トライジェンパワー松阪発電所日記

トライジェンパワー松阪発電所日記

BioMax小型木質バイオマス発電設備の国内第一号実証機です(2017年10月稼働予定)。
日々の進捗や運転状況を随時写真と動画でご案内します。
BioMaxの設備詳細についてはシンテックジャパン株式会社のHPご覧ください(http://syntechjapan.com/)

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6月から続けていた竹の実験燃焼も無事終わり、今週からまた杉のチップで運転しております。久しぶりの東京でお客さんと面会したところ、「竹って塩素が多いので、ダイオキシン心配ないですか」とのご質問があり、せっかくなのでそのご回答を共有しようかと思いました。

ダイオキシンが合成される温度は300ー500度で、800度以上では完全に熱分解されます。近年、焼却炉の温度設定が800度以上と義務付けられているのもこのためです。800度というのは、これまたガス中のタールを熱分解する際の目標温度設定でもありますので、BioMaxのガス化炉は800ー850度の温域で運転しております。

ただこれだけでは安心できません^_^!
生成ガスが冷却される際、300ー500度の温域で再度ダイオキシンが生成されますガーン。。。これをデノボ合成と呼びますが、これを避けるためには生成ガスをなるべく短時間で200度以下まで冷却することが肝要です。この点、BioMaxは強力な空冷式熱交換器を備えており、生成ガスを650度から115度まで、1秒弱で急速冷却します。凄いでしょニヤリ

ご参考まで





サンプルの写真を撮ってみました。
竹の炭
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杉の炭
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どうでしょうか、写真だとあんまり違いないですかね?ニヤリ

杉の方が少し粉末状のダストが多く、竹はなんとなく竹のチップの形が残ってるイメージです。

これから成分分析してみたいと考えております。

余談ですが、松阪の現場に少し土になってるところがあるのですが、清掃時の物なんでしょうか、そこに炭が少しこぼれてました。面白いことに、炭のこぼれてたところの雑草だけが、周りの雑草の1.5倍ほどに伸びてたんですよね。写真撮り忘れましたが。。。あまり科学的な話じゃないですが、きっとなんか効能があるんでしょうね。ちょっとだけ「明るい農業」的な妄想をしてしまいました爆笑

今回は中部電力側の事情(変電所工事のため発電停止要請)もあり、通常1000時間おきに行うガス化炉メンテナンス522時間(竹実証試験402時間目)で行いました。通常は炉を冷ますのに24時間、メンテに8時間(作業員2名)が作業の目安です。

 

今回、特段クリンカーらしきものも見つからず、メンテの内容自体は杉と竹で大きな違いはなさそうです。

 

一方、炉内に差し込んでいる60本のフィンガー)の空気孔の詰まりが若干多かったとの印象です。杉・檜でも同様に詰まりが生じますが、稼働522時間目にしては少し詰まり方が早い気がし、今後もう少しデータを積む必要がありますが、通常年7-8回行うメンテナンスを10回程度に増やす必要があるかもしれません。米国技術陣と協議したところ、次回ガス化炉メンテは1000時間目を目途に行い、その状況を勘案しながら竹チップ利用時のガス化炉メンテサイクルを決めよう、という結論になりました。

 

今回のガス化炉メンテで竹の実証実験は本来一段落と言うつもりでしたが、まだ1か月分以上は竹チップの在庫がありそうなので、折角なので在庫がなくなるまで続けることにしました。7月末ないしは8月上旬までは竹の発電を続け、引続きデータ蓄積につとめます。なかなか面白い実験データが揃いましたが、結論としては、竹は杉に勝るとも劣らない燃料種であると言えます(ただし、チップ化と選別の工程はきちんと管理する必要あり)。一段落したら、詳細な試験結果報告書をまとめますので、どこかの大学で博士号でももらえないでしょうか(笑)

 

本日1800から中部電力からの変電所工事完了の連絡を待って発電再開の予定。

 

 

 

 

 

写真のように、空気注入用フィンガーが高熱で破損しているものもあります。

フィンガーは破損等によりガス化炉メンテ毎に数本~十数本交換が必要となり、平均すると寿命は概ね1年程度です。

 

ガス化炉上部を下から写した写真です。

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炉壁に炭が付着しているので、棒で剥がします。
次に下から順に空気注入棒(フィンガー)を60本取り外して点検清掃します。写真でも見れる通り、フィンガーの空気孔が半分近く詰まってますが、放置すると次第に炉温が維持できなくなります。今回はメンテナンス直前でも炉温は適切に維持できておりましたので、支障が生じる程度の詰まりではなかったと思いますが、杉で運転している場合と比べて、若干詰まるスピードが早いような気もします。
 
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フィンガー内の付着物は細い棒かピックで簡単に除去できます。上の写真ではドリルビットの先端を使ってますが、別にドリルをしてるわけではございません。

 

バイオ炭は非常に細かい粒子を含みますので、ガス化炉メンテ作業中は防塵マスクの使用が必須です。作業はこんないでたちになります 爆笑

 

 

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炉下部から取り出した竹のバイオ炭はこんな感じです。

 

ちょっと分かりにくいですが、竹のチップが5分の1くらいの大きさに縮小し、そのまま炭化してる感じですね。

砕けちゃったやつもありますが。

杉・檜だと細かな針状に砕けていて、チップの原型をとどめていませんが、竹はやはり密度が高いため、より「炭」っていう感じになってます。

 

なお、竹の炭は多孔質であるため、利用価値が高く、現在パートナーのヤマムラ様の方で、いろいろな利用方法を試しております。

今は協力会社に無償引取していただいているバイオ炭ですが、「シンテックさん、炭だけで一山も二山もあたりまっせ!」、と関西弁で言われると、何だかお金持ちになれそうな気がしてきますニヤニヤ

 

 

火格子もきれいです。

ここが詰まると空気抵抗が上がるので厄介ですが、全く問題なさそうですね。

 

明日はガス化炉上部の状況をご報告します。

 

炭の取り出しが終わりましたので、次はガス化炉下部(火格子など)の点検・清掃を行います。

 

若干のクリンカー状の異物が散見されますが、杉・檜で運転している場合と大きく変わらないようです。

 

ハンマーで軽くたたくと剥がれ落ちます。

 

 

 

あいにくの雨ですが、いよいよガス化炉メンテを始めます。

24時間かけて炉の温度を冷ました後、上下を繋ぐ大きなボルトを外してチェーンジャッキでガス化炉上部を少しづづ上げていきます。

ご覧の通り、炭状のバイオ炭がびっしり詰まっています。この中を毎秒80ℓ程度のはやさでガスを抜き出しますので、送風機も大変です。

 

よくガス化可能な燃料の種類についてご質問をいただきますが、「均等な大きさで、ガスがスムーズに流れる形状を有していることが第一の条件」、とお答えしてますが、これを見れば理由がわかりますよね。。。特に炭化した後に、ガスがうまく抜ける形状を維持できるかどうかが重要です。

 

これから、集塵機で炭を吸出しつつ、ガス化炉上部を少しづつジャッキで上げていきます。炭をすべて出してから、炉内点検と清掃整備を行います。