「大人の食育講座」最終回第10回のテーマは「寒い冬に血流改善!ゴースト血管予防」のお話です。

地球温暖化、暖冬と言われますが、毎日寒いですよね。そんな時にピッタリな、血流改善のお話です。

人間の体は隅々まで毛細血管が張りめぐらされており(人間の血管のうち95%〜99%が毛細血管とも言われています)、新鮮な血液を身体中に送り届ける働きをしています。しかし何らかの要因で慢性的に血流が悪くなると、血管構造が破壊され末端まで血液が届かなくなってしまいます。この状態を「ゴースト血管」と呼びます。「ゴースト血管」が増えてくると、以下のような症状が現れます。手・足先の冷え(末端冷え性)、耳鳴り・めまい、慢性頭痛・腰痛・肩こり、胃の不調・便秘、肌の乾燥、顔のくすみなどです。いずれも酸素と栄養をたっぷり含んだ新鮮な血液が体の隅々まで行き渡らないために起こる症状です。さらにこれらの症状を放っておくと恐ろしい病気を引き起こす要因にもなります。骨粗しょう症、脳梗塞・脳卒中・認知症、腸の慢性的吸収障害などは、骨、脳、腸の周りの毛細血管が「ゴースト血管」になることで発症する確率が大幅に上がるといわれています。

血流が悪くなる要因は様々あります。そもそも水分が不足すると血液がドロドロになります。また、体を動かす機会が少ないと筋肉が落ち、血液を流す力が下がります。ストレッチや柔軟運動をせずに体が硬くなるのも血流を悪くする要因です。睡眠不足ストレス自律神経の働きを狂わせ、血管が収縮して血流を悪くしてしまいます。そして、食生活の乱れ(特に糖質・脂質・塩分の摂り過ぎ)は、動脈硬化血栓を引き起こす要因となります。ただでさえ寒い季節は体が縮こまり、血流が悪くなりがちです。でもご安心ください。ちょっとした食生活の見直しで血流を改善し、「ゴースト血管」を予防できるのです。

①  血流・血管に良い食材を食べて「血流改善」

糖質・脂質・塩分の摂り過ぎは動脈硬化や血栓を引き起こす要因となるので普段から注意をすることが必要ですが、むしろこれからは血管・血流に良い食材を積極的に摂るように心がけてください。血管を守る力のあるDHA・EPAを多く含むアジ・サバ・イワシなどの青魚、動脈硬化予防に効果的なトマト・ニンジン・カボチャ・ブロッコリーなどの緑黄色野菜、血栓を溶かす働きのある納豆、血液をサラサラにするタマネギ、コレステロール排出効果のあるワカメ・ヒジキなどの海藻、これらの素材を意識的にとり入れていくことが大切です。また栄養を逃さないために、茹でるよりレンジ加熱にしてみたり、これらの素材をそのまま味噌汁の具材にして飲んだりすると簡単においしく「血流改善」をすることができます。

②  暖かい食べ物飲み物で身体の中から「血流改善」

「血流改善」には身体を冷やさない事も大切です。もちろん服装や暖房器具で外から温める事もできますが、温かいものを食べたり飲んだりすれば水分をとりながら体の中から全身を温めることができ、「血流改善」につながります。寒い日の朝ごはんには栄養たっぷり熱々の「具沢山味噌汁」がおすすめです。またショウガ・ネギ・ゴボウ・レンコン・唐辛子など身体を温める食材を使った「汁物」「鍋」「煮物」もおすすめです。冬場が旬の食材の多くは、身体を冷やさない、または温めてくれるものも多いため、迷ったら旬の食材を取り入れることも「血流改善」に効果的です。

いかがでしたでしょうか?読者の皆様も、「ゴースト血管」の予防が期待できる食材をたくさん食べて、体をしっかり温め、寒い冬を乗り切ってください。もちろん十分な睡眠、ストレス解消、体の柔軟性・運動機能を高めることも血流改善には大切ですので、お忘れなく。50代からの「大人の食育講座」いかがでしたでしょうか?

