこの居候、今回詐欺では問われていない。むしろ単純に被害者として扱われている。これもおかしな話で毒を飲まされ続けてずっと居候していたという話になる。葛湯の話も居候の人の証言によって、車の中で旦那さんが「真須美にやられた」と言ったのを聞いたと。病院で「早く死んじゃえ」と奥さんに旦那さんが言われたのを聞いたと。これを証言として被告に殺意があったって話になっている。旦那さんは自分で飲んだと言っているのに、一審で言わなかったという事で信じるに値しないと。
車の中で聞いたという話は後に法廷では消え、病院の中で聞いたというのが残る。そしてそれは葛湯を飲んで入院した後、十日後の話であると。その間見舞いにも来なかったと。見舞いに来なかったという事が殺そうとした事の怪しさであると。十日後にようやく見舞いに来て、病室の中で居候の人がいる目の前で被告が旦那さんに向かって「お前なんて早く死んじゃえ」と言ったと。
殺人であるとするのなら、自分がやった事がバレたかどうか、成功したかどうか気になるのが普通。すぐに病院に行き死ぬかどうか?気付いているかどうか?これらを確かめずにはいられないはず。十日も放っておくという事は何を意味するのかと言えば、初めからストーリーはお互いに了解済みであるという事を示している要素の方が強いのではないか?居候のいる前で「お前なんか死んじゃえ」と言ったというのも、殺意が本当にあればそんな事は言わないし、殺してやると言ったわけでもない。このろくでなし、早く死んじゃえ、という言い方はある意味夫婦の会話としてはあり得る会話な訳で、そんな事を殺意と取られたら多くの夫婦がこれに当てはまるでしょう。
葛湯の話を細かく見て行くと、旦那さんと居候は保険金詐欺を行なおうとして病院に行くが、治ってしまい追い出されそうになる。翌日退院を命じられたという事で、どうしようかと自宅で思案する。何か食べるものが無いかという事で、奥さんに頼む。すると奥さんは「お前になんか食わせるものは無い」と言う。旦那さんは使いっ走りとして使っていた居候の人に何か食べられるものを探して来いと命じる。そこに葛湯があったって話になる。それに湯を入れて作る。そこにヒ素が入っていたというストーリーになっている。本当は旦那さんが自分で飲んだと言っているが、検察側の物語はそうなっている。
だとすると目の前のキッチンで被告がヒ素を入れたという事になる。仮にそうだとして、それに殺意があったとしても、そこですぐに反応が起こるのだから誰がやったのかは三人しか人がいないので簡単に怪しまれるし、本当にそこで死んでしまったら、検死となれば簡単にバレる。殺人事件としてはあまりにも杜撰な話でそれで詐欺が成立するなどあり得ない。極めて不自然な不合理な行動です。更に殺されそうになった旦那さんが、その事を理由に殺そうとした奥さんと結託して詐欺を働くか?って話になる。
被告はニッセイの保険の外交員をやっていたので、いろんな別の人名義の契約を解約しないで、ハンコもいっぱい持って、巧妙に保険を利用した詐欺を働いていた、居候が病院に行けば経営者保険のようなもので自分達にカネが入るようにしていて、その中から、居候にも分け前を与えていた。この手の詐欺は一件だけと言うなら話は別ですが、こういう風に複数回巧妙に利用していたとなると、一人では到底出来ない。保険屋も絡むし、医者もグルでないと出来ない。もちろん事故でせしめた事もあるわけだから、当然警察も絡んでいる。多数の人間が結託しないと、こういう巧妙な手口というのは上手く行かない。居候も食客として養われていた。しかもこの居候の父親や兄弟は警察関係者で警察一家でもある。
旦那さんが旅館でひっくり返って保険金をもらう。この時足を骨折している。この一件も詐欺であると立件されている。その際、骨折させたのは居候の人がバットで足を殴っていて、共犯であると旦那さんは証言している。更に被告である奥さんがバーベキューの火の中に突っ込んで大火傷を負って詐欺を働いた時も、家に火をつけて火災保険をせしめようとして、居候の人がガソリンまいて火をつけてしまったので、奥さんが逃げ遅れて大火傷をしたというのが被告の主張で、これは地元でも不審な事件という事で有名。これらがもし本当であるのなら、彼も共犯の疑いがある。その人間が証言している事が証拠になっているのは信憑性が無い。
