ミツバチ - 脅威の脳力
春の花が咲き乱れて、今年も蜂たちが蜜を集め始めます。養蜂家にとっても忙しい時期がやってきました。養蜂の一般的なサイクルは次のようになっているようです。
11月~3月 : 室内で冬眠。
4月~5月 : 女王蜂が卵を産み、3週間後に働き蜂が作業を開始。
5月~6月 : 巣箱を屋外に配置し、採蜜作業を行う。
6月~11月 : 休閑期となりハチミツ回収は行わず、ミツバチたちの自由にまかせる。
5~6月だけ蜜をありがたくいだたいて、あとはミツバチの自由にさせておくのですね。こういう自然と共存する生産っていいですね。
ところでミツバチはどんな昆虫でしょうか。ミツバチはとても興味深い昆虫です。まず、働き蜂はすべてメスです。蜜集めをするのは生涯最後の4~5日間です。働き蜂の寿命はおよそ21日ですが、寿命は時間ではなく、飛行距離にかかわっていて、一定の距離を飛ぶと命が尽きるようです。
ミツバチが蜜のありかを「ダンス」で仲間に知らせることは広く知られています。どのようなダンスなのでしょうか。蜜たっぷりの花を発見したミツバチが巣に戻ると、真っ暗な巣の中の垂直な面の上で、胴体を激しく振動させながら8の字状に歩き始めます。他のミツバチたちはダンサーの回りに集まり、できるだけ彼女に触れようとします。8の字ダンスのスピードとサイズ、そして振動数と巣の壁上でのダンスの向きから、仲間は花までの距離と方角を推定するのです。
このような抽象的なダンスで表現するすべをどうして獲得したのでしょうか。とても不思議ですね。実はこのダンスは花までの実距離を伝えているのではありません。そこへ行って戻ってくるまでどのくらいの労力がいるか、つまり飛行のエネルギー量を伝えているのです。たとえば風のある日は無風の日に比べて違ったダンスになります。また、行きが向かい風か帰りが向かい風かを区別することもできます。
ある実験で、湖の真ん中を示すダンスをするように仕向けました。するとミツバチは湖の岸までは行きますが、真ん中までは行こうとしませんでした。湖の真ん中に花があるはずのないことを知っていたのです。また、目的地に向かう途中で、蜂をまったく違う場所に移動させても迷うことなく目的地へ到達しました。このことから、ミツバチたちは頭の中に地図情報を持っているといえそうです。おそらく、蜂の頭の中の地図とダンスは密接に関連づいているのではないでしょうか。
また、次の実験からも蜂の驚くべき脳力がわかります。まず、砂糖水を巣から数メートルの位置に置きます。するとすぐに蜂がやってきます。次の日、砂糖水を巣からさらに25%遠くに置きます。またすぐに見つけます。これを繰り返すとやがては、次の位置を想定し、25%先で待っているようになるというのです。一定間隔ではなく、25%間隔です。蜂は等比級数の計算ができるのでしょうか。私達の想像しているよりも、この地図とダンスのシステムはすばらしいものなのかもしれません。
余談ですが、結婚後1ヶ月間を「蜜月」と言ったりしますね。英語ではハネムーン「honey moon」です。語源は、新婚後一ヶ月間、花婿にハチミツ酒を飲ませ精力をつけさせるという古代ゲルマン人の習慣からきているという説があるそうです。しかし、甘い蜜のような言葉も一つ間違えると蜂の一刺しを食らったりすることがあるので要注意です。
参考文献
・ウィキペディア - 蜂蜜
・プロポリス - ミツバチの生態
・山田養蜂場 - みつばちの不思議なくらし
・畜産ZOO館 - ミツバチのデータ
・そうだったのか!(講談社)
・ファーブル昆虫記
※このコラムは2005/05/11に他ブログで執筆したものです。