「どんなアイドルになりたいの?」

『ぴかぴか』

 

 

 

 

アイドルになりたい人にとってルナビスナップはある種のねらい目なのかもしれない。あえてそんなことを書いてみる。

ここまでは確かに褒められたものではなかったが、今後を考えると、地下アイドル界全体の中ではそこまで悪い選択でもないのかもしれない。

 

 

佐藤はんなはハンナとなり、冗談みたいな苦闘をさせられている。

いや、戦うに至っていない、と言った方がよいか。大変は大変だが、なんだかわからんものに巻き込まれていて、まだ始まりのゴングすら聞けないような(ゴングは鳴ったはずなのだが)状況だ。

 

具体的には、昨年10月に5人組でデビューし、現在は3人組、2月にめでたく2人組となる。そして新メンバーオーディションを行い、その結果が出て新体制となる3月まで、冬眠ではないがライブ出演をお休みし、オンライン上での活動に絞っていくとのことだった。

ちなみにプロデューサーも3人目となる。2人目までは名前を出していたが、もう誰だかは言わなくなった。3人目がいるのかはわからない。

 

ハンナはルナビスナップというユニットにいる。

変幻型エキセントリックフューチャーベース、なるものを標榜しているらしい。

最新の公式コメントでは、『「Future(フューチャー)」をコンセプトに、SNS・オンラインでの活動など、幅広い活動を展開していくアイドルユニットを目指しています。』との由だった。

 

多少変則気味の電子音楽にのせて、ゆるゆると踊っている。

最近はほとんど、相棒・ナ子とのデュオ体制でライブをしている。ゆるゆるとだが、だいぶ慣れてきて、破綻はほぼない。

2人組というのは本来、ハイレベルな実力と息の合い方がないと見世物にすらならないものだが、案外ライブとして違和感のないものに仕上げている。まずは2人の努力とチームワークの賜物であろうが、元々、ゆるゆるとした仕上げだったのが功を奏しているのかもしれない。

 

始まってまだ4か月も経っていないが、ハンナは最初のある程度希望に満ちた顔からみるみる変わり、青息吐息だったり、目を白黒させていたり、どんよりとした顔色だったりしていた。

しかし、アストロの時もそうだったが、ハンナには妙な根性、負けず嫌いな面がある(バイトはそんなに長持ちしたことがないとのことなので、彼女の人生の中では今のところ、アイドルに対してのみ発揮されるものらしい)。上記の通り、なかなかな状況であるにも関わらず、年が明けてからは顔色が良くなった。肝が据わったようだ。

 

前に、ハンナについては「一人で独立独歩、というタイプではない。強いタイプではない」と書いたが、一人で何かをぐいぐいと進める力はなくても、その場に食らいつく力は十二分にあるようだ。

そして、現在のナ子との(ほぼ)2人体制においては、お姉さん的な存在になる。アストロでは年齢的にも末っ子(もっとも、最終期の5人体制ではハンナ含め3人が同い年だったわけだが)、2期ということもあり、引っ張ってもらう立場だったのだが。

私がやらなきゃ誰がやる、といった状況だ。まあ、引っ張るというよりは、こんな中だけれど、仲良く2人で頑張っていこうね、そう年下のナ子と申し合わせ、しっかりと耐えしのいでいる、そんなところだが。

 

単に僕が、アストロ時代に比べて1回のライブ後の特典会で彼女に通う機会が増えた、というだけな気がするが、前に比べて話せるようになった気がする。そして、その語り口は割合ドライ、悲観も冷静、客観的である。話し方でそう聞こえるだけかもしれない。

あんまりな嵐にさらされて、客観的にならざるを得ないのかもしれない。まあ、やたら嘆いても得るものはない。やり過ごす態度としては全く悪くない。

あの頃と違って、自分がしっかりしなければともすればユニットが崩壊してしまう。強くならざるを得ない。今はまだ落ち着いて振り返るどころでもないだろうが、あとで落ち着いた時に振り返れば、強くなった自分がいるのではないだろうか。

 

そしてある程度客をかっさらえるビジュアルは相変わらずだ。ちょうどいいスタイル、衣装も相まって、お人形さんのような容姿にますます磨きがかかった。日の目を見る日を待つ王女様としては全く万全だ。

 