もちろんこの林夫妻というのはどう考えても悪党だろうし、詐欺事件の方で言えば明らかに悪質な事を繰り返していたわけだから有罪でしょう。自分もその事には異論は無い。カレーの事件は疑義があると思っているだけで、彼女が無実だなんて事は毛頭思わない。詐欺に関しては黒でしょう。カレー事件だって現時点の証拠では有罪にするには無理があるとは思いますが本当の所はどうかはわからない。やっているかも知れないなと思いはする。
だから林夫妻の証言なんて信じるに値しないというのもわかる。だけど同じ穴のムジナである居候の証言は正当性があって、林夫妻には無いというのは不自然ではなかろうかと思うし、悪党だからと言って、カレー事件もやっているに違いないというのも違うと思う。外道は外道として裁く必要はあるだろうけれど、それはあくまでもやった事に関しての罪で、やったと証明出来ないもので有罪にしてしかも死刑にするのは、法治国家に住む人間としてはやっぱり看過出来ない。
金目的の詐欺事件はカレー事件との類似事件ではないし、しかも殺意があったというのも共犯でのヤラセの詐欺である可能性が高いわけだから、繰り返すうちに感覚が麻痺したという話もおかしい。実際にこの夫婦を詐欺の共犯でパクっている。
カレー事件は確かに起こった。夏祭りのときの炊き出しのカレーに何ものかが何らかの毒物を混入させ、4人の方が亡くなられ、66人の方が負傷されて今でも後遺症に悩まされている。毒物が本当にヒ素であったとするのなら、ほんの僅かになめただけでもの凄い嘔吐が始まってもの凄い苦しみと症状が出ると言われているので、事件の被害にあった方々は大変な苦しみであろうし、ご家族の方々の苦しみも尋常じゃないでしょう。
この世間を震撼させた恐ろしい事件が起こって、捜査が始まると、現場の目と鼻の先に、かつてシロアリ駆除業を営んでいてヒ素をいっぱい持っている林家というのがあった。近所では評判も悪くガラも悪い、しかも調べて行くと何やら怪しげな保険金詐欺とおぼしき犯罪を繰り返し重ねているふしがある。リーク情報によってマスコミが殺到しメディアスクラムが始まる。ガラの悪い被告は取材陣に水をかけたりする。犯人はコイツに間違いないと我々もすり込まれる。
メディアスクラムというのはカメラの向こう側、つまり対象が水をかけたり不遜な態度をしたりする所は映し出されますが、カメラのこちら側つまりどういう風な取材陣の過熱報道であるのかというのが画面からは見えない。対象側から写した映像なんかを見ると尋常じゃないキチガイ沙汰のお祭り騒ぎです。普通の感覚であれば腹を立てて水をまきたくもなるでしょう。クレーンで撮影しているは、木にのぼって撮影しているは、各新聞各雑誌、そして各テレビ局どころか番組単位で何台も何台もカメラを並べ立てられて、記者が張り付いている。おどろおどろしげな音楽で演出し、まるで犯人が彼女であるかのように報じ、お気持ちは?心当たりは?と散々追い込んで、キレて反撃した所を待ってましたと報じる。
世論が最高潮に盛り上がり、アイツが怪しいに違いないと誰しもがすり込まれて洗脳された頃に、林夫妻を別件で逮捕する。当初はカレー事件も夫婦が結託してやったのだろうという見積もりだったけれど、途中で旦那さんは詐欺で、奥さんはそれプラスカレー事件という事で、カレー事件は奥さんの単独犯という話に切り替わる。なぜかと言えば共犯の場合、共謀しなきゃならないので動機が必要になり、動機が見つからないので奥さん単独犯説に切り替わる。カレーを食べそうな人に保険金をかけたわけでもないし、カネが林夫妻に入って来るふしも無い。ご近所の人と喧嘩をして腹いせとしてやったというのも、そのケンカの跡が見つからない。動機が無い。そうなると二人では困る。一人だと衝動的犯行という話が成立する。やっていてもおかしくはないとメディアスクラムによって不機嫌そうな奥さんの不遜な態度を見せられて、世間でもこの鬼ババアがやっているに違いない。悪そうな顔をしているとすり込み、大半の人が疑う事も無く受け入れて行く。
