今週から「おいしく食べて健康に! 50代からの大人の食育講座」として、食育のお話をさせていただきます。第一回「人は食べたものからできている」です。

それではさっそく皆さんに質問です「生まれてから今日まで何食食事をしましたか?」…即答できる方はいますか?一生懸命計算している人がいるかもしれませんが…過去の講演会でのべ6,000人くらいの人に同じ質問をしましたが、即答できた人はいませんでした。無理もありません。普段そんなこと考えたこともないですもんね。

実はほとんどの方が、誰から強制されたわけでも、法律で決められているのでもないのに、一日3食きちんと食事をされています。(2食の方もいますし、胃の切除をされた方は量を少なく5食くらいに分けて食べる方もいらっしゃいますが)また、一年365日のうち、1食も食事をとらない日は…ほとんどありません。(病気・事故・災害時は除いて)

ならば掛け算をしてみましょう。3食×365日=1,095食となります。とはいえ、赤ちゃんの時はおっぱいを飲んでいますし、忙しくてついつい2食になってしまった時もあるでしょう、ならば計算しやすいように1年間で約1,000食食べると考えたらどうでしょうか?改めて質問いたします。「あなたは、生まれてから今日まで一体何食食事をしましたか?」…さあどうですか。40代の方なら約4万食、50代の方なら約5万食と即答できるでしょ。

でも皆さんよーく考えてみてください。あなたがおぎゃあと生まれて、はいはいできた、たっちした、幼稚園・小学校入学、走った、泳いだ、100点取った、中学・高校部活動頑張った、旅行した、恋をした、勉強頑張った、進学した、職についた、悩んだ、結婚した、子供ができた…そうしたあなたの人生はあなたが食べてきたその何万食でできている。ということなのです。

どうですか?その食が乱れたら?偏ったら?多くても、少なくても身体に影響が出ますよね。人生が変わりますよね。「食べる」ことはすごく大切なことなのです。

でも皆さん、普段そんなに大切なことと意識していません。その割には、それなりに健康的に過ごしていませんか?大したものです。それは自分の体の中にきちんと健康的な食生活を送るシステムが備わっている証拠なのです。食事をしていないとおなかがすく。おなかがいっぱいになるともう食べられない。しょっぱい物を食べると喉が渇く。本来自分の体に必要な食事の量を自分の体は知っていて、自然に食べる量をコントロールしているのです。また、同じメニューばかりではあきませんか?どんなに好きだからって毎日ステーキではあきちゃいますよね。また無性に食べたくなるものってないですか?そう、本来人間の体には、必要な栄養素をバランスよく、必要な量を食べる能力が備わっているのです。特に「旬」の食べ物は美味しいですよね。それも体が欲している証拠です。

しかし、寝不足や、不規則な生活運動不足ストレスなどによって、この機能が損なわれてしまうと、食生活の乱れに気づかず、肥満・痩身・生活習慣病・がんなどを引き起こす要因となってしまいます。「人は食べたものからできている」そう「食べる」ことの大切さが少しお分かりいただけたのではないでしょうか?続きはまた来週「50代からの大人の食育」をお楽しみに。

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認知症予防のための方策第5弾「目・鼻・耳・口を鍛えよ」です。

目・鼻・耳・口は脳の出先機関です。本来危険をいち早く察知し、脳へ伝えるという大切な役割を担っています。その大切な脳の出先機関がまともに働けなくなったらどうでしょう?

元々目が情報の約8割を伝えているとも言われています。その目…ちゃんと働いていますか?老眼で、かすみ目で、飛蚊症で、白内障・緑内障でよく見えない…なんてほったらかしていませんか?メガネをかけてでも、医者へ行って治してでも億劫がらずに、ちゃんと見てください。

出先機関がまともに働いていなくては、脳はまともに働けません。いや実は脳が衰えているから出先機関がまともに働けないのかもしれません。

これは鼻も、耳も、口も同様です。絶えず刺激を与えることによって、脳は活性化します。逆に言えば、しっかり目・鼻・耳・口を鍛えないと、脳がどんどん衰えていきます。ではどうしたら良いのか?いくら鍛えるからといって危険な状況に身を置く必要はありません。