度々「和食」のお話が出てきましたので2月からは、自書「子どもたちに伝えたい「和食」素晴らしい日本の食文化と調味料の科学」のご紹介をさせていただきます。

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「大人の食育講座」第9回のテーマは「おいしく食べてSDGs」のお話です。

 

明けましておめでとうございます。昨年末は「和食のユネスコ無形文化遺産登録」のお話をさせていただきましたが、今日は、おいしく和食を食べて健康になりながらSDGsの実践にもなる、そんなお得なお話をさせていただきます。

SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)とは地球規模で取り組むべき「未来を変える17の目標」のことです。「誰一人取り残されない」をスローガンに以下のような目標が掲げられています。

2030年までに貧困・飢餓を無くし、全ての人に健康と福祉、そして質の高い教育ジェンダー平等を実現し、安全な水とトイレへのアクセスを確実にする。そのためにクリーンなエネルギーへのアクセス、働きがいのある職場課題解決のための革新的技術を開発し、不平等を無くし住み続けられる街を作り責任のある商品提供をする。そして地球温暖化防止気候変動への対策海洋資源・陸上資源の確保環境保持生物多様性の維持、そして全てを支える世界の平和と協力的パートナーシップを実現する。

これだけ聞くとあまりにもテーマが多岐に渡り、自分には何ができるかわからないと思う方も多いかもしれません。ですが、実は日々の食生活をちょっと工夫するだけで立派にSDGsに貢献できるのです。

①  旬の食材を食べてSDGs

旬の食材はその時期に食べることにより、安価で、栄養価も高くおいしく食べることができます。そして、ハウス栽培や冷蔵庫保管の必要性も少ないため、積極的に取り入れることでエネルギーロスが軽減され、地球温暖化への負荷も少なくなります。旬の味覚・旬の素材をいっぱい食べて元気いきいきSDGsを実践してください。

②   地産地消でSDGs

地産地消とはその土地で採れたものをその土地で消費することです。海外など遠く離れた生産地から届く食材に比べて運搬や保管時のエネルギーロス・二酸化炭素排出量が少ないので、SDGsの実践になります。都会の方もなるべく、近隣県の野菜などを意識して購入してみましょう。

③   和食を食べてSDGs

「和食」によく使われている「ごはん」・「魚」・「野菜」類は、いずれも食料自給率の高い食材です。パン・ピザ・パスタ・ラーメンの原料である小麦は残念ながらそのほとんどを海外に依存しています。したがって、日本に運んでくるまでに、大量の化石燃料を消費し、温室効果ガスが排出されてしまいます。「和食」の機会を増やすだけで、SDGsの実践、地球環境の維持に貢献することができるのです。

④   残さず食べてSDGs

世界の10人に1人が慢性的栄養不良状態で飢餓に喘いでいます。その一方で世界の食糧廃棄量は13億t(全生産量の1/3)にものぼっています。日本においても毎年約600万tもの食糧廃棄があり、事業系の廃棄量と家庭内廃棄量がほぼ半々です。食品のまとめ買いや、冷蔵庫への食材の詰め込み過ぎ、料理の作りすぎは要注意です。せっかくの食材や、料理を捨ててしまっては勿体無い!おいしく残さず食べてSDGsに貢献してください。

⑤   フードバンクへ寄付してSDGs

とはいえ食品を買いすぎたり、貰い物が多くて余ってしまった時は、なるべく早くフードバンクに寄付しましょう。フードバンク活動とは包装の印字ミスや賞味期限が近いなど、食品の品質には問題ないが、通常の販売が困難な食品・食材をNPO等が引き取り、福祉施設・子ども食堂や直接家庭へ無償提供するボランティア活動です。賞味期限のあるうちにフードバンクへ寄付することがSDGsに繋がります。まずはお近くのフードバンクを調べてみてください。

いかがでしたでしょうか?読者の皆様も、おいしく食べて健康に!そして身近なところからSDGsを実践してください。では来週も大人の食育講座をお楽しみに。

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「大人の食育講座」第8回のテーマは「ユネスコ無形文化遺産に登録された和食」のお話です。

先月11月24日は「いい日本食の日=和食の日」でした。皆さんは2013年12月に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことをご存知だったでしょうか?登録が決まった時はテレビで「世界中の人から和食が素晴らしい文化として認められました!」と登録決定を喜ぶ姿が何回も映し出されたのを思い出します。

「和食;日本人の伝統的な食文化」が登録されるにあたり、ユネスコに評価されたポイントは以下4つになります。

①   多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重

日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、各地で地域に根差した多様な食材が用いられています。また、素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達しています。

②   健康的な食生活を支える栄養バランス

一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿、肥満防止に役立っています。

③   自然の美しさや季節の移ろいの表現

食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴のひとつです。季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しみます。

④   正月などの年中行事との密接な関係

日本人の食文化は、民族の年中行事と密接に関わって育まれてきました。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきました。