しかし衝動的な犯行というにしても、鍋が四つあり、カレー鍋が二つ、おでんの鍋が二つあった。その中の一つにだけしか入れていない。一つの鍋だけであれば誰が食べるかわからない。つまり殺意というよりも悪質な嫌がらせに近い。更に犯行時刻の12時から12時40分の間にもし本当に紙コップ3分の2のヒ素を四つあるうちの一つの鍋に、林真須美被告が入れたとするのなら。ヒ素というのは水溶性ではないので金属のようにごろっと固まってしまう。12時から12時40分の間に入れて、食べたのが6時、12時40分以降、一度も味見もしくは味付けをしないで食べるのか?つまみ食いをする人だっている可能性も無いとは言えない。ほんのひとなめしただけで間違いなくすぐに症状が出て激しい嘔吐が始まる。
それに塊になってしまうので直前に相当よく混ぜないと混ざらない。まわりをうろうろしていただけで怪しまれるのに、混ぜていたという話は無い。しかも犯行時刻の時点ではカレー鍋の火はすでに止まっている。みんなでそれを食べるのが6時なわけだから直前で普通再加熱する。その時に味がつまってないか?もしくは味が薄くはないか?食中毒なんて起こっちゃかなわないので、痛んでいないか?そういう事を確認する。もし犯行時刻がその時刻であるとするのなら、みんなが食べる前に発覚していてもおかしくはないし、みんなを殺そうとしてやっているのだとすれば、不合理な時期に入れている事になる。自分の家族が食べるかもしれないし、子供が食べちゃうかもしれない。ヒ素がどれだけ危険なものかを十分承知している彼女がこんな無計画で不合理な行動を取るというのには、それを裏付けるような説得力がどこにも無い。
さてここまで読んでどうでしょう?合理的な疑いの差し挟む余地がないでしょうか?林被告が犯人だという証拠の数々を知って彼女が真犯人に間違いないと言い切れるでしょうか?言い切れなければ、つまり必ずしもそうとは言えない部分もあるではないかとなるのなら、近代裁判であれば推定無罪というのが鉄則になります。何度も繰り返しますが、必ずしもそうとは言えないのではないか?というのは違うという事を証明するのとは違う。無罪と言うとやってないと言っているように聞こえるかもしれませんが、裁判では無罪であって実際やっているかどうかはわからないとなるわけです。裁判とは真実を争う場ではない。必ずしもそうとは言えないのではないか?どころか、相当いい加減な証拠を積み重ねて彼女を有罪に、しかも死刑の判決を下している。
続く!!
被告の髪の毛からヒ素が検出された事を証拠の一つとして重要視していますが、これもそれだけ聞くと怪しい話ですが、どうも不可解で合理的な疑いを差し挟む余地がある。
被告は10月に逮捕されて、逮捕された当時に身体検査として髪の毛を切られている。その際4カ所から髪の毛を採取している。それを12月に鑑定に出す。これもスプリングエイトという機械を使って鑑定をし、亜ヒ酸が発見されたとなる。
しかしこれが不可思議で、発見された場所というのが16センチほどあるサンプルの髪の毛全体に付着していたというわけではない。事件があったのが7月な訳だから切断面から4.8センチの所に付着していたという話だけ聞くとそりゃそうだと思うのですが、不思議なのはその一点に付着していたというだけで、そこから先全体に付着していたわけではない。髪の毛は一本だけ生えているわけじゃなくて密集しているわけだから、普通であれば先っぽにも付着するだろうし、その間にも付着しそうなものですが、切断面から4.8センチの所に一点だけ付着している。
しかもいったんヒ素が髪の毛にくっつくと化学反応を起こしてしまいその跡は消えない。当然外から付着しているわけだから、その一点だけに付着させるにはどうやればそれが出来るのか?不可解極まりない。そういう不可解さは一切無視して、付着していたという事だけを持って証拠とし、バカマスコミもこれまた垂れ流す。普通そういう証拠として不可思議であるものに対しては、検査の結果を疑いそうなものですが、それが証拠になっちゃうわけですから恐ろしい国です。