普段私たちは、美しい景色を見て、いい香りを嗅いで、心地よい音楽を聞いて、美味しいものを味わっています。そう!それで良いのです。できるだけ、美しい景色や、絵画、アートに触れてください。花、果物、アロマ、香水、料理のよい香りを嗅いでください。大好きな音楽や、自然界の音に耳を傾けてください。そして、旬の素材、心のこもった料理、スイーツをよく噛んで、味わって食べてください。映画や、ドラマ、お芝居を楽しんでください。

脳が喜ぶと、心も身体も元気になります。「楽しんで認知症予防」!こんな素晴らしいことはありません。ぜひ今日から実践してくださいね。

さて、22回にわたってご案内してきた「認知症」のお話は今日で終了となります。もっと詳しくお聞きになりたい方や、ご相談のある方は、ぜひメッセージをお願いいたします。

次回からのテーマは「食育」です。いよいよ「NPO食育インストラクター1級」として食育のお話をしたいと思っています。名付けて「50代からの大人の食育」。「食育」と聞くと「親子の食育体験」や「農場体験」「食品工場見学」など子様向けの話かなと思う方が多いと思いますが、働き盛りの50代の方々こそ「食育」をしっかり学ばないと、老後が楽しく過ごせませんよ!そんなお話をしたいと思います。よろしくお願いいたします。

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認知症予防のための方策第4弾「知的活動」です。

「認知症」とは「認知機能の衰え」によって起こる様々な症状で、「知的活動」の頻度が多い人ほど「認知機能」が衰えない傾向にあります。普段から、いろいろなことに興味を持ち、積極的にカルチャーセンターに通ったり、学習活動に取り組んでいる人は認知症になりにくいと言えます。また、認知症予備軍(軽度認知障害)の時に低下しやすい以下3つの機能を鍛えることによって、認知症を予防する事ができます。

1.「エピソード記憶」を鍛える。 

「エピソード記憶」とは「昨日の夕飯に○○を食べた」というように体験したことを記憶して思い出す機能です。食事日記や行動記録を1日を振り返ってつけたり、今日の買い物をレシートを見ずに書き出してみたり。思い出して書き留めることを続けると効果的です。「予定表に一行日記をつけてみる」などすぐにできることから始めてみましょう。

2.「注意分割機能を」鍛える。 

「注意分割機能」とは2つ以上のことを同時に行うときに適切に注意を配る機能です。料理をするとき、魚を焼きながら煮物を作り、同時に洗い物もする。歩きながら会話をする。ニュースを聞きながら手仕事をする。料理番組を見ながらメモをとる。など二つのことを同時にこなすことを心がけましょう。

3.「計画力(思考力)」を鍛える。 

「計画力(思考力)」とは「段取り力」とも言われ、行動の目標を立てて、それがうまくいくように段取りを考えて実行する能力を言います。自分で計画を立てて日帰り旅行に行く。新しいウォーキングコースを考え実行する。新しい料理のレシピを考え、段取りよく試作する。効率の良い買い物の順番を考える。など特にこの3つの機能が低下しないよう普段から心がけると認知症予防に役立ちます。

「面倒・億劫は敵!」と心得て、新しいことに興味を持って挑戦し続けてください。

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認知症予防のための方策第3弾「人との付き合い」です。

自分以外の人との関わりが極端に少ない人は認知症になりやすいことがわかっています。独り住まい。仕事していない。友人や親族を訪ねることがない。滅多に外出しない。友人の訪問がない。手紙、メールを書かない。電話をかけない。社交的でない。近所付き合いがない。など、他人との触れ合いが不十分な場合、認知症の発症率が8倍になるとの調査結果も出ています。

アルツハイマー型認知症の予防には、近所付き合い、親戚付き合い、友人や周囲の人と交流などを持つことがとっても有効です。会話する相手がいること、社会活動に参加して環境の変化を経験することなどにより、脳が活発に動くことがその理由のようです。

特に家や家族も省みず、バリバリ仕事していた無趣味の仕事中心の人が、定年になって職も立場も失い、妻に先立たれ、近所付き合いも友人も無く、趣味もないので、ただただ家で過ごすのみ…これは完全に「認知症」まっしぐらです。

役割・立場があることもとても重要です。コロナ禍以降、他人と接する機会が極端に減ってしまいましたが、飲み会や、対面の講演会なども復活しています。

是非この機会に新たなことにチャレンジし、「他人と会話する機会」を多く持つように心がけましょう。とにかく「おっくう・面倒臭いは認知症の素」と心得て、他人との付き合いをなるべく多くできるよう努力してください。

