『式の前日』 穂積
「このマンガがすごい!2013」のオンナ編2位
小説よりも上と言っていい新珠の6篇の短編集
悲しさの中に漂う ほのかな温かさ。前向きな気持ちになれる本。
新人だという作者。この心の機微の描き方。ただものではありません。
個人的に好きなのは 「あずさ2号で再会」
アパートの部屋でくつろぐグータラ風の父親と 7歳の娘 あずさ。
ふたりの会話からは 娘は母親と暮らしており 父親が会いに来たことがわかる。
今日は 面会日なのか それとも 留守番を頼まれたのかという雰囲気。
おマセな口調のあずさに 母親に似てきたなぁと苦笑する父親の姿。
特に届かない物干し竿の洗濯物干しを手伝う父と娘の姿が秀逸。
洗濯物を干すとき そして父親が去ったあと
物干し竿のカットはふたりの気持ちを閉じ込めたような描写として使われる。
文字では表せない 漫画の威力。すごいですね。
最後に分かる父親と娘の関係。泣けます。そして温かい。
全作品が別れをテーマにしたに内容。
主人公たちの設定に気づくまで 小出しにヒントが出されていく
ある意味ミステリーに近いストーリー仕立て。
ただ ギリギリまで隠してるわけでなく だんだんおぼろげながら分かっていく。
その設定に気づくことにより 思い込みのストーリーがゆるやかな逆転を起し
主人公たちの気持ちが一気に伝わってくる仕掛け。
2度目に読むと また違う風景が見えてくる。うまいと思う。
そして何よりも素敵なのは 読んだあとに残る温かな気持ち。
この作者 今は長編を書いてるとか。機会があったら ぜひ読もうと思ってます。