被告がヒ素を使ってかつて人を殺そうとしたというのも、その殺そうとした相手は夫であったり、居候の人であったりという話なんですが、夫に対して失敗はするもののヒ素入りの葛湯を飲ませて殺して保険金を取ろうとしたとか、同じく居候の人に対して牛丼やうどんの中にヒ素を混入させて殺そうとしたとか、殺人をやろうとする人だから今回のカレー事件もやっているに違いないというわけです。
しかしそれが本当だと仮にするのなら、それは保険金目当ての事であって、カレー事件は検察ですら保険金目当てではないと言っている。誰が食べて誰が死ぬのかあらかじめわかりようも無いわけだから出来るわけが無い。
カネの為に人を殺しかねない人であるのなら、かえってカレー事件のような事を起こすような何の得にもならない事をする理由にはならない。反対証拠になる。悪事を働いてカネを儲けていたのがカネにもならない事件で全部バレてしまいかねないわけですから。これを理由にしてカレー事件の犯人だというのは普通に考えれば無理がある。他に悪い事をやっているからこっちも有罪に決まっているというのでは暗黒裁判です。
しかも葛湯を飲まして旦那を殺そうとしたという話も、実は旦那さんが自分で飲んだと自分で言っている。被告が入れたという証拠は何一つ無い。何で彼女が入れたという話になっているのかと言えば、居候の人の証言で旦那さんがその事によって病院に入院する。その見舞いに来た時に旦那さんにたいして被告が「早く死んじゃえ」と言ったという証言が理由になっているわけです。普通長い付き合いの夫婦であればそういう罵倒的な言葉も愛情表現であったりする事もあるわけで、これで殺意があったなんて言ったら誰でもしょっぴいて犯罪者に仕立て上げる事が出来るでしょう。
牛丼の話も被告に牛丼を作ってもらってそれを食ったらおかしくなったというだけの話。入れた所を見たわけでもなければ、これは病院にすら行っていない。うどんも同じ。証拠としてはあまりにも弱過ぎる。
この居候だった人というのは警察の宿舎の中で4ヶ月間寝泊まりして、生活の面倒を見てもらっている。その中で出て来た調書。
最初被告が逮捕されたのもこの一連の保険金詐欺事件、殺人未遂事件で逮捕される。カレー事件というのは一番最後にくっついた罪状。旦那と二人で逮捕されて、カレー事件になった段階で彼女の単独犯という事になる。旦那は詐欺で有罪。類似の事件とは言うけれど、目的は全く違う。類似事件といわれているものも被告が有罪だと言うにはあまりにも脆弱なものでしかない。
この葛湯事件の真相は旦那さん曰く、被告である奥さんの母親が平成8年に亡くなった。その時の保険金が1億4千万ほど被告が受取人で入る。旦那さんはその保険金を金庫から拝借して競輪に注ぎ込んで3、4千万使ってしまう。それが奥さんにバレて母親の形見に当るおカネをギャンブルに使ってしまったという事で、滅茶苦茶怒られて喧嘩になる。
その時に旦那さんが自分の体を張って詐欺を働こうと考える。そのカネを返せばいいだろうと。そして自分でヒ素を飲んで入院する。当然妻である被告の夫に対する殺人未遂などあるわけも無いと、旦那さんが自分でそう言っている。
しかしその言い分は家族の言い分で妻を擁護するための虚偽の証言であるという事で一蹴される。
この夫婦は昭和63年から保険金詐欺事件を繰り返して来た詐欺集団の人達で、言わばその道のプロ達。そのプロが自分の家がシロアリ駆除の仕事であるという事は周知の事実で、しかも自分の家の僅か5メートルの目と鼻の先で行なわれたお祭りのカレー鍋に、カネが儲かるわけでも何でも無いのにわざわざヒ素を使って無差別殺人のような事を行なえば、どうなるかは誰にでもわかる。バレるに決まっている。先ず一番最初に疑われる。
しかも近所での評判も悪く、ガラも悪い夫婦、そして当然疑われて捜査されれば、何やら怪しい不自然な保険金にまつわる詐欺と思わしきような振る舞いが見られるとなるに決まっている。何も得する事は無い自滅行為です。普通の判断力があれば、そんな事は簡単にわかる話。
