逆転勝利の裏側~棋王戦五番勝負第2局を振り返る
藤井聡太棋王が挑戦者に同学年の伊藤匠七段を迎える第49期棋王戦第2局は24日、金沢市で指され、94手で後手藤井棋王が勝利しました。
伊藤七段の先攻
先手の伊藤七段は、序盤からあまり時間を使わず、研究範囲と思わせる早さで差し手を進めました。
図は56手目。藤井玉は裸同然です。先手が攻め続けていますが、形勢はほぼ互角という局面でした。この後も先手は、攻めを続け、先手が有利な状況で迎えた終盤の79手目。事件は起こります。
先手の連続疑問手
図は、後手が桂成に同角とした局面です。形勢は、先手が有利と言えるものでした。AIは、次の一手を「53金打ち」と示していました。以下、△同 玉(62) ▲7二龍(92) △6二金打 ▲7一龍(72) と進めていけば有望でした。
しかし、先手の差し手は、「94龍」でした。この手は、大いに疑問という判定でした。形勢は、一気にひっくり返りました。この手に対し、後手は84歩という盤上この一手で応じました。
先手は、76歩と歩を合わせました。しかし、この手も疑問という判定でした。この手を境に、形勢は後手有利に傾きました。
藤井棋王は、このチャンスを逃さず、13手後に先手を投了に追い込みました。正に、圧巻の終盤力でした。