高須藩主松平義建の書
松平義建公の書
霜月八日初子の日なれば、ついさや今宵は物の音調へ
夜更くる見て遊ばむ、其道に賢き者共召し出してふ、四五人駆り言ひ遣りたるに、吾への尋が許よりいともいとも飽くき取り分けたる
仰璽なれど、此日頃病きありて今宵はもう上り得ず、
たいだいしう残りたるよし畏まり、きこえ子等のみ上せ、後より経て斯くなん言ひ遣しける
子の日にも もれて憂き身は病きに吹きあへぬ笛の音の音をのみぞなく
万手楽しき笛の音の、光る聖の御代の事をひきつつ
げに好ましくするわざなれば、さてぞ口惜しく残り
たりめれ、殊さらに差し遣りしもの、生憎に出来ぬがさうざうしくて
かへし歌まで斯くなん言ひ遣りつ
来ぬ人を まつばかりかは 笛竹の 千世も一夜に かぎる初子は
契りおく まつに小松を 引き連れて 問へし今日の 後の子の日を
義建