しかしこれが検察や裁判所の解釈になると、疑わしき状況証拠はある。しかし動機が不明。というか普通にこういう前歴を読めばやらない事の証明を強化するような話のような気がするけれど、繰り返し詐欺事件を働いているうちに、つまり旦那さんや居候を殺そうとして保険金をせしめようとしているうちに、感覚が麻痺したって話になってしまう。ヒ素を使って人を殺したりする事に対して抵抗が無くなったという話になる。
旦那さんが自分でヒ素を飲んだというのも一審でその事を言わなかったという事を理由に却下されている。二審になって突然その事を言い出したので信用に値しないと。しかし旦那さんの言い分では担当検事にはその事をちゃんと言ったと言っている。法廷の進行は弁護人を通してと言われていたのでしゃべるような機会が全く無かったと。彼は詐欺罪で有罪になり、2005年まで刑務所に入っているので、アウトプットは法廷でしかない。そしてその事は言うなと言われたふしもある。
牛丼やうどんの問題で対象になっている居候の人の証言が何かと証拠として取り上げられているわけだけれど、この居候の人も詐欺仲間で詐欺事件では共犯者でもある。この詐欺集団は総額で8億から9億稼いでいる。居候の人はその事を不思議に思い、つまり何も仕事をしないで賭け麻雀やったり、ギャンブルに行けば一気に3、4千万も使ってしまうような狂った金銭感覚を持ち、裕福な暮らしをしている林夫婦に対して、どうすればそんなに儲かるのか?という事で近付いて、一緒になってその悪事に手を染めるに至ると、旦那さんは言っている。
しかしこの居候、今回詐欺では問われていない。むしろ単純に被害者として扱われている。これもおかしな話で毒を飲まされ続けてずっと居候していたという話になる。葛湯の話も居候の人の証言によって、車の中で旦那さんが「真須美にやられた」と言ったのを聞いたと。病院で「早く死んじゃえ」と奥さんに旦那さんが言われたのを聞いたと。これを証言として被告に殺意があったって話になっている。旦那さんは自分で飲んだと言っているのに、一審で言わなかったという事で信じるに値しないと。
車の中で聞いたという話は後に法廷では消え、病院の中で聞いたというのが残る。そしてそれは葛湯を飲んで入院した後、十日後の話であると。その間見舞いにも来なかったと。見舞いに来なかったという事が殺そうとした事の怪しさであると。十日後にようやく見舞いに来て、病室の中で居候の人がいる目の前で被告が旦那さんに向かって「お前なんて早く死んじゃえ」と言ったと。
殺人であるとするのなら、自分がやった事がバレたかどうか、成功したかどうか気になるのが普通。すぐに病院に行き死ぬかどうか?気付いているかどうか?これらを確かめずにはいられないはず。十日も放っておくという事は何を意味するのかと言えば、初めからストーリーはお互いに了解済みであるという事を示している要素の方が強いのではないか?居候のいる前で「お前なんか死んじゃえ」と言ったというのも、殺意が本当にあればそんな事は言わないし、殺してやると言ったわけでもない。このろくでなし、早く死んじゃえ、という言い方はある意味夫婦の会話としてはあり得る会話な訳で、そんな事を殺意と取られたら多くの夫婦がこれに当てはまるでしょう。
葛湯の話を細かく見て行くと、旦那さんと居候は保険金詐欺を行なおうとして病院に行くが、治ってしまい追い出されそうになる。翌日退院を命じられたという事で、どうしようかと自宅で思案する。何か食べるものが無いかという事で、奥さんに頼む。すると奥さんは「お前になんか食わせるものは無い」と言う。旦那さんは使いっ走りとして使っていた居候の人に何か食べられるものを探して来いと命じる。そこに葛湯があったって話になる。それに湯を入れて作る。そこにヒ素が入っていたというストーリーになっている。本当は旦那さんが自分で飲んだと言っているが、検察側の物語はそうなっている。
だとすると目の前のキッチンで被告がヒ素を入れたという事になる。仮にそうだとして、それに殺意があったとしても、そこですぐに反応が起こるのだから誰がやったのかは三人しか人がいないので簡単に怪しまれるし、本当にそこで死んでしまったら、検死となれば簡単にバレる。殺人事件としてはあまりにも杜撰な話でそれで詐欺が成立するなどあり得ない。極めて不自然な不合理な行動です。更に殺されそうになった旦那さんが、その事を理由に殺そうとした奥さんと結託して詐欺を働くか?って話になる。
