(47)「渡辺先輩はパンドラを開けなかったですね」
「・・」
「さっき鈴木さんを、好きだと言わなかったでしょ ? 言えばお互いの心に支障が起こりますから」それは理解していたが、長田くんは涼子の過去を知っているような?そう思うと、何をしている人なのか気になってくる。
長田くんは涼子もよく知らない下級生。彼は上級生とは話が合わないからと二次会には行かないらしい。皿洗いも終わらずにいると、店主の松田くんは仕込みの準備に入っていた。
渡辺くんら、他のOBたちも二次会に流れ、もちろん新井江梨子先生は監督と何処かに消えていく。
涼子も「終わったので、そろそろ帰ります」
「ありがとうございました」
店主の松田が礼を言うと「もうすぐ私も帰るわ」
弘美が言ってくるが5時過ぎでは、まだ帰らないだろう。涼子が帰る時は、長田くんと一緒だったので「お疲れ様です。今日は鈴木さんが居たので早く終わりました」と言ってくれる。
「え? ・・いつも集まりは、長田くんが皿洗いなの?」と、笑いを堪えた。
「そうなんですよ、当たり前のように僕がやるんです、皆はウロウロするだけなので手際よくパッパと片付けちゃいます」
そういうと「じゃ帰ります」と出ていってしまった。
涼子は慌てて「じゃ私も帰るね」
「あ、今日はありがとう、今度家に行くね」
「うん、連絡する」別れたと同時に長田くんを追った。駅まで真っ直ぐだから、早足で「待って」呼び止めた。
「慌ててどうしたんですか?それに制服姿ですよ。これで帰るんですか」と、気にしてくれる。
「あ、着替え忘れた」外はまだ明るいし、ラーメン店はお邪魔のようだしと困った顔をした。
「あ、そこのカフェのトイレで着替えたらいいですよ。僕も珈琲が飲みたかったし、一緒していいですか ?」涼子はあのコンビニの広いトイレでいいと思ったけど、長田くんの事も知りたかったので頷いた。
手際良く入店すると着替えの為に持ってきていた大きめのショルダーバッグを下ろす・・注文を終えて長田「着替えないんですか?」
「え? 安心したので珈琲飲んでからする、少しこのままで・・」
「そうですか、僕としたら嬉しいですけどね」長田くんは中年のパンドラの扉を開けたのだ。つづく