「和食;日本人の伝統的な食文化」のユネスコ無形文化遺産への登録決定は、日本にとどまらず海外でも大きく取り上げられました。その際外国の方々は和食の文化を京都の街並みや、江戸の料亭のしつらい、給仕する和服の女性や和食器、掛け軸、床の間などの「和」のイメージとあわせて受け止めました。これにより、和食は少し格式高い、非日常的な魅力を感じさせながら、世界の日本食ブーム、日本への旅行ブームの火付け役となったのです。

しかしながらユネスコ無形文化遺産への登録は手放しで喜んでばかりはいられません。なぜなら登録要件の一つに「消滅の危険性」と書かれているからなのです。つまり和食は「このままほうっておくと、この素晴らしい文化がなくなってしまう恐れがある」と認められた事になります。また、登録されたからには「国をあげて将来にその素晴らしい文化を継承していかなくてはいけない」と規定されており、もし、国をあげて継承できていないと判断された場合には登録が抹消されてしまうのです。

では、「和食;日本人の伝統的な食文化」を継承していくにはどうしたら良いのでしょうか?料亭の懐石料理なんて作れないし、自分にできることなどあるのだろうかと考える方が多いのではないでしょうか。でも安心してください。私たちが伝えていくべき「和食;日本人の伝統的な食文化」とは、今までお話ししてきた、日本人の家庭の中にある身近な「和食」で良いのです。すなわち「ごはんと漬物と味噌汁」であったり、「旬の素材をおいしく食べること」であったり、「一汁三菜に込められた健康長寿のシステム」や日本ならではの調味料「しょうゆ・味噌・日本酒・みりん・酢(米酢)」の文化や歴史「日本の国菌=麹菌」「いただきます・ごちそうさまに込められた感謝の気持ち」といった小さな一つ一つの実践が、私たちの「和食」をつないでゆくのです。

読者の皆様も、おいしい「和食」を食べて、健康的な食生活をお楽しみください。そして、将来を担う子どもたちにもそのすばらしい食文化を伝えてください。では来年も大人の食育講座をお楽しみに。

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「大人の食育講座」第7回のテーマは「しょうゆ・味噌・日本酒・みりん・酢(米酢)」のお話です。

前回は「ごはんと味噌汁」及び「米と大豆」のお話をしてさせていただきましたが、今日は和食作りに欠かせない「米と大豆」から作られた日本ならではの発酵調味料「しょうゆ・味噌・日本酒・みりん・酢(米酢)」のお話をさせていただきます。

前回「米作りと大豆栽培は切っても切れない関係性だった」とお伝えいたしました。日本人は収穫した米と大豆をただ食べるだけでなく、おいしい調味料に加工し、料理の味付けに使用してきたのです。大豆からつくる調味料といえば「しょうゆ・味噌」、米からつくる調味料といえば「日本酒・みりん・酢(米酢)」があります。これらの調味料は、微生物の働きを利用した「発酵調味料」で、その発酵には麹菌・乳酸菌・酵母菌・酢酸菌などが働いています。中でも「しょうゆ・味噌・日本酒・みりん・酢(米酢)」全てに欠かせない微生物が「麹菌」です。

この「麹菌」は日本でしか生きられなかった固有の菌で、2006年に「日本の国菌」に認定されています。皆さんは、「麹菌」が「日本の国菌」だとご存知だったでしょうか?「しょうゆ・味噌・日本酒・みりん・酢(米酢)」が日本ならではの発酵調味料と言われる理由は、日本固有の菌「麹菌」の働きを利用した、日本でしか作ることのできなかった調味料だからなのです。ちなみに「麹菌」は国菌とはいうものの、宮崎県・熊本県の一部地域及び沖縄県・鹿児島県では生きることができませんでした。これらの地域では、「麹菌の一種」である「黒麹菌」「紅麹菌」を使用して酒造りを行っていました。しかし、「黒麹菌」「紅麹菌」を使用したお酒はかなり酸味が強く、そのまま飲むには適さないため、蒸留して「泡盛」や「焼酎」に加工して飲んでいたのです。(鹿児島県は、米の栽培にも適していなかったため米ではなく芋から酒を作り、芋焼酎を作っていました。)現在では屋内タンクなどの密封系の環境の下で、温度や湿度をコントロールする技術が進み、麹菌の生きられる環境を再現できるようになったので、日本全国そして海外でも日本酒やしょうゆの生産が可能になりました。

