フォトグラファーになって本当に良かったって思う瞬間があるの。その瞬間にあの子の側にいて、あの子の初めての一歩の思い出をプレゼントすることができた。
私の学生時代の親友と赤ちゃんのポートレイト。
私がアメリカに来るのをとっても楽しみにしてくれていた。
ぜひ、私に写真をとって貰いたいって。
この日はハロウィンの為のかぼちゃを買いに行きました。
ジャネットにとっては初めてがいっぱい。
初めてのハロウィン。
初めてのかぼちゃ。
そして、初めてのよちよち歩き。
ママが嬉しそうに、
「ジャネットが初めて歩いたのよって!」
ジャネットはアフリカンアメリカンのパパとチャイニーズアメリカンのハーフ。
パパからは大きな瞳と長いまつげ、ママからは愛らしい小さな唇に象牙の肌を譲り受けた。
大きなお目目で、ジャネットは私をじっと見つめるの。
あんまり私の事を長い間見つめるからママもびっくりしたくらい。
そうして、私はやっと見つけた。
榛色の、お日様の光が入ると美しい緑色にその瞳が輝く瞬間、私の6番目の色になる。
文字や数字の色は時に世には存在しない色もあり、それと同じ色に出会う事が本当に稀にある。
それらは手に取って触れられる確かなものとは限らなくて、光の屈折の様に一瞬で消えてしまう事が多い。
でも、ジャネットの瞳は私の六番目の色を閉じ込めた。
この子にはなんだか分からないのだけど不思議な縁を感じるの。
この根深い人種差別の残るアメリカで、それもマイノリティーであるアジア人と黒人とのハーフは決して楽な道ではないの。
黒人の血が一滴でも混ざれば、それは絹の上にたらした黒い墨汁の様な染みとなる。
時代が変わって来ているとはいえ、まだまだ、多くのアメリカ人にとってそれが黒人へのイメージ。
まして、母親はとても保守的な華僑の家の出身。
彼女の父親のレストランは黒人のギャングの強盗に荒らされた過去もある。
一方で、黒人の父親の叔父さんは白人の女性とおつき合いをしているというだけで、リンチにかけられ首を吊られ殺された。
当時は、黒人が白人の女性と結婚するなんて死刑に値するくらいの罪だった。
そんなに昔の話じゃないー
ー私達の父や祖父の世代が経験して来た苦い、苦い歴史。
ジャネットのパパはとても穏やかで優しい人だけれども、黒人の抱える暗い歴史を肩に背負って、社会への怒りを押し殺しているのが分かる。
アメリカの人種差別は日本人が思っているよりもずっと根深い。
虐げられて来た者達は、親になってその怒りを次の世代に無意識に手渡してしまう。
差別する方もその無知を子供達に植え付けてしまう。
それ故に、差別の連鎖はなかなか途切れる事がない。
だから、ジャネットが生まれてくる事は、決して手放しに祝福されたものではなかった。
でもね、ジャネット。
あなたはその辛い歴史から解放されるべき選ばれた子供だと思うの。
私にも外国人の血が流れているから、合いの子として生まれてくる苦しさは知っている。
でもね、あなたはその暗い歴史に光をもたらし、変えて行く事の出来る存在なの。
あなたのママは命をかけてあなたを守り抜くわ。
そして、あなたの周りには人種差別がどれほど馬鹿げたものか、心の底からそんな世の中を変えたいと思う人もたくさんいるの。
私もその一人としてあなたを見守っているし、アメリカ以外の世界を見てみたいならば、私が連れて行ってあげる。
六番目の色を持つ、私の可愛いジャネット。
あなたのこの一歩があなたの明るい未来への一歩となります様に。



