 

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認知症予防のための方策第2弾「運動習慣」です。

いくら素晴らしい食生活をしていても運動習慣がなければ、認知症予防はできません。健康長寿医療センターの調べによると、「ウォーキング」を1日1回やる人に比べ、ほとんどやらない人は、3.4倍「認知症」にかかりやすいというデータがあります。食生活改善のところで、「水分」「血流」の重要性を述べましたが、筋肉を動かすことで代謝が進み、血流も良くなります。脳の前頭葉や海馬といった「認知症」に深い関係を持つ部位の血流を上げて、脳にたっぷり新しい酸素と栄養分を補給してあげてください。そのために「運動習慣」は欠かせません。ここであえて「運動習慣」と呼んだのは、仮にゴルフ、水泳、テニスといった「スポーツ」はできなくても「ウォーキング」や「テレビ体操」といった「運動」を毎日習慣化すれば「認知症予防」に効果がありますよ。と言う意味なのです。

特に「ウォーキング」は足の筋肉(心臓のポンプの役割)を鍛え、気分転換にもなる「有酸素運動」で最も手軽に取り組める「運動」です。まずは1日7,000歩〜8,000歩を目標に週5日程度歩いてみてください。時間にして約30分程度、景色を眺めたり、買い物をしたり、気楽に楽しみながら歩くことが長続きのコツです。慣れてきて、ある程度習慣化してきたら、少し歩幅を広くしたり、歩くスピードを上げたりいろいろチャレンジしてみてください。

もちろん風の強い日、雨が激しい日、猛暑日に無理して歩くことはありません。特に近年、猛暑日が多いです。そんな時は日中歩くことは避け、早朝や、日が落ちてから等幾分でも涼しい時間帯を狙って「ウォーキング」を楽しんでください。

もう一つおすすめなのが「テレビ体操」です。NHKで毎日放送していますし、ビデオに録っておけば時間を選ばず手軽に「運動」ができます。天気の悪い日は「ウォーキング」の代わりにすることもできますよ。わずか10分で、身体の柔軟性が増し、血流が良くなります。毎日放送があるので、習慣化することも楽です。「運動」と聞いて「スポーツ」を連想する方がほとんどだと思いますが、「ウォーキング」と「テレビ体操」をぜひ習慣化してみてください。また、運動習慣を補う方策としてストレッチと入浴の習慣化も忘れてはいけません。体の柔軟性を増して、血流アップにつなげてください。

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いままで認知症の方への対処方法をお話ししてきましたが、今日からは認知症予防のための方策第1弾「食生活の改善」です。当たり前のことですが、私たちの身体は食べたものだけからできています。従って、食生活が乱れれば、心も身体も乱れます。足りなくても、多すぎても、偏っても良いことはありません。当然栄養バランスの取れた食事を心がけるべきですが、特に認知症予防のために以下4つの視点で食生活を改善してみてください。

1.生活習慣病予防 

認知症の最大の要因は老化ですが、脳血管疾患があっては防ぎようがありません。脳梗塞・脳出血・くも膜下出血を起こす要因となる、肥満・高血圧・動脈硬化・糖尿病といった生活習慣病にはならないよう心がける必要があります。

すでに生活習慣病予備軍の方は待ったなし!脂質・糖分・塩分を摂りすぎ、摂取カロリー多すぎとすでに指摘されている方!今日から食生活を変えてください。

素材別では、野菜・果物・魚・海藻類・発酵物を増やす。調理方法別では、揚げ物・炒め物・麺類の喫食頻度を少し減らす。等の工夫で改善できます。間違っても「糖質ダイエット」等極端なダイエットは逆効果です。

2.脳・筋肉・骨になるものを食べる。 

身体が若く保つためには脳・筋肉・骨になるものをしっかり食べることです。脳・筋肉・骨はたんぱく質・ミネラル(カルシウム・鉄・亜鉛等)でできています。従って、大豆製品・豆乳・乳製品・卵・鶏肉・豚肉・牛肉・魚をしっかり摂取する必要があります。特に老人の一人世帯では、朝はパンとコーヒー、昼はうどん、夜は芋の煮っ転がしとご飯など圧倒的にたんぱく質・ミネラル不足な食生活の方が多く見受けられます。これでは自ら認知症になろうとしているとしか思えません。