日本人はこれらの調味料を江戸時代から現在に至るまで約400年間ずっと料理の味付けの基本としてきたのです。明治時代になって初めて牛肉や豚肉を食べるようになっても、「牛鍋」は味噌を使って、「すき焼き」や「肉じゃが」などはしょうゆとみりんを使って、おいしい「和食」に仕上げてきました。戦後色々な国の料理が日本に入ってきても、いつしかこれらの調味料を使用して「和風ステーキ」、「和風ハンバーグ」、「和風パスタ」、のようにおいしい「和風料理」に変化させることができました。また、洋風の調味料との相性も良く「バターとしょうゆ」、「マヨネーズと味噌」、「生クリームとしょうゆ」「和風ドレッシング」など、これら調味料を使えばどんな料理も「和風」のテイストに変化させることができます。

最近では「和食」というと、「作るのが難しい」「お寿司屋さんやお蕎麦屋さんなどで食べるもの」「懐石料理や、旅館や料亭のメニュー」といったイメージがありますが、難しく考えることはありません。どんな素材でもご家庭で料理をする際に日本ならではの調味料「しょうゆ・味噌・日本酒・みりん・酢(米酢)」で味付けすればみんな「和食」と言えますから。読者の皆様も、「しょうゆ・味噌・日本酒・みりん・酢(米酢)」で味付けたおいしい「和食」を食べて、健康的な食生活をお楽しみください。では次週も大人の食育講座をお楽しみに。

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「おいしく食べて健康に! 大人の食育講座」第6回のテーマはごはんと味噌汁」です。

先週「一汁三菜」のお話をさせていただきましたが、やっぱり「和食」の献立の基本といえば「ごはんと味噌汁」ですよね。今回は「ごはんと味噌汁」の関係性について詳しく説明させていただきます。

日本人の主食といえば「お米(ごはん)」です。そして戦前は米作り(稲作)は「完全有機栽培」で行われていました。化学肥料に頼ることなく、田んぼの近くには「肥溜め」があり糞尿から作った堆肥を肥料として使用するのが当たり前でした。殺虫剤や、農薬等も一切使用していませんでしたので、田んぼにはメダカ・どじょう・タニシなどがいて、水中の害虫や、雑草を食べてくれていました。一方、田んぼの畦道には大豆が植えられており、害虫たちを大豆に誘き寄せ、稲を守っていました。また、大豆はその根に「根粒菌」を取り込み栄養分を作り出す器官(根粒)があり、収穫後の根は田んぼに入れられ、来年の稲作の栄養として活用されていました。このように、稲作が「完全有機栽培」の時代には、米作りと大豆栽培は切っても切れない関係性だったのです。そして収穫した大豆は常温保存可能な貴重なタンパク源として豆腐・納豆に加工されたり、味噌・しょうゆといった発酵調味料として使用したり。食卓上では「ごはんと味噌汁」として切っても切れない関係性が成り立っていたのです。

ところが、戦後になり道路・鉄道・ビルなどの建設需要が増大し、出稼ぎ労働者の増加に伴う農業人口の減少が起こりました。その結果農業の機械化、化学肥料・農薬の使用による省人化が加速したのです。耕運機、トラクターなどの稲作用機械にとっては畦道の大豆が邪魔になり、今では、畦道に大豆が植えられることはほとんどなくなってしまいました。一方「お米(ごはん)」の方も、戦前はほぼ三食ごはんだったのに、戦後パン・ピザ・パスタ・ラーメンなどを食べる機会が激増し、結果として「お米(ごはん)」を食べる機会が減少しました。また、メタボを気にして、「おかずは食べるけどごはんは食べない!」とか、「夜晩酌をするのでごはんは食べない!」とか、ごはんの需要がどんどん落ち込んでしまいました。

ごはんを食べる機会の減少に比例して味噌汁を飲む機会も大きく減少してしまいました。さらに高血圧で塩分の取りすぎを気にする人達は、味噌汁を敬遠する傾向にあります。厚生労働省が推奨している1日の食塩摂取量は男性7.5g未満、女性6.5g未満とされています(2020年)。味噌汁一杯の食塩摂取量は1.2g~1.5gなので確かにそれなりのインパクトはあります。しかし、例えばカップヌードル1食(78g)あたりの食塩相当量4.9gと比べたらどうでしょうか?さらに味噌に含まれる大豆ペプチドには血管を柔らかくして血圧を下げる力や、大豆イソフラボンのように食塩の排泄を促す力があることがわかってきています。血圧を気にするなら、むしろ毎日一杯味噌汁を飲むことを前提に考えることをお勧めいたします。

