山梨日日新聞の「風林火山」から
岩手県遠野市に関する記事をご紹介します。
市だけの公益にとらわれず県全体の公益に目を向け
大局的視野に立った先見性のある政策には感動すら覚えます。
風林火山
柳田国男の「遠野物語」で知られる岩手県遠野地方。
日本民俗学の発祥の地ともいえる地域だが、今回の東日本大震災では、
岩手県沿岸部の復興に向かう「後方支援拠点」として名をはせている。
遠野市によると、自衛隊や自治体、医療団、ボランティアなど、
これまでに延べ180団体が拠点を置いた。
盛岡市や宮古市、陸前高田市などから50㌔圏内に位置し、
防災ヘリコプターを使うと移動時間はいずれへも約15分の立地だ。
遠野市は地震による沿岸部の津波被害を想定し、
4年前から後方支援の準備を整えてきた。
後方支援に使う拠点施設の整備を沿岸自治体とともに県に求め、
自衛隊などとの共同防災訓練を繰り返したという。
3月11日には地震発生の14分後に、
臨時ヘリポートとして遠野運動公園を開放。
警察や自衛隊、他府県の緊急消防援助隊が
次々と集結し、沿岸部に散った。
内陸部と沿岸部を結ぶ遠野市は、
昔から人や物が集結する交易の場として発展した。
県職員時代、阪神大震災の支援活動に参加した本田敏秋市長が
「この地でどんな役割を果たすべきか」と考えた結果が後方支援構想だった。
869年に東北を襲った貞観地震以来の大地震で
「想定外」という言葉が多用される東日本大震災。
遠野市は想定外を想定して準備を進めてきた。
千年に一度の備えができていたのは、カッパ、山うば、座敷わらし、
神隠しなど「伝承の地」ならではのことだろうか。
(2011年5月26日 山梨日日新聞「風林火山」より)