3.和食を食べる。 

生活習慣病を防ぎ、たんぱく質・ミネラルをしっかり摂り、栄養バランスよく食べるには「和食」がおすすめです。一汁三菜の献立(ご飯・味噌汁・お漬物+主菜(肉・魚・大豆製品を使ったおかず)1品+副菜(野菜・海藻主体のおかず)2品)で、味噌・しょうゆ・日本酒・みりん・酢といった日本ならではの発酵調味料で味付けした和食を食べれば、知らず知らずのうちに低カロリーで栄養バランスよく高たんぱく質・ミネラル豊富な食生活になります。

また、よく噛んで、唾液がたくさん出るのも和食の良さです。パスタ・パン・ピザ・ラーメンではついつい噛む回数が減り、唾液も少なくなります。そして、高カロリー・高脂質の割にたんぱく質・ミネラルが不足しがちです。「認知症」になりたくなかったら明日から「和食」です。

4.水分 

あえて、最後に一番大切なものをお伝えします。それは水分です。脳に栄養をきちんと送るには血流が必要です。水分が足りていないと、ドロドロ血になり、動脈硬化・高血圧にもつながります。歳をとると喉の渇きを感じにくくなります。500mlペットボトルで水を飲んだ量を可視化し、普段から、ちょびちょび水分をとるように心がけましょう。もちろん、味噌汁・コーヒー・紅茶等でも水分は取れますが、できれば常温の水(お湯)を1日1Lを目安に飲んでみてください。

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認知症の方の症状で特によくある症状についてその対処法をお伝えしています。

2.徘徊 

これも、まるで「認知症」の代名詞のように語られています。一般的には、夕方や夜になってちょっとたそがれた気分になると、自分の家に居ながらにして、「そろそろ家に帰らなくちゃ」と思うようで、突然家を出て歩いているうちに自分の居場所もわからなくなり、ましてや自分の家に戻る道などわかるまでもなく彷徨ってしまう事を言います。

元々、自分の家も直近の記憶が曖昧なため、かつて子供の頃に住んでいた家の記憶との違いから突然出て行こうとしてしまうようです。もし道に迷ったら誰かに聞けば良さそうと思いますが、認知症の人は「分からない自分」を隠そうとする意識の方が強いので道を聞いたり誰かに助けを求めることもせず、発見が遅れることが多々あります。

一般的には、外へ出て行こうとした時は、無理矢理止めたり否定したりせず、よく話を聞いて、寄り添って、一緒に少し歩いてあげると気がすんで、「そろそろ帰ろうか」というと素直に帰る。と言われています。

わが家の毋は足腰が弱かったので、まさか徘徊はないだろうとたかをくくっていましたが、ある晩こんなことがありました。

腰の曲がった母が夜11時過ぎに老人車につかまりながら突然玄関ドアを開けようとしました。異変に気が付いた妻が「こんな遅くにどうしたの」と言うと「外で変な音がした、誰かいる、泥棒じゃないか!見てくる」と言いました。それに対し、実の娘の妻はかなり感情的に「お母さんそんなわけないでしょ!何も音なんかしないわよ、何時だと思ってるの、もう遅いわよ」と反論しました。その瞬間まるでスイッチが入ったように大きな声で「本当に音がしたんだ!!」と母が怒鳴りだしました。

ここで私の出番です。かなり動揺しながらも「教科書通りに対応」と思い…優しい声でゆっくりと「お母さん、変な音がしたの?それは大変だ!一緒に見に行ってみよう」と言ってみました。するとその言葉にきょとんとしたかと思ったら急に普通の声にもどり、「ありがとう、優しいね」そして、手を取りながら老人車を押してたどたどしい足取りで一緒に外へ出ました。

出たのは良いけどどこまで行こうかと悩んでいると玄関の外に脚立が置いてあることを思い出しました。脚立のところまで歩いたところで「お母さんこれだ、この脚立が風でカタカタ言ってたんだ。良かった見に来て、原因がわかって良かったね」と優しく微笑みかけました。すると何事もなかったかのように母が「そうか、良かった」と言い、笑顔で家に戻りました。家に入ったら、さっきまでの興奮がうそのように落ち着いて、寝床まで連れていって寝かせてあげたら「おやすみ」と言って眠ってしまいました。