このように知らず知らずの間に激減してしまった「ごはんと味噌汁」ですが、やっぱり「和食」の献立の基本です。ごはんと味噌汁を一緒に摂ることで、体を温めるだけでなく、ミネラルの補給もでき、味噌は発酵食品であるため消化吸収もしやすく食後の血糖値の上昇を穏やかにするとも言われています。炊き立ての新米は美味しいですよね。味噌汁を飲むとほっとしますよね。ぜひ「ごはんと味噌汁」を食べる機会を増やしてください。結果として、食料自給率の向上、SDGsの実践にもなります。そして、何よりも「噛む力」「飲み込む力」の向上が期待できます。

読者の皆様も、「ごはんと味噌汁」を美味しく食べて、健康的な食生活をお楽しみください。

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「おいしく食べて健康に! 50代からの大人の食育講座」第5回のテーマは「一汁三菜」です。

皆様は「一汁三菜」という言葉をご存知でしょうか?「よく聞く言葉だけど正確にはよくわからない」という方が多いのではないでしょうか。「一汁三菜」とは和食の献立を考える時の基本となる「仕組み」のことで、「おいしく食べて健康になれる秘密」が隠されているのです。ということで今回は「一汁三菜」について詳しく説明させていただきます。

「一汁三菜」とは「ごはん・漬物」の基本セットに、味噌汁(一汁)とおかず三つ(三菜)を組み合わせることを言います。三菜の内訳は、魚・肉・大豆製品などたんぱく質主体の献立(主菜)が一つ、そして野菜・きのこ・海草類主体の献立(副菜)が二つとなります。さらにこの三菜を作る際には、なるべく多くの異なる素材を使い、焼く・煮る・蒸す・和えるなど様々な調理法を用いて、日本ならではの発酵調味料(しょうゆ・味噌・日本酒・みりん・酢)やだしを組み合わせて味付けに変化をつけることが基本になります。その結果、「栄養バランスのよい健康的な献立」が作れるのはもちろんのこと、素材の風味や食感、甘い・しょっぱい・酸っぱいなどの味わい、熱い・冷たいといった温度のバラエティを楽しみながらおいしく食べられるという素晴らしい仕組みなのです。

さて、ここで「一汁三菜」とは全く異なるメニュー、例えばサンドイッチ・ピザ・パスタ・ラーメンなどを思い浮かべてみてください。これらのメニューは素材の種類がそれほど多くありません。そしてその素材を全部まとめて一緒に食べる傾向にあります。また、味わいも最初から最後までほとんど変化がありません。「ゆっくり良く噛んで味わって食べる」というよりは、「とにかく食べて満足」といった感じでしょうか。それに比べて「一汁三菜」の献立は、味わいや、硬さ、食感、温度の異なるおかずを少しずつ食べてはご飯・漬物・味噌汁で舌を休め、またおかずを食べるといったように、自然と「ゆっくり良く噛んで味わって食べる習慣」ができるようになっているのです。当然、唾液もたっぷり出ます。つまり「一汁三菜」の仕組みは、「噛む力」「飲み込む力」を向上させ、いつまでもおいしく食べられる体づくりにも役立つのです。

さあ、読者の皆様も「一汁三菜」の仕組みを使って、健康的で楽しくおいしい献立を考えてみてください。とはいえ三食毎回「一汁三菜」にしなくてはいけない!というわけではありません。忙しい時は「一汁二菜」でも「一汁一菜」でも構いません。おかずの数よりも「ご飯・漬物」に「味噌汁・主菜・副菜」を組み合わせるという仕組み・考え方が重要となります。最近は、「具沢山味噌汁」と言って、いろいろな野菜・豆腐・魚類・肉類を入れた味噌汁が流行っています。具沢山味噌汁さえあれば、主菜や副菜が一品足りなくても栄養バランス的には事足ります。また、主菜は毎回「和食」にこだわる必要はなく、ハンバーグ・麻婆豆腐・焼き肉といった洋食・中華・韓国風のメニューでも結構です。また副菜にサラダを入れても構いません。とにかく「一汁三菜」の仕組みと考え方を上手に利用して、献立づくりをしてみてください。そしてよく噛んで、味わって、唾液をしっかり出して食べることで、「噛む力」「飲み込む力」を向上させましょう

読者の皆様も、「一汁三菜」の献立で、美味しく食べて健康になれる食生活をお楽しみください。

*写真は厚生労働省ホームページより

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「おいしく食べて健康に! 50代からの大人の食育講座」第4回のテーマは「ごはん食のすすめ」

