明日は第59期王座戦5番勝負/第3局。。
前人未到、空前絶後の王座戦20連覇を目指す羽生善治王座に
渡辺明竜王が挑戦する第59期王座戦5番勝負。
ここまで2局を消化し、渡辺竜王が2連勝。
前期まで王座戦は6期連続のストレート防衛。
実に19連勝中であった羽生王座に、開幕戦で7年ぶりとなる
王座戦黒星をつけた渡辺竜王が、このまま一気に羽生王座を押し出し
王座奪取を果たすのか。。?!
注目の第3局の幕が、明日
山形県は天童市「松伯亭あづま荘」にて開かれようとしています。。
開幕からの2局。
先手番、後手番で完勝をおさめた渡辺竜王。
羽生王座からは勝ちたい、勝つんだという気迫がはっきりと伝わってくる
超ハイレベルな攻防戦を制して迎える、この第3局。
さすがの羽生王座を持ってしても
ここから流れを変えるのは、至難の業のように正直感じます。
くしくも明日は羽生王座、41回目の誕生日。
現在27歳の渡辺竜王とは、実に14歳の歳の差があります。
にもかかわらず
「世代交代」「新しい時代の到来か?!」という気分や機運が
全然、高まらないのには2つの理由があります。
まず一つ目の理由は
今シーズンは「羽生名人-森内九段」の名人戦からはじまり
羽生王座は4タイトル連続登場中。
来月、いよいよ開幕を迎える第24期竜王戦 の
挑戦者に名乗りをあげたのも、羽生世代である丸山忠久九段 。
つまりは
タイトル戦線がいまだに羽生世代中心で回っているという事実。
その中にあって、現在竜王戦7連覇中の渡辺明竜王は
久保利明二冠とともに奮闘中。。
その竜王戦では羽生王座、森内名人、佐藤九段の羽生世代BIG3を
それぞれ2度ずつ下して防衛を積み重ねている渡辺竜王。
何かの棋戦の予選で顔を合せて一発入れたというレベルではなく
「将棋界冬の本場所」最高賞金のかかる大舞台で、勝ち続けている。
世間的な知名度、将棋界への貢献や社会への還元など
これからのキャリアの中で培われていくものが、年齢的に羽生世代より
劣っているだけの話で、実力の世界ではもうすでに羽生世代に並んでいる
あるいはもう超えている。
その事実が二つ目の理由。
今の将棋界、とりわけ羽生世代に続く棋士としては
渡辺竜王ただ一人が突出しているのが現実。
渡辺竜王と±5歳の世代の棋士はすでに全員、置き去り。
ここ数年の竜王戦決勝トーナメント等を見ている限りでは、はっきり言って
その差は今後ますます拡大していきそうな雰囲気。
というわけで同世代のライバルさえ居ない、一人旅を続ける渡辺竜王に
「世代交代」というテーマは最初から当てはまらず。
あるのは来るべく「渡辺時代」への足固めのみ。
しかも特筆すべきは
例えばかつての「藤井システム」や、最近だと広瀬章人七段の
「四間飛車穴熊」のような、「特別な」戦法を用いてそのアドバンテージで
勝ち続けているわけではないということ。
生粋の居飛車党で
レパートリーは「矢倉」「角換わり」「横歩取り」。。といった昔からある
戦型のみ。
突飛な出だしを好まないどころか
後手番時には「お好きにどうぞ」の2手目▲8四歩とし
腕を開いて胸を出すのが常套。
にもかかわらず
「角換わり」がテーマだった2年前の第22期竜王戦 で
森内九段(当時)を寄せ付けず、一方的な内容で4連勝したように
その研究の深さ、正確さは桁違いの迫力と破壊力をつねに持ち合わせます。
年々、その精度は高まりをみせるとともに
渡辺竜王自身も研ぎ澄まされ、凄味をましている印象。
開幕3連敗から4連勝で羽生名人(当時)を下し
初代永世竜王となった3年前の竜王戦。
その特番では
開幕戦の舞台・パリ決戦前日に競馬を楽しみ
連敗中でもインタビューに応じ、まるで他人事のように返答してみせ
家にまで取材陣を招きいれ、子どもや奥さんまでテレビに登場させた
渡辺竜王。
ご自身のブログでは今なお、勝っても負けてもあっけらかんと
自分の将棋の結果を報告し続ける渡辺竜王。
団塊ジュニア世代で同級生も多く、活気ある日本で子供時代をすごした
羽生世代(私もですが)は知らず知らずのうちに他人を意識し、また
基準となる物差しとしてきたものですが、渡辺竜王にはその気配が全くなし。
インターネット世代でもある渡辺竜王は
情報は隠せない、隠す必要もないという価値観の中で育ち
むしろ共有し、さらには「共有したからといってどうなんだ」というぐらい
他人の目には価値観を見出さない。
それが
あの伝説の第21期竜王戦7番勝負の後、感じた渡辺竜王の印象でしたが
昨年、ついに順位戦A級昇格を果たしてからは、さらに凄味が増してきた。
本人に自覚が無くても
すでに近寄り難いオーラは相当の密度で発散されているはずだ。
そんなわけで
「渡辺竜王時代」の到来はもうすぐなのかも知れませんし
それに文句はありません。
が、
個人的には羽生王座のここからの巻き返しを信じています。
はやり、そうは言っても歴史は重く、羽生王座への思い入れもまた重く
揺らぐものではありません。
羽生王座の今期ここまでの成績は
36戦23勝13敗(.639)。
渡辺竜王の今期ここまでの成績は
18戦15勝3敗(.833)。