JAZZ The Bootleg Series, Vol. 7 Miles Davis | ScrapBook

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先日、マイルスの「The Bootleg Series, Vol. 7 That's What Happened 1982-1985」のCDを購入した。CDなど買わなくてもApple Musicで聴くことができるのだ。が、これまで発売されたThe Bootleg SeriesをすべてCDで購入している手前、本作だけ買わぬという理由がないので買った。

 

やっぱりCDはいいな。所有欲を満たすには物を買うしかないのだろう。ストリーミングの音楽ではこんな感覚を味わうことはできない。

 

もっとも僕の場合、CDを買っては売り、売っては買ってを繰り返しているので、果たして所有欲故に購入しているというよりは、一時の衝動に負けて購入しているだけなのかもしれない。

 

本作The Bootleg Seriesである。

 

80年代から晩年までのマイルスの音楽は、50年代から70年代までの作品群と比較すると、明らかに評価が低い。

マイルスが亡くなった頃に発売された雑誌レコード・コレクターズの特集で、専門家が選ぶマイルスのベスト3作品といったものがあったように記憶する。十数名の識者が自分が評価する作品を三つ選ぶ。

Birth of the CoolやKind of Blueのジャケットが順当であるかのように紙面を占める中、一位に選ばれたのはAghartaではなかったか?(現在、その雑誌が手元にないから、かすかな記憶を頼りに拙文を書いているのだが)。

 

ジャズを聴き始めたばかりの自分の、Aghartaのどこがいいのかさっぱりわからぬまま、識者の見識を疑うわけではないもののいささか不満を感じたものだった。

その特集の中で、数多の識者は80年代以降のマイルスの作品を選んでなかったのではなかったか?

 

僕自身、マイルスの音楽を十年聴き、二十年聴きするうち、次第に70年代の、いわゆるエレクトリック・マイルスのすさまじさや気迫とでもいったものが感じられるようになった。が、80年代以降の物は置いてけぼりを喰ったままだった。

 

5年近くのほぼ引退期間を経て復活した、The Man With the Hornから始まる80年代の諸作品に聴かれるマイルスのトランペットの美しさ(僕は今、「We Want Miles」のFast Trackを聴きながらこの文章を書いている)は、彼の全キャリアの中でも際立っていないか(80年代の彼のトランペットの美しさに通じるのは、50年代前半のBlue Noteの作品Miles Davis Vol.2だ)。

 

そうそう、本作The Bootleg Seriesである。

本作、いってしまうと、DISC1と2には、Star PeopleとDecoy、You're Under Arrestの未発表テイクを並べ、DISC3には1983年7月7日、モントリオールのサン・ドニ・シアターでのライヴを収録しましたという物。

とはいえ、Minor Ninths, Part 1と2には、なんとJ. J. Johnsonが参加!最初クレジットを見たときには間違いではないかと疑ったものだ。

Time After TimeやHuman NatureのAlternate Takeが聴けるのもうれしい。

 

The Man With the Hornから「始まる」マイルスに耳を傾けよう。

たとえば、The Man With the HornとWe Want Miles。ここに集ったメンバーの力量たるや、50年代から70年代のメンバーに引けをとらない。

共演歴の長いアル・フォスターよりも、マイルスの音楽をもっとも理解していただろうマーカス・ミラーのベースがとりわけ凄まじい。

 

マイルスが亡くなってから、はやいもので三十年もの月日が流れた。そろそろ80年代以降の諸作品が、AghartaやKind of Blueと同列で語られていい時期に来ている。

 

そんなわけで次回のThe Bootleg Seriesには、80年代マイルスのカムバックライブとなったキックスでの音源をそろそろリリースしてもらいたいのだけれども。