前回「噛む力・飲み込む力(摂食・嚥下力)」低下予防のために①「噛む力・飲みこむ力低下を意識する。」②「ゆっくり味わって、良く噛んで食べる」③「口ストレッチ」の三つのステップをご説明させていただきました。今回は、普段の食事の仕方をほんの少し見直すだけで、噛む力・飲み込む力の低下を予防できるもう一つの方法をお教えいたします。

それは、「パン食・麺食等をごはん食に変えるだけ。」です。「えっ!たったそれだけで?」と驚きの方もたくさんいらっしゃると思います。それでは、詳しくご説明させていただきます。

昭和の初め頃までは日本人は1日3食「ごはん食」を食べていました。しかもゆっくりよく噛んで食べることを親からしっかり教え込まれていました。しかし、戦後学校給食が始まると、給食の主食がパンになりました。(私が小学生の頃は給食の主食は週5日間すべてパンでした。最近は週5日のうち3日がごはん、パンと麺が1日ずつと改善されています)それを契機に、ご家庭でもパン食の機会が増え、それに加えてピザ、パスタ、ラーメンを食べる機会が激増しました。

また、学校給食の時間が短いために、急いで食べることを子供の頃から習慣づけられ、さらには忙しい生活の中で、食事の時にゆっくりよく噛んで食べる習慣がどんどん薄れてしまいました

読者の皆様の食生活はいかがでしょうか?食事の時のごはん食率はどのくらいですか?普段ゆっくり良く噛んで食事をしていますか?ここでは、パン食、麺食が悪いと言っているのではありません。しかしながら、パン食はごはん食に比べて、噛む力や噛む回数が少なくて済みます。これがパスタやラーメンといった麺類になると、より噛まずにすすったり、飲み込むようになってしまいます。また、急いで食べることで、必然的に噛む回数が少なくなり、唾液の量も少なくなります。こうして、知らず知らずの間に日本人の「噛む力・飲みこむ力」が衰えてしまったのです。

「パン類や麺類をよく食べる」と言うと若者の食生活を想像する方も多いと思いますが、ごはん食の機会が減ってしまったのは決して若者だけの問題ではありません。2016年に日本政策金融公庫が実施した消費者生活動向調査によると、朝食のパン食率は20代の若者よりも60代70代の高齢者の方が高く、ごはん食率を上回っていました。

昼食では年齢に関わらず麺食の率が高くなり、特に高齢者はパン食、麺食で簡単に食事を済ませていることが明らかになりました。

夕食時はさすがにごはん食率が増えますが、今度は主食を摂らない比率が高まっており、晩酌をする、あるいは糖質を制限すると言う理由で、ごはん食の機会が失われています。

このようにして日本人の主食「ごはん」を食べる機会が戦前に比べ大幅に減ってしまったことが「噛む力・飲みこむ力」が低下してしまった要因の一つなのです。ということは、「噛む力・飲みこむ力」低下を防げるかどうかは「ごはん食」の機会をどれだけ増やせるかにかかっているのです。

さらには、ごはんを食べることによってSDGsにも貢献することができます。お米は日本人の主食であり、最も自給率の高い食材です。パン・ピザ・パスタ・ラーメンの原料である小麦は残念ながらそのほとんどを海外に依存しています。したがって、日本に運んでくるまでに、大量の化石燃料を消費し、温室効果ガスが排出されてしまいます。ごはん食の機会を増やすだけで、地球環境の維持に貢献することができるのです。

読者の皆様もごはん食で「噛む力・飲みこむ力」を鍛えて、いつまでも元気でおいしく食べてください。

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「おいしく食べて健康に! 50代からの大人の食育講座」第3回のテーマは噛む力・飲み込む力は生きる力」です。

皆さんは普段何気なく食事をされていると思いますが、もし噛む力が衰えて唾液が出なくなり飲み込むことができなくなったらどうしますか?口から食べられない生活を想像できますか?健康は、失って改めて大切さに気付かされるものです。それと同じように「食べる」という当たり前なことが当たり前でなくなった時、日々食べたいものを食べられてきたことが、どれだけありがたいことだったかと気づくことになります。

実は「噛む力」(摂食力)と「飲み込む力」(嚥下力)は運動能力の低下や視力の低下と同じように知らず知らずのうちに年齢と共に衰えていきます。

今高齢者の死因でがん、心疾患、脳血管疾患に続いて第4位は肺炎です。そのかなりの部分を誤嚥性肺炎が占めています。誤嚥性肺炎とは、食べ物を噛んだり飲み込んだりする機能(摂食・嚥下機能)の衰えにより、誤嚥(食べ物や唾液などが誤って気道に入ってしまうこと)から発症する肺炎のことです。これこそ「噛む力・飲み込む力」の低下に起因する疾患で、死に直結する危険な肺炎です。

