昨日の山梨日日新聞に、コミュニケーションに関して
もう一つ興味深い記事が載っていたのでご紹介します。
不都合な存在排除 「KY」世代に警鐘
「あいつはKY(空気読めない)」。仲間うちで過剰に空気を読み合う一方、
自分にとって不都合な存在を「圏外」に追いやる現代の子どもたち。
筑波大大学院教授の土井隆義さんがこのほど鰍沢町で
「『空気を読む』世代の友だち関係―現代の子どもたちと親たちはどう向き合うべきか」と題して講演。
気遣いと排除の思考が生み出す脆弱な人間関係に警鐘を鳴らした。
あなたは子どもとどう向き合ってますか?
「空気を読む世代」の一例として土井さんは、
秋葉原無差別殺傷事件で17人もを殺傷しておきながら
「知り合いに迷惑を掛けたくない」と携帯電話の履歴を消去していた犯人や、
自己紹介サイト「プロフ」に掲載した個人情報がネット上に流失して初めて慌てる中高生を挙げる。
「人間関係の内側で過剰に空気を読み合う一方、グループの外側に驚くほど無関心」と指摘する。
「いじりの温床」
内側への過剰な気遣いは息詰まる人間関係を生んでいると土井さんは語る。
クラスの中で異質な人間をつつくかつてのいじめと違い、
同じ小集団の中でわずかな差を見つけて「いじり合う」のが今日的ないじめの特徴だ。
「『いじめてるんじゃない、いじってるんだ』というのが加害者の言い分で、
被害者も『いじられてオイシイ』と思い込もうとする。
いじめを遊びでラッピングしているから、深刻さが表面化しにくい」。
こうした「いじり」の温床となっているのが、教室という同じ空間を共有しながら、
グループ間の交流が乏しい幾つもの層に分かれた
「スクール・カースト(校内における階級制度)」とも呼ぶべき状況。
「子どもの言葉を借りれば『格が同じ』『身分が同じ』仲間同士で小グループを作り、
閉じた世界の中で人間関係が完結している」という。
グループ内でファッションや言葉遣いをまねし合う一方、
違うグループとの付き合いを避けようとする傾向がある。
「格上」のカーストがあこがれや攻撃の対象とならないのは、
「既に圏外として排除されているから」と土井さんは語る。
「対等でフラットな人間関係にこだわるため、
上下関係になってしまいそうな人間はあらかじめ押し出してしまう」。
目立つ子は「フラットな人間関係を傷付ける加害者」とみなされ、
いじめの口実として“正当防衛”が使われるという。
親子間でも問題
そんな中、子どもたちがよりどころにするのが「空気を読む」技術だ。
「周りのウケを狙えるかどうかが重要視されるため、
常に場の空気を読んでどう思われているかを探らないと、
自分の向かっている方向が正しいのか分からなくなってしまう」。
近年、エリートコースから脱落した青年による自己破滅型の犯罪が目立つことについて、
土井さんは「いくらセキュリティーを強化して監視の目を張り巡らせても、
不気味なものは内側から出てくる」と指摘する。
一方、居心地の良い人間関係を保ち、
本音でぶつかり合うことを避けようとする傾向は親子関係でも見られるという。
「相手と衝突しない限り、自分と衝突できない。
子どもを衝突から遠ざけようとすることで、
不都合な局面やつまずいた自分と向き合う力を奪っていることに気付くべきです」。
(2010年2月10日 山梨日日新聞より)