被告はニッセイの保険の外交員をやっていたので、いろんな別の人名義の契約を解約しないで、ハンコもいっぱい持って、巧妙に保険を利用した詐欺を働いていた、居候が病院に行けば経営者保険のようなもので自分達にカネが入るようにしていて、その中から、居候にも分け前を与えていた。この手の詐欺は一件だけと言うなら話は別ですが、こういう風に複数回巧妙に利用していたとなると、一人では到底出来ない。保険屋も絡むし、医者もグルでないと出来ない。もちろん事故でせしめた事もあるわけだから、当然警察も絡んでいる。多数の人間が結託しないと、こういう巧妙な手口というのは上手く行かない。居候も食客として養われていた。しかもこの居候の父親や兄弟は警察関係者で警察一家でもある。
旦那さんが旅館でひっくり返って保険金をもらう。この時足を骨折している。この一件も詐欺であると立件されている。その際、骨折させたのは居候の人がバットで足を殴っていて、共犯であると旦那さんは証言している。更に被告である奥さんがバーベキューの火の中に突っ込んで大火傷を負って詐欺を働いた時も、家に火をつけて火災保険をせしめようとして、居候の人がガソリンまいて火をつけてしまったので、奥さんが逃げ遅れて大火傷をしたというのが被告の主張で、これは地元でも不審な事件という事で有名。これらがもし本当であるのなら、彼も共犯の疑いがある。その人間が証言している事が証拠になっているのは信憑性が無い。
もちろんこの林夫妻というのはどう考えても悪党だろうし、詐欺事件の方で言えば明らかに悪質な事を繰り返していたわけだから有罪でしょう。自分もその事には異論は無い。カレーの事件は疑義があると思っているだけで、彼女が無実だなんて事は毛頭思わない。詐欺に関しては黒でしょう。カレー事件だって現時点の証拠では有罪にするには無理があるとは思いますが本当の所はどうかはわからない。やっているかも知れないなと思いはする。
だから林夫妻の証言なんて信じるに値しないというのもわかる。だけど同じ穴のムジナである居候の証言は正当性があって、林夫妻には無いというのは不自然ではなかろうかと思うし、悪党だからと言って、カレー事件もやっているに違いないというのも違うと思う。外道は外道として裁く必要はあるだろうけれど、それはあくまでもやった事に関しての罪で、やったと証明出来ないもので有罪にしてしかも死刑にするのは、法治国家に住む人間としてはやっぱり看過出来ない。
金目的の詐欺事件はカレー事件との類似事件ではないし、しかも殺意があったというのも共犯でのヤラセの詐欺である可能性が高いわけだから、繰り返すうちに感覚が麻痺したという話もおかしい。実際にこの夫婦を詐欺の共犯でパクっている。
カレー事件は確かに起こった。夏祭りのときの炊き出しのカレーに何ものかが何らかの毒物を混入させ、4人の方が亡くなられ、66人の方が負傷されて今でも後遺症に悩まされている。毒物が本当にヒ素であったとするのなら、ほんの僅かになめただけでもの凄い嘔吐が始まってもの凄い苦しみと症状が出ると言われているので、事件の被害にあった方々は大変な苦しみであろうし、ご家族の方々の苦しみも尋常じゃないでしょう。
この世間を震撼させた恐ろしい事件が起こって、捜査が始まると、現場の目と鼻の先に、かつてシロアリ駆除業を営んでいてヒ素をいっぱい持っている林家というのがあった。近所では評判も悪くガラも悪い、しかも調べて行くと何やら怪しげな保険金詐欺とおぼしき犯罪を繰り返し重ねているふしがある。リーク情報によってマスコミが殺到しメディアスクラムが始まる。ガラの悪い被告は取材陣に水をかけたりする。犯人はコイツに間違いないと我々もすり込まれる。