では、どのように対処したら良いのでしょうか?「噛む力・飲み込む力」が低下する最大の要因は加齢により口・喉の周りの筋肉が衰え、うまく機能しなくなることにあります。ならば、他の筋肉同様に口・喉の周りの筋肉を鍛えることから始めましょう。進め方としては①「噛む力・飲み込む力の低下を自覚する。」②「ゆっくり味わって、良く噛んで食べる」③「口ストレッチ」の三つのステップがあります。

① 「噛む力・飲み込む力の低下を自覚する。」

最近口の中が渇いている。口の中がネバネバする。人と話す時の口臭が気になる。よくむせる。喉に食事を詰まらせそうになった。そんな経験はありませんか?そんな方は要注意です。まずは「自分の噛む力・飲み込む力は低下している」と自覚してください。すべてのスタートは自覚するところから始まります。

② 「ゆっくり味わって、良く噛んで食べる」

ついつい急いで食べたり、テレビを見ながら食べたりすると「良く噛んで、味わって食べる」ことがおろそかになってしまいます。これこそが「噛む力・飲み込む力低下」の最大の要因とも言えます。食事をする時は感謝して、味わって、良く噛んでゆっくり飲み込んでみてください。噛む回数が増える。味わいを感じる。それだけで、唾液の分泌量が増加します。この唾液の力はあなどれません。消化を促進することはもちろんのこと、口腔内環境を整え、虫歯予防・歯槽膿漏予防をはじめあらゆる病気の予防に役立ちます。唾液の分泌量が少なくなると、特に飲み込む力(嚥下力)が大きく低下してしまいます。毎日の積み重ねが大切です。三食ゆっくりと味わって、良く噛んで食べてください。

③ 「口ストレッチ」

「噛む力・飲み込む力」も当然筋肉の働きです。体力・筋力が衰えるのと同じで、口・喉の周りの筋肉もしっかり鍛えていないと、衰えてしまいます。そのためにおすすめなのが「口ストレッチ」です。聞きなれない言葉かもしれませんが、①口を大きく10秒開ける。②あ⇒い⇒う⇒え⇒おの口の形をしっかり、大きくゆっくり何回か繰り返す。③舌を延ばし、左右ぐるりと3回まわす。④「ぱ・た・か・ら」「ぱ・た・か・ら」と大きな声で10回繰り返す。これをできれば朝・昼・晩気づいた時に試してみてください。

いかがでしたか?「噛む力」(摂食力)と「飲み込む力」(嚥下力)を鍛えて、いつまでも元気でおいしく食べましょう!

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「おいしく食べて健康に! 50代からの大人の食育講座」第2回のテーマは「食育とは?」です。

2005年に制定された食育基本法には「食育」とは、食に関する知識・知恵・風習・伝統を学ぶこと。そして食育は生きる上での基本であり、知育・徳育・体育の基礎となるべきもの」と記されています。さらに「その結果健康的な生活をおくるための適切な判断力を身につける」とされています。つまり「食育を怠ると、知育・徳育・体育もままならず、健康的な生活を送るための適切な判断ができなくなる」と言い換えることができます。

もともと日本において「食育」は、各家庭の食卓で自然に親から子へ子から孫へと語り継がれてゆくものでした。しかしながら戦後の高度経済成長、核家族化、女性の社会進出・共働き、スーパー・コンビニの台頭・成長、加工食品・外食・中食の普及等の社会情勢の変化により家庭内での三世代同居の機会が減少し、家族揃っての一家団欒、家庭での料理を作る時間が減少しました。その結果、家庭内での「食育」の機会が失われ①「食」を大切にする心の欠如②栄養バランスの偏った食事や不規則な食事の増加③肥満や生活習慣病の増加④過度の痩身志向⑤「食」の安全上の問題の発生⑥「食」の海外への依存⑦伝統ある食文化の喪失といった問題が次々と現れてきました。

そしてついに子どもたちの朝食欠食率が20%を超える事態となり、国は健全な食生活の実現のために食育基本法を制定しました。同法では、食育を健全に推進するため以下の3つを「食育の柱」としています。

①   どんなものをいつどのように食べたら安心・安全か?健康になれるか?美味しく食べられるか?といった「選食能力を養う。」

②   衣食住の伝承・しつけ・マナーを語る「共食(家族の団欒)の機会を増やす。」

③   食糧問題、食糧自給率、地産地消、特産物や生産者の保護、環境問題、人口問題、SDGsといった「地球の食を考える。」

ただ、食育基本法制定時においては、特に子どもたちが健全な心と身体を培い、国際社会に向かって羽ばたくことができる未来の実現に重きが置かれていたために「食育」は子供のためのものというイメージが定着してしまいました。「食育」というと親子の食体験イベントや、学校での食育授業、工場見学や農業体験といった活動を思い浮かべる方も多いと思います。