まるで、ドラマのような展開に、驚きましたが、相手の気持ちに寄り添うことの大切さを実感しました。こうした時でも役者になったつもりで、優しく、親身になって、共感するよう心がけてください。

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前回「認知症」の方とコミュニケーションを取る際に心がける10の方法についてご説明しましたが、今日は、認知症の方の症状で特によくある症状についてその対処法をお伝えいたします。もちろん誰もが同じような症状や反応があるわけでもなく、人それぞれ対応方法が異なるわけですが、そうとはいえ一定の共通性がありますので、参考までにお伝えいたします。

①物取られ妄想 

これは、おそらく誰もが経験する症状の一つと思われます。ただ、置き忘れたり、しまい忘れたり、しまった場所を忘れてしまっただけなのですが、「預金通帳を取られた」「財布を取られた」「泥棒が入った」と家族に訴えるだけに留まらず、警察に電話したり、友人に「嫁に取られた、娘に取られた」と電話して言いふらしたり、「通帳が見当たらないので、新たに作って欲しい」「今までの通帳を止めてくれ」と毎日のように銀行に出かけたり、電話をかけたりしてしまいます。

本人にとってみれば最大の関心事であるお金や通帳が毎日のようにどこかに行ってしまうのですから、それは大変なことで、騒ぎたくなるのも分からないではないですが、家族にとってはたまったものではありません。面と向かって「私の通帳を返して!」と言われたら、どんなに優しい人でも「私が盗る訳ないでしょ!」と反論してしまいますよね。また、一生懸命一緒に探してあげて、箪笥の中から出てきて「こんなところにあったよ」と伝えた瞬間「私はそんなところにしまうわけがない、やっぱりお前が隠したんだ!」と言われたら、誰でもショックですよね。結構精神的にやられます。

では、どうしたら良いのか。一度でもそのようなことがあったら、まず、金融機関へ行って相談しましょう。我が家も口座を持っていた3つの銀行に出かけ、状況をご説明しました。そうしたら、各行とも、家族が気付く前から何回か心当たりの言動があり、連絡したことを喜んでいただけました。

何かあった場合には連絡を密にすることで、それ以降のやりとりがスムーズにいくようになります。また、「今お見えになって、お金を下ろすと言っていますが、大丈夫でしょうか?」とご連絡をいただけるようにもなりました。また、警察に電話してしまった時は警察の方にも、状況を説明して、今後何かあった時にも協力してもらえるようよくお願いしておくことです。

友達との関係は少し悩ましいところですが、我が家の場合は本当に仲の良かった2人には、意を決してご説明しました。すると「やっぱりそうか、前から変だなと思っていたんだ」と家族以上に変化にはお気づきのようでした。その甲斐もあり、その後も優しくお付き合いいただけました。とにかく一番混乱しているのは本人なのだ!と割り切って、どんなひどいことを言われても、真に受けずに、役者になったつもりで、優しく、親身になって、共感するよう心がけてください。

 

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前回「認知症」の人にどう対応するか(2)として、実際に「介助」する際の対応について対応の5原則。①否定しない ②しからない ③無視しない ④笑わない ⑤ばかにしない の話をしましたが、今日は「認知症」の人とコミュニケーションを取る際に心がける10の方法についてご説明します。

1、向かい合い、顔の表情や口元が見えるようにしましょう。

コミュニケーションを取る際は笑顔でアイコンタクトを取り、安心していただけることを心がけましょう。コロナ禍以降で、マスクをする機会も多くなかなかこのコミュニケーションが取りづらい状況にあります。その時は目の優しさが問われます。