「よう相棒、まだ生きてるか?」

(ラリー・フォルク(エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォー))

 

ハンナの相棒・ナ子。現役JK。2月をもって卒業するウユに憧れ、このユニットに参加した人。

 

「ハンナを一人にしちゃ、かわいそう」

 

ルーキーであるにもかかわらず、昨年の2人脱退の際にも、2月の自らの憧れ・ウユの卒業の際にも、残ることを選んだ人。

自称、自己肯定感低め。メンヘラと言われて全く怒ることがない。元々アイドルではないが、全くの素人でもなかったと聞く、その前歴あってかそうでないか、軽い話し口の人。そして気弱にアニメ声で笑っている。よしよしされて生きていきたいって言ってたね。よしよし。

 

実によく耐えているなあと思う。ツイッターの表垢と裏垢(公表している裏垢だ)を駆使し…主に裏垢を駆使し、毎日心の折れそうな状況と不眠を訴えている…主に不眠の方を訴えている。なんとかして寝てほしい。

なにをどう訴えていても、残り続ける根性があればそれでよい。なかなかめちゃくちゃだね、そうか、これがアイドルというものか、そう整理をつけてくれればさらによい。ここを超えればここまでめちゃくちゃなことはそうもないだろう。アイドルとしての一般的な、現場体験を通した基礎教育もそろそろ終わったころだろう。まあ、ここからだ。

 

踊りには多少覚えがあるらしい。声も可愛らしく特徴的だ。環境が落ち着きアイドルとして戦えるようになれば、もっといろいろと評価されることも出てこよう。

ハンナがかわいそうだから、などと言うが、こうなっても辞めないのは、それだけここで何かしたいこと、成し遂げたいことがあるのだろう。ウユに憧れて、というほか何を思ってここに来たのかは知らないが。

 

こんな2人だ。いたって穏やか。共に先輩として引っ張っていく姿は想像もできないが、新人が入れば2人にとっては待望の助っ人、きっと大事に扱ってくれるだろう…というより、特に先輩という感もないかもしれない。なんせ、新人が3月デビューであれば、せいぜい5か月年長なだけなのだ。

なおかつ、目まぐるしく変わる状況の中で、アイドルグループとして機能していたとは言い難い。実質、3月にデビュー、と言っても過言ではない。

全くの新グループ立ち上げとも違い、だいたいどんなグループかというのは現認できる。応募する側としてはやりやすいこともあるだろう。気に入れば応募すればよいし、気に入らなければ別の道を選べばよい。

 

穏やかな人であれば、穏やかな2人と和気あいあいでやればよいし、自分が引っ張っていくという野心溢れる人ならば、2人(と同期デビューの同僚)を引っ張っていけばよい。

こう、ポジティブに考えられないこともない。事務所のマネージメント力はとにかく、ひとまず事務所の力で有名対バンには簡単に出られる。あまりに客の少ない対バンのみ、などということもない。

自分たちの客がどれだけいるのはとにかく。まあそこも、実質3月デビューと思えばマイナスでもないだろう。

 

おそらくほぼ最初からの、ボタンの掛け違えが全く解消できずに2人になってしまうが、それで掛け違えはおさまるはずだ。最初の2人は風のように過ぎ去ってしまった、まあここではなかった、ということだろうし、大阪の学生を東京でフル稼働というのは、こんなご時世ならなおさら、ウユ本人どうこうというよりそもそも無理があったように思う。

残った2人にはそのような大きな障害もない、人に影響するほど自我が強いわけでもなく、簡単に辞めてしまうほど根性と思いがないわけでもない。

 

おおよそ提灯記事だ。そう思う。しかし嘘を言っているつもりもない。全くわからない事務所の新グループ立ち上げ、そんなものに比べれば、ほとんど新グループ立ち上げに近いものでありながら、応募者にとってはかなり見通しがしやすい、そういう点で悪くないと書いている。

なにより、ハンナにもう少し幸せになってほしいのだ。今のところアイドルでしか生きられない彼女に、そして穏やかな中でアイドルを出来たことがなかろう彼女に、もう少しだけ平和で幸福感に満ちた日々を過ごしてほしいのだ。

しっかり、ハンナなりの、ぴかぴかしたアイドルになってほしいのだ。

 

「君にとってアイドルってなんだろうね?」

『酸素』