しかし、本来「食育」は全ての国民が心身の健康を確保して、生涯にわたって健康で生き生きと暮らせることが目標であり、前回お伝えいたしましたようにむしろ働き盛りの皆様にこそ、生活習慣病を予防し、健康で生き生きとこれからの人生を送るためにも食べることの大切さを再認識すること。すなわち「大人の食育」が必要なのです。

コロナやロシアのウクライナ侵攻、中東情勢など社会情勢が目まぐるしく変化し、日々忙しい生活を送る中で、つい毎日の「食」の大切さを忘れがちです。「食」を考えるにあたって、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病などの問題に加え、「食」自体の安全性や、「食」の海外への依存(自給率の低下)の問題、さらには地球温暖化、海洋資源や、世界の食糧事情の変化など、SDGsの話題も避けては通れません。次回以降は、読者の方々、特に働き盛りの皆様に知っていただきたいテーマに絞って、身近な食の問題について一緒に考えたいと思っています。

#食育 #食育インストラクター1級 #食と健康 #大人の食育 #SDGs

 

 

今週から「おいしく食べて健康に! 50代からの大人の食育講座」として、食育のお話をさせていただきます。第一回「人は食べたものからできている」です。

それではさっそく皆さんに質問です「生まれてから今日まで何食食事をしましたか?」…即答できる方はいますか?一生懸命計算している人がいるかもしれませんが…過去の講演会でのべ6,000人くらいの人に同じ質問をしましたが、即答できた人はいませんでした。無理もありません。普段そんなこと考えたこともないですもんね。

実はほとんどの方が、誰から強制されたわけでも、法律で決められているのでもないのに、一日3食きちんと食事をされています。(2食の方もいますし、胃の切除をされた方は量を少なく5食くらいに分けて食べる方もいらっしゃいますが)また、一年365日のうち、1食も食事をとらない日は…ほとんどありません。(病気・事故・災害時は除いて)

ならば掛け算をしてみましょう。3食×365日=1,095食となります。とはいえ、赤ちゃんの時はおっぱいを飲んでいますし、忙しくてついつい2食になってしまった時もあるでしょう、ならば計算しやすいように1年間で約1,000食食べると考えたらどうでしょうか?改めて質問いたします。「あなたは、生まれてから今日まで一体何食食事をしましたか?」…さあどうですか。40代の方なら約4万食、50代の方なら約5万食と即答できるでしょ。

でも皆さんよーく考えてみてください。あなたがおぎゃあと生まれて、はいはいできた、たっちした、幼稚園・小学校入学、走った、泳いだ、100点取った、中学・高校部活動頑張った、旅行した、恋をした、勉強頑張った、進学した、職についた、悩んだ、結婚した、子供ができた…そうしたあなたの人生はあなたが食べてきたその何万食でできている。ということなのです。

どうですか?その食が乱れたら?偏ったら?多くても、少なくても身体に影響が出ますよね。人生が変わりますよね。「食べる」ことはすごく大切なことなのです。

でも皆さん、普段そんなに大切なことと意識していません。その割には、それなりに健康的に過ごしていませんか?大したものです。それは自分の体の中にきちんと健康的な食生活を送るシステムが備わっている証拠なのです。食事をしていないとおなかがすく。おなかがいっぱいになるともう食べられない。しょっぱい物を食べると喉が渇く。本来自分の体に必要な食事の量を自分の体は知っていて、自然に食べる量をコントロールしているのです。また、同じメニューばかりではあきませんか?どんなに好きだからって毎日ステーキではあきちゃいますよね。また無性に食べたくなるものってないですか?そう、本来人間の体には、必要な栄養素をバランスよく、必要な量を食べる能力が備わっているのです。特に「旬」の食べ物は美味しいですよね。それも体が欲している証拠です。

しかし、寝不足や、不規則な生活運動不足ストレスなどによって、この機能が損なわれてしまうと、食生活の乱れに気づかず、肥満・痩身・生活習慣病・がんなどを引き起こす要因となってしまいます。「人は食べたものからできている」そう「食べる」ことの大切さが少しお分かりいただけたのではないでしょうか?続きはまた来週「50代からの大人の食育」をお楽しみに。

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