メディアスクラムというのはカメラの向こう側、つまり対象が水をかけたり不遜な態度をしたりする所は映し出されますが、カメラのこちら側つまりどういう風な取材陣の過熱報道であるのかというのが画面からは見えない。対象側から写した映像なんかを見ると尋常じゃないキチガイ沙汰のお祭り騒ぎです。普通の感覚であれば腹を立てて水をまきたくもなるでしょう。クレーンで撮影しているは、木にのぼって撮影しているは、各新聞各雑誌、そして各テレビ局どころか番組単位で何台も何台もカメラを並べ立てられて、記者が張り付いている。おどろおどろしげな音楽で演出し、まるで犯人が彼女であるかのように報じ、お気持ちは?心当たりは?と散々追い込んで、キレて反撃した所を待ってましたと報じる。
世論が最高潮に盛り上がり、アイツが怪しいに違いないと誰しもがすり込まれて洗脳された頃に、林夫妻を別件で逮捕する。当初はカレー事件も夫婦が結託してやったのだろうという見積もりだったけれど、途中で旦那さんは詐欺で、奥さんはそれプラスカレー事件という事で、カレー事件は奥さんの単独犯という話に切り替わる。なぜかと言えば共犯の場合、共謀しなきゃならないので動機が必要になり、動機が見つからないので奥さん単独犯説に切り替わる。カレーを食べそうな人に保険金をかけたわけでもないし、カネが林夫妻に入って来るふしも無い。ご近所の人と喧嘩をして腹いせとしてやったというのも、そのケンカの跡が見つからない。動機が無い。そうなると二人では困る。一人だと衝動的犯行という話が成立する。やっていてもおかしくはないとメディアスクラムによって不機嫌そうな奥さんの不遜な態度を見せられて、世間でもこの鬼ババアがやっているに違いない。悪そうな顔をしているとすり込み、大半の人が疑う事も無く受け入れて行く。
しかし衝動的な犯行というにしても、鍋が四つあり、カレー鍋が二つ、おでんの鍋が二つあった。その中の一つにだけしか入れていない。一つの鍋だけであれば誰が食べるかわからない。つまり殺意というよりも悪質な嫌がらせに近い。更に犯行時刻の12時から12時40分の間にもし本当に紙コップ3分の2のヒ素を四つあるうちの一つの鍋に、林真須美被告が入れたとするのなら。ヒ素というのは水溶性ではないので金属のようにごろっと固まってしまう。12時から12時40分の間に入れて、食べたのが6時、12時40分以降、一度も味見もしくは味付けをしないで食べるのか?つまみ食いをする人だっている可能性も無いとは言えない。ほんのひとなめしただけで間違いなくすぐに症状が出て激しい嘔吐が始まる。
それに塊になってしまうので直前に相当よく混ぜないと混ざらない。まわりをうろうろしていただけで怪しまれるのに、混ぜていたという話は無い。しかも犯行時刻の時点ではカレー鍋の火はすでに止まっている。みんなでそれを食べるのが6時なわけだから直前で普通再加熱する。その時に味がつまってないか?もしくは味が薄くはないか?食中毒なんて起こっちゃかなわないので、痛んでいないか?そういう事を確認する。もし犯行時刻がその時刻であるとするのなら、みんなが食べる前に発覚していてもおかしくはないし、みんなを殺そうとしてやっているのだとすれば、不合理な時期に入れている事になる。自分の家族が食べるかもしれないし、子供が食べちゃうかもしれない。ヒ素がどれだけ危険なものかを十分承知している彼女がこんな無計画で不合理な行動を取るというのには、それを裏付けるような説得力がどこにも無い。
さてここまで読んでどうでしょう?合理的な疑いの差し挟む余地がないでしょうか?林被告が犯人だという証拠の数々を知って彼女が真犯人に間違いないと言い切れるでしょうか?言い切れなければ、つまり必ずしもそうとは言えない部分もあるではないかとなるのなら、近代裁判であれば推定無罪というのが鉄則になります。何度も繰り返しますが、必ずしもそうとは言えないのではないか?というのは違うという事を証明するのとは違う。無罪と言うとやってないと言っているように聞こえるかもしれませんが、裁判では無罪であって実際やっているかどうかはわからないとなるわけです。裁判とは真実を争う場ではない。必ずしもそうとは言えないのではないか?どころか、相当いい加減な証拠を積み重ねて彼女を有罪に、しかも死刑の判決を下している。
続く!!