第79期A級順位戦/最終戦「羽生九段-三浦九段を振り返ろう」 | 柔らかい手~個人的将棋ブログ

第79期A級順位戦/最終戦「羽生九段-三浦九段を振り返ろう」

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第79期A級順位戦対戦表

 

 

斎藤慎太郎八段の見事な優勝で幕を閉じました

今年の「将棋界の一番長い日」第79期A級順位戦/最終戦

9回戦・一戦対局の余韻は一夜明けてもなお色濃く残ります。。

 

 

今回はその中から

「羽生善治九段-三浦弘行九段」の模様を

振り返らせていただきます。。

 

 

 

2手目△8四歩。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: なし

△羽生九段: なし

 

本局の先手は三浦九段。

順位戦ここまで1勝(7敗)と不本意極まる成績で

A級陥落が決定、B級1組から捲土重来を期す来期への

布石としたい本局の初手は飛車先を突く▲2六歩から。。

 

一方、辛くも残留となったものの3勝5敗と負け越しが決定。

来期へつなげるべく有終の美を飾りたい羽生九段も2手目に

同じく飛車先を突く△8四歩と返して、対局はスタート。。

 

 

 

4手目△8五歩。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: なし

△羽生九段: なし

 

次に両者は息を合わせて飛車先を決め

戦型は「相掛かり」となりました。。

 

 

 

9手目▲5八玉。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: なし

△羽生九段: なし

 

互いに角頭を金で受け、飛車の横に銀を立てる

おなじみの同形模様の進行から、迎えた上図の局面で

三浦九段が玉を立て、「中住まい」に構えたのをみて。。

 

 

 

10手目△8六歩

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: なし

△羽生九段: なし

 

羽生九段はここで手を変え

自らの飛車先8筋の歩を突き合わせました。。

 

 

 

15手目▲3六歩。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: なし

△羽生九段: 歩

 

以下、▲同歩~△同飛の進行で歩交換が成立。。

三浦九段は突進してきた後手の飛車先へ歩を打ち

8筋を穏やかに収めてから、3筋の歩を突きました。。

 

この手の対し、羽生九段は

6分の考慮の後で、9筋の端歩を突き(16手目△9四歩)

一つ間合いを計ると、次に三浦九段が端歩を受けることなく

4筋の歩を突き出したのをみて(17手目▲4六歩)。。

 

 

 

18手目△8六歩。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: なし

△羽生九段: なし

 

羽生九段は37分の長考で慎重に読みを入れてから

浮いた先手の歩を標的に、再び8筋から突っかけます。。

 

 

 

23手目▲2四歩。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: 歩

△羽生九段: 歩2

 

8筋での歩交換成立直後

羽生九段が飛車を横へ走らせ4筋の歩を捕獲したところで

三浦九段は自らの飛車先2筋の歩を突き合わせ反撃開始。。

 

 

 

27手目▲8四飛。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: 歩2

△羽生九段: 歩2

 

同じ手順で2筋でも歩交換が成立すると

三浦九段は前に出た飛車をガラ空きの8筋に回し

これが狙いの作戦と、機敏に拠点を作ります。。

 

この手に、羽生九段がノータイムで

先手の飛車先に歩を打ち込むと(28手目△8三歩)

三浦九段は飛車を自陣へ引き下げ(29手目▲8七飛)

慌しかった序盤の攻防はようやく一段落となりました。。

 

 

 

34手目△6二玉。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: 歩2

△羽生九段: 歩

 

午前の対局は上図34手目まで進行。。

互いに自陣の駒を整備する中、羽生九段が居玉を解除し

6二の地点に構えた局面で、昼食休憩に突入します。。

 

【 お昼のメニュー 】

 

両対局者ともに「春の浮月御膳」

 

 

 

午後の対局となっても

まずは双方、午前に続いて自陣の駒組みを進行。。

 

 

 

40手目△6二玉。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: 歩2

△羽生九段: 歩

 

三浦九段が左の銀を玉の右側へとスイッチすると

羽生九段はヒラリと飛車を8筋に回し飛車交換を注文。。

この手に、三浦九段はノータイムで▲8五歩(41手目)とし

飛車交換を拒否、水面下での駆け引きが展開されます。。

 

 

 

51手目▲5六銀。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: 歩

△羽生九段: 歩

 

両者はジワジワと間合いを詰めあいながら

互いの思い描く模様を盤上へと投影させて行き

玉の「入城」の手はずを整えた羽生九段に対して

三浦九段は攻撃的に、二枚の銀を繰り上げます。。

 

開戦への気配も高まる上図から、次に

羽生九段が1筋の歩を突き出し(52手目△1三角)

角の覗きをみせつつ、先手に手番を渡すと。。

 

 

 

53手目▲6五銀。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: 歩

△羽生九段: 歩

 

三浦九段は21分の考慮の末

銀を後手の飛車にぶつけ、仕掛けを決断しました。。

 

羽生九段は△7五飛(54手目)とかわして

以下、▲6六歩~△同角~▲5六銀~△2六歩に

下図59手目▲3七桂と進行。。

 

 

 

59手目▲3七桂。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: 歩

△羽生九段: 歩2

 

歩交換を成立させつつ角を戦場へと迫り出した

羽生九段が2筋の歩を伸ばし、追撃態勢に入ったのをみて

三浦九段が桂馬を跳ねて迎撃に備えた、上図の局面で

夜戦に備えて夕食休憩に突入します。。

 

【 夕食のオーダー 】

 

三浦九段: 特別弁当〈勝〉

羽生九段: 静岡ちらし

 

 

 

61手目▲5五銀右。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: 歩

△羽生九段: 歩2

 

夕食休憩明け直後の一手で

三浦九段は後手の角の捕獲に乗り出し

勝負に出ました。。

 

羽生九段はすぐに△同角(62手目)と応じて、以下

▲同銀~△3三桂~▲6四歩~△同歩~▲8六飛をみて

△3一金~▲3五歩~△7五飛~▲5六歩~△3五歩~

▲6六銀に△7四飛~下図75手目△7四歩と進行。。

 

 

 

75手目▲7六歩。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: 角

△羽生九段: 銀、歩4

 

積極的な仕掛けを試みた三浦九段ですが

銀を一枚剥がされた上に、自陣が広く間延びし

飛車・角の大駒もすぐの活用が見込めない

苦しい展開を強いられます。。

 

それでも何とか後手の飛車に圧力をかけつつ

三浦九段は懸命に活路を求めますが。。

 

 

 

88手目△6六角。

 

上図での持ち駒

 

▲三浦九段: 飛、角、歩2

△羽生九段: 銀、歩4

 

羽生九段は爽やかに飛車を捌くと

手にした角を気持ちよく急所へと打ち込み

有無を言わせず、勝負を決めに出ました。。

 

「羽生九段-三浦九段」の棋譜はこちら

 

 

【 投了図・94手目△2七歩成 】

 

 

投了図での持ち駒

 

▲三浦九段: 飛、角、歩2

△羽生九段: 角、銀、歩3

 

今期の成績を象徴するかのように

三浦九段は本来の鬼気迫る粘りを発揮することなく

上図の局面で力突き、無念の投了を告げました。。

 

終局時刻は午後10時5分。

有終の美を飾った羽生九段は4勝5敗で全日程を終了。

一方、三浦九段は1勝8敗で今期のA級の幕を閉じました。。