大人たちの過ぎゆく日々 -18ページ目

大人たちの過ぎゆく日々

身近な家庭菜園/現代小説

 (8)車は山沿いに入り険しい道を登ると 「ほんとうに温泉あるの ?」


「あるよ、レストランも、ショッピングモールも」

 

「私・・モール街歩いてみたいわ」


涼子は制服姿で冒険したくなっていた。

 

「それなら、俺が引率を引き受けるぞ」そんな先生の言葉が、学生の涼子に戻してくれるようだった。

 

しばらくするとキャンプ場の管理事務所前の到着、先生は手続きを書き込むと「鍵と入浴のチケット渡しておくよ」 そう言うと、車をソロソロと走らせて予約したバンガロー前に横付け。

 

「俺はキャンピングカーで寝るから気にしなくていいよ」


素っ気無い言葉。ドアを開けると標高が違う涼しさを感じる「ちょっと肌寒くなっているよ。温泉入りたいけど涼子どうする ?」

 

「私はやっぱ、まだ明るいから・・モール街歩いてみたいわ」と、気持ちは変わらない。

 

「 温泉組みと、ショッピング組みと別行動だね、あとで合流しましょう」と、決めると気持ちは先生とデート気分。 

 

「じゃ、鈴木の保護者として着いていくかぁ」 とルームミラーで髪を整える先生の姿は、保護者なんていう態度ではなかった。

 

 キャンピングカーはバンガロー前で止まってからも話し込んでしまう。そこは自然がいっぱいの別世界、誰にも気遣うこともなく、過去の自分を懐かしがるように童心に戻ってしまうのだ。



「涼子さぁ、本当に高校生に見えるわよ。うらやましいわ。私も涼子みたいに、もう少し痩せてたら初恋の相手に会って何時間でも話していたいわ。もしも結婚していたらどんな夫婦になっていたか〜なんて聞いたりして、過ぎ去った過去を楽しんじゃうかな」


それを聞いて思い出したことがある。さっき、管理事務所で手続きをしている時、先生は夫婦と娘2人書き込んでいた。涼子は娘と思われたい気持ちと、妻としても願う複雑な心境を感じたのだった。つづく

 「わぁ ! 青春ね」

 

「ハイソックス、生足も若々しい」


皆が涼子の制服姿に懐かしそうに見てくれたので、少々浮き上がって照れると先生もチラッと向きを変えた。

 

「化粧してるから高校生らしくないわ」 


涼子が謙遜すると「変わらないスタイルで昔を思い出すが、スカート丈はもっとせり上がってたな」もっと上げろと言いたそうだ。そんなはっきり物事を言う先生は以前とは変わらなかったが、ただ25年間も知り合ってるような感覚が信頼感も作り上げていた。

 

涼子は紺のサマーセータを持ってきていたので、白のスクールブラウスをカモフラージュ。パンストは高校生には似合わないと、彼女たちが言うのでそうしたのだった。


この歳で生足は変態だろうと思うけど、スリムな身体つきが制服を着こなしてしまうと「お似合いよ」それが彼女たちも喜んだし、減量がんばってみようかなと声も聞こえた時は穿けて良かった。

 

過去に戻って、エネルギーを貰えた感じ・・すでに気持ちは高校生気分に戻っての旅の出発なのだ。

 

「先生、泊りって?キャンピングカーの中なの ?」

 

「いや、俺だけは車中泊だ。そのうち日本一周しようかと思ってね・・誰か行くか?」 

 

誘われて「へぇ、いいわね 行きたいけどねぇ~」 と興味を示さない。

 

「・・君たちの宿泊予約は取ってあるよ。バンガローだけど、でも飲み物も食料も必要なものは買ってあるし、近くにはレストランや温泉もある」

 

「温泉は入りたいわ。それにしても、この車って冷蔵庫もあるのね。ビールも冷えてるし最高」

 

「飲んでもいいよ。じゃ出発だ」

 

「それではお言葉に甘えまして !  先生の還暦に乾杯」

 

「おいおい、まだ50代だぞ」

 

「ごめんなさい 私達だけで飲んでます」

 

「いいさ、教え子と一緒にドライブなんて幸せだよ」

 

「こんなにも熟女、教え子なんて幸せでしょ」


「・・」


2時間も走ってくるとコンビニに駐車「ちょっと休憩しようか」 

 

ドアを開け外気に触れると涼子は上着を脱ぎ、白のブラウスにチェックのプリーツスカートが当時のまま・・それを先生は運転席から眺めながら体を休めるようにリクライニングシートを倒した。

 

今でも胸が小さい涼子は白いブラウスを着こなしていた。後ろ姿が当時の高校生にダブってみえると、先生は自らも昔を想い出して目頭を押さえた。

 

しばらくして 「先生、トイレは?」


車のドアを開けられて始めて夢から覚めたように、ガタンとリクライニングシートを起こし 「そうだな、ビール買ってくるよ」


 顔も合わさず降りると、コンビニ袋に缶ビールをたくさん詰め込んで戻っていた。

 

「わ!先生、私たちを酔わせたいの?」

 

「そうじゃないさ、俺だって夜は飲むさ」 酔わせたかったのも事実であるが、みんな美味い酒は知っていた。つづく

 (6)旅行の予定日が決まると 「スカート穿けない」 と連絡が入って旅行は無理と弱音を吐いてきたのだ。先生と一泊する楽しみより、体型が気が付かないくらい徐々に変化していたことに大きなショックを受けたという。

・・

「涼子は体型変わらないから、いいわね」 

 

「なんとか穿けそうよ」 穿けてはいないが当日までは何とかなると意地で言ってしまう。

 

「そうだ ! 涼子が穿けるんだからさ」

 

「どういうこと ?」 ひとり穿ければ、なんとか誤魔化して出掛けようと言うのだ。全てを涼子に任せて先生のご機嫌をお願する。考えれば穿ければいいだけなので、皆と一緒に楽しい旅にすることにしたのだ。


・・

当日、車の往来の少ない待ち合わせ場所に行くと、キャンピングカーの中からジーンズ姿の先生が下りて来た時はびっくりした。

 

「やぁ、君たち、色気無いなぁ」 期待外れでがっかりしたような顔。私達はジーンズ姿なので先生も呆れたようで 「約束した制服じゃないのか ?」 

 

「家からは無理ですよ。持ってきたけど・・」

 

「そうか、じゃ車中で着替えるか、外で待ってるよ」

 

即刻 「無理です」 

 

「穿けるだろうに~。俺だって当時穿いていたジーンズだよ」先生は体育系なので、25年前の古びたジーンズをダメージを付けたように穿いて来ていたのだ。

 

それより先生が制服に拘るのは何だろうか。

 

「ねー涼子、青春に挑戦してみたら ?」


彼女たちが背中を押すのは、自分たちも青春を思い出したいと願っているらしかった。それなら・・もう一度現実を見つめて、過去に戻って軌道を修正してみたい願いが膨らんできた。

 

青春の夢、そして現実を見直す・・スカートを穿けていたのは努力の結果。ただ穿けることは出来ても、顔はどう見ても学生には程遠い。

 

それでも髪は当時と同じボブなので若々しく見える涼子。チェックのスカートも旅先なら大丈夫だろうと、キャンピングカーの中で穿き替え、先生や皆の希望に応えた。つづく