第54期王位戦7番勝負/第3局「最終盤戦を振り返ろう」
【 投了図・108手目△4三玉 】
投了図での持ち駒
▲羽生王位: 銀2、桂2、歩2
△行方八段: 飛、銀、歩2
昨日行われました
第54期王位戦7番勝負/第3局は上図108手までで
後手・行方八段が勝利。。
【 終局直後 の談話 】
行方八段
「途中苦しくなって…昼休みのとき相当ひどいと思った。
ミスが多いと思った。気付いたら大変になっていた感じ。
二日目お昼休憩前の局面・53手目▲6四歩。
上図での持ち駒
▲羽生王位: なし
△行方八段: 歩2
△7七銀(90手目)で必至をかけてと思ったが
△8七金(94手目)と打つときに自玉が危ないことに気付いた。
ちょっと読み切れていなかった」
90手目△7七銀。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 飛、銀、桂、歩4
△行方八段: 金、香、歩
自陣の囲いを崩された行方八段は
手番を握った上図90手目に、羽生玉の頭上へ
ガツンと銀を叩きつけて勝負に出ます。。
最終盤戦のベタと貼り付けるような王手は
形作りである場合が多い訳ですが、本局の90手目
△7七銀は急所を捉えた一撃となり、ここまで形勢をリード
していた羽生王位の手が、止まりました。。
91手目▲7七桂。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 飛、銀2、桂、歩4
△行方八段: 金、香、歩
羽生王位は
24分の考慮でこの銀を桂馬で払いました。
実際には金で払っても、玉が逃げても(▲6九玉)
形勢は行方八段へと傾き、同桂がギリギリ均衡を保つ
最善の応手。。。
以下、△同歩成~▲同玉~とこれしかない進行から
迎えた94手目、行方八段は再び魂の篭った一手を放ちます。
94手目8七金。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 飛、銀2、桂、歩5
△行方八段: 桂、香、歩
いきなり金を投入し王手で畳み掛ける行方八段。
いかにも勝負師の本能を感じさせる熱い一手で自らを鼓舞し
気合を入れます。。
冷静に考えると、金はとどめの駒であり
この局面では△7四香~▲8六玉~△8五歩~▲同玉に
△5七角成と迫った方が、確実だったのかもしれませんが
それよりも
タイトル戦初勝利に燃えたぎる行方八段の魂は
肉食獣のような猛々しさをむき出しにして、より直線的に
羽生玉へと襲いかかりました。。
上図以下
▲7六玉~△7四香~▲7五歩~△8四桂~
下図99手目▲8五玉。。
99手目▲8五玉。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 飛、銀2、桂、歩4
△行方八段: 歩
行方八段のド迫力の寄せを前にして
羽生玉は何とか逃げのびるのが精一杯となり
あっという間に、追い詰めれます。。
行方八段は
次のちょうど100手目に△5七角成として銀を入手。
戦力を補強し、いよいよ最後の仕上げへ。。
しかし、手番を握った羽生王位が
この一瞬の間を突いて、反撃に転じます。。
103手目▲4三飛。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 銀2、桂、歩3
△行方八段: 銀、歩2
2筋で歩を叩き、行方玉を吊り上げてから
飛車をタダ捨てて王手!
例えば、すぐに△同金としてこの飛車をすぐに払ったとしても
行方八段へと大きく傾いた形勢が揺らぎそうにありませんが
相手が羽生王位であるだけに、いかにも何かありそうであり
何かが起こりそうな予感を、誰もが感じた一瞬。。
104手目△3三桂。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 銀2、桂、歩3
△行方八段: 銀、歩2
しかし、燃えに燃えていた行方八段は、ここでは冷静に
手堅く桂馬を跳躍させて飛車をブロックし、勝負あり。
【 投了図・108手目△4三玉 】
投了図での持ち駒
▲羽生王位: 銀2、桂2、歩2
△行方八段: 飛、銀、歩2
△3三桂から
▲同飛成~△同玉~▲3四歩~△4三玉までで
羽生王位、無念の投了。
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羽生王位
「駒得と垂れ歩のどちらが大きいかという感じだったが
もう少し受けに回る手を指さないといけなかったかもしれない。
58手目の局面△8六歩。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 歩
△行方八段: 歩2
(行方八段が羽生王位の桂取りに構わず
8筋の歩を取り込んだシーン。。
ここから
羽生王位は桂馬と香車を捕獲し駒得となりましたが
最後の最後で8筋に垂らされた行方八段の歩が
ものをいう展開となりました。)
攻め合いになって自信がなくなってしまったので。
▲4一角(67手目)から攻め合ったが△4五歩(74手目)と
突かれてみるとすでに局面が自信がなくなった。
74手目△4五歩。
上図での持ち駒
▲羽生王位: 桂、歩
△行方八段: 歩3
その前に何かやらないといけなかった。
△7七銀(90手目)を打たれてちょっと足りない」
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この結果
今シリーズの対戦成績は羽生王位の2勝1敗。
行方八段はタイトル戦初勝利を後手番でものにし
先手となる第4局を、落ち着いて迎えることが出来そう。。
王位戦が俄然、面白くなってきました。