2、「これ」「それ」「そこ」などの曖昧な表現をさけ、なるべく具体的に説明するように心がけましょう。

ただでさえ、理解力が落ちているのに「これ」「それ」「そこ」では何のことか理解できないと全く伝わりません。

3、理解に時間がかかるようであれば、別の言葉、別の表現を使ってでも、理解できるように努力しましょう。

慌てずに、ゆっくりとお話しましょう。それでも理解ができていない様子であれば、別の言葉、別の表現を使ってでも、理解できるように努力しましょう。

4、話をする際は相手のペースに合わせて話し、内容が理解できているか確認しましょう。

一方的に話して、「わかった?」と聞いて、も「はい」と答えて全く理解していないこともよくあることです。特に早口は禁物です。

5、大切なことは繰り返し伝えましょう。

何度、繰り返しても、その都度初めて聞いたかのような反応をすることもあります。懲りずに笑顔で何度でもお伝えしましょう。

6、ジェスチャーを交えたり、カード、絵、写真など視覚的な材料を活用しましょう。

重要なことは書いて見えるところに貼っておく工夫も必要です。何度も何度も説明するのも辛いもの。でも書いて貼ってあればその都度指を刺して説明mしやすいです。

7、考えている様子であれば、焦らずに待つ・見守る姿勢を取りましょう。

けっして急いではいけません。急いで良いことはひとつもありません。見守る心のよ種も必要です。

8、低く落ち着いた声で話しかけましょう。

特に高い声は聞き取りづらいので注意が必要です。ただ、あまりにも丁寧に話しすぎたりすると「馬鹿にしている!」と感じてしまうこともありますのでご注意を。

9、なるべく名前で呼び、自分の名前も何度も伝えて、覚えてもらうようにしましょう。

認知症の方も人間です。コミュニケーションの基本は1対1。名前で呼び合うことから始まります。

10、表情や目線など、言語以外のメッセージを見逃さないようにしましょう。

トイレに行きたいのに「お風呂に行きたい」なんて言ってしまう事があります。「お風呂の時間はまだよ!」と言っても解決になりません。モジモジしている、しばらくトイレに行っていない等状況を把握して判断してください。

以上10の方法を説明しましたが、とにかく、優しく、ゆっくりと、表情豊かに、コミュニケーションを取るように心がけてください。

 

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前回「認知症」の人にどう対応するか(1)として、介護認定のためのステップ及び薬物療法に頼らない各種対応方法についてご説明いたしました。今回は対応(2)として、実際に「介助」する際の対応方法についてご説明したいと思います。

対応の5原則。

認知症の人への介助については以下5つの対応原則があります。「当事者はそれどころではない」「無理!できない!」というのもごもっともですが、まずはそれを踏まえた対応を心がけることが重要になります。

①否定しない 

突然変なことを言われたら、「そんなことはあるわけない」「何言ってるの!」と即座に否定してしまいがちですが、そこはぐっと抑えて「私には分からない」「気がつかなかった」といった対応で、あえて否定せず、相手に反発心を持たせないことが大切です。

②しからない 

つい「何やってるの!」「そんな訳ないでしょ!」と感情的になってしまいがちですが、相手は、何をしかられているのか理解していません。そのため「怒りっぽい人」「嫌な人」の印象だけが残ってしまいます。カチン!ときても、ぐっと我慢です。

③無視しない 

認知症の人は同じ話を何度もしたりします。「この間も聞いたよ!」「100万回聞いたよ」と面倒くさくなり、相手にせずつい無視したりしてしまいがちです。たとえ何度同じことを言われても、訳の分からないことを言われても根気よく対応しましょう。いいかげんな態度では「意地悪な人」と嫌われてしまいます。

④笑わない 

介助する上で微笑みは必要ですが、決して「嘲笑」と取られないようにしましょう。普通の感覚でおかしな言動でも不用意に笑うと「嘲笑」と取られることがあります。

⑤ばかにしない 

周囲の情報に対する反応が鈍くなっていても、ばかにされることにはとても敏感です。ばかにしているつもりではなくても、ちょっとした一言でとても敏感に反応することがあります。尊厳を傷つけることなく対応しましょう。

認知症の方の言動はなかなか理解のできないことや、問題のあることも多々あります。しかし、その行動には必ず理由が存在しています。その際には決して高圧的な態度をとることなく、まずは共感する姿勢を見せて安心感を与え、寄り添う気持ちを持ってその理由を理解し冷静な対応を心がけましょう。

この5つの対応原則も頭では理解していても、いざ認知症の親から不合理な事を言われたら、大抵の人はカチンときて文句の一つも言ってしまいます。しかし、それがかえってうまくいかなくことが多々あります。とにかくぐっと堪えて、一呼吸置いて、冷静な対応を心がけてください。

そのコツは「俳優」に徹することです。「認知症介助士」の役を演じている一流俳優になったつもりで頑張ってみましょう。また、このスキルは「認知症患者」に止まらず、普段の仕事や、生活の上での他人とのやり取りにもとっても効果的です。むしろ他人と接する際の基本の心構えに通じます。そのつもりで頑張ってみましょう。

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