(38)「すいません、忘れ物しちゃって」と甘えるような声を出し、松田くんとの距離を縮めていた。
「何を忘れたの?」
「弘美!何を忘れたんだっけ ?」
「え?・・私の気持ちかな」
上手い事を言う「ねぇ松田くんさ、今好きな人居るの ?」涼子が言う。
「え ?」別れたばかりでいませんよと、複雑な顔をする。
「そうなのかぁ、それ聞いて急にお腹減っちゃった。ラーメン食べたいな」
「いいよ 作ろうか」
厨房に入り遠のくと「・・あのさ、渡辺くんの事だけど、妹さんの話は初めて聞いたの ?」
奥から声だけが聞こえてくる「初めてだよ、あいつも妹が居る事を知らなかったのじゃないの ?ショックだったろうな。オヤジさん良く知ってるけど、他人には厳しかったのを思い出すよ。人に厳しく、己に甘かったようだね」
「・・」
「で、近所に住んでいた矢川 (冬子) さんには甘かったし〜。昔、工場を経営している関係でバイトに来ていた矢川さんを好んでいたと言うよ」
「へーそうなんだ、冬子はお父さんに気に入られていたんだ」
「小学生からの幼馴染だから、運命かな」
「運命か、悪いことも良いことも運命ね」
「はい、お待ち! 」
「すごい、サービス満点のラーメンね」
「これは弘美のね、逆転さよなら満塁ホームラントッピングかな?」
「美味しいわ。松田くんは離婚してどこに今は住んでるの?」
「近くだけど寝るだけに帰るくらいだね。一人だから気楽だけど忙しくて・・」
弘美「私、こんな美味しいラーメン毎日食べたいわ」
凉子「通ったら?」
松田「それは嬉しいね、毎日なら手伝ってくれれば無料にします」
「弘美、手伝えば・・松田くんの甥っ子の受験の助けにもなるし・・ねぇ時給いくら?」
「え?ほんとに! 手伝ってくれるなら時給・・1300円 出しますよ 」それは松田としたら、一石三鳥にも思え現実になるのだったらと喜んだのだ。暇が無くても、過去に好きだった人と一緒に居られる。デート代はバイト代と思えば安上がりと松田は感激したのだ。
「私は、これから自立しなければと思っていたから、試しにランチの時間帯くらいならやってみようかな?」
涼子も背中を押してくれたのが力強かった。つづく


