1995年のアメリカ映画。

2人の少女が隠された秘宝を目指すアドベンチャードラマ。


音楽はジョエル・マクニーリー。

大作ではないと思われるが、マクニーリーは眩いばかりに色彩豊かなオーケストレーションを駆使したブリリアントなアドベンチャーシンフォニーを提供している。


メインテーマは自然豊かなカナダが舞台とあって雄大なモチーフをホルンとストリングスで歌わせ、そこに玉石のような美しい装飾を加えたもの。


メインとなるモチーフは三つあるが、どちらも非常に美しく、印象深い。

スケール感のあるメインテーマ、ジュブナイルで美しいモチーフがさらに二つ。

この眩いオーケストレーション感は、やや大仰だがコルンゴルドすら彷彿とさせる。

ティンパニのような打楽器や重低音を、しつこくない程度にさらりと味付けのように使うテクニックが素晴らしい。

マクニーリーはきっちりとした輪郭のあるメロディーラインを書くあたりもウィリアムズ的だなと感じる。


一方で、アクションスコアの緊迫感やダイナミックさも素晴らしい。

「Summer Rescue」などは正直「ソルジャー」や「ヴァイラス」などより、こちらの方がダイナミックかもしれない。

アクションスコアから、英雄調にアレンジしたメインテーマに繋がるシークエンスが劇的で良い。


終始、メロディアスでシンフォニックな耳障りの良い曲ばかり。

中でも、終曲が素晴らしい。

ジュブナイルなモチーフを1.5倍リリカルに聴かせつつ、フィナーレにおいてはフルオーケストラでメインテーマを交響楽的に響かせ、フィニッシュは強く強く余韻を残すようにして終幕を飾る。


有名ではないが、マクニーリーの名作に間違いなく、幸いダウンロードで現在も入手可能である。


・メロディー指数:8/10

・シンフォニック指数:9/10

・燃え指数:5/10

・1993年公開のアメリカ映画(原題 Iron Will)。カナダからアメリカまで犬ぞりで競うレースに参加する少年と犬の物語。

急逝した父の遺志を受け継ぎ過酷なレースに投じる少年の葛藤、勇気と栄光をオーケストラルに表現したのはジョエル・マクニーリー。


当時、あのジョン・ウィリアムズがジョージ・ルーカスに「ヤング・インディジョーンズ」の作曲家に推薦したことで一役有名になった新進気鋭の作曲家であった。


・おそらくマクニーリーのベスト作であるばかりか、私見では全ての映画音楽史上でもベストテンにランクインする作品である。

感動的で躍動的なオーケストラスコアによる映画音楽といえば、この作品を代表作に選んでも差し支えない。


・とにかく、全般に渡って感動的なスコアに終始する。

メインテーマは、非常にオーケストレーションの密度が濃い、丁寧に書き込んだ管弦楽曲であり、躍動的かつ雄大な傑作。

「飛ぶ」を表現した映画音楽の代表が「ET」だとしたら、「走る」または「滑走」という言葉をオーケストラで表現したらマクニーリーのこのスコアと言えるような、ベストマッチなスコアである。

おそらくスタジオ(ディズニー)側は、ブルース・ブロートンの「シルバラード」をテンプトラックとして提示したと思われ、輝かしいシルバラードのメインテーマの輪郭が残る。

しかしマクニーリーはその元ネタを50%増しに素晴らしくブリリアントなシンフォニースコアにしてみせた。


ドタバタとしたような序盤から、犬ぞりが始まると雄大なメロディーラインをシルバラードまたはスターウォーズのような装飾豊かなオーケストレーションで聴かせてくれる。


・父親の葬儀から、少年が父の遺志を引き継ぐ決心をするシーンのスコアは、まさに「決意」を表現したらオーケストラはこう鳴らすというお手本のようだ。


・レースが開始されると煌びやからなファンファーレから、メインテーマへ。

金管を豪快にフィーチャーした曲で、かつ繊細なオーケストレーションによりスピーディーなシークエンスを表現することに成功している。

おそらくジョン・ウィリアムズのスターウォーズシリーズですらこの曲に勝るファンファーレはないかもしれない。


・アクションスコアも実にパワフルで、スリリング。マクニーリーは一貫して、80年代のジョン・ウィリアムズスタイルのアクションスコアを書き続けているが、当時30代の若者であったマクニーリーの勢いを感じる。


・なんと言っても白眉は、ゴールシーンの曲であろう。

映画音楽史上において、この曲ほど勇気と栄光を讃えることに成功し、なおかつマーラーの交響曲のような品格を備えたフィナーレはそうはない。

ミクロス・ローザやスターウォーズを引き合いに出さなければならないクオリティである。

ゴールの瞬間を彩る金管群の重なりを聴かずして映画音楽ファンを止める訳にはいかない。


・マクニーリーは父親が脚本家だった関係で、エルマー・バーンスタインがユニバーサルスタジオで行ったレコーディングセッションを見学する機会を得て、映画音楽作曲家を目指す啓治を受ける。


その後、ブルース・ブロートンに自らの音楽デモを送り、懇意になるなどして、まずはディズニー映画から身を立てるようになったのである。

Film Score Monthly誌のインタビューにおいて、ジョン・ウィリアムズへの敬愛を示しつつ、自分の個性を出していきたいと語っていた。


マクニーリーの個性というか能力は、きめ細やかにオーケストレーションで物語の情感を表現することにあるのではないだろうか。

残念ながらマクニーリーは90年代後半において「ソルジャー」、「アベンジャーズ」、「ヴァイラス」といった担当作品がヒットに恵まれずキャリアアップは出来なかった。

ただ、ディズニーとの良い関係は続いているようで、「ピーターパン2」や本国では好評の「ティカーベル」シリーズに起用されて古き良き時代の管弦楽曲を提供し続けているようだ。


・本作品は今なおマクニーリーの傑作である。

公開当時リリースされたサントラは十分な収録時間がなかったが、後に長尺版が発売され、ダウンロードでも入手可能である。

長尺版で追加されたスコアも素晴らしいスコアばかりである。

大傑作。


・メロディー指数:10/10

・シンフォニック指数:10/10

・燃え指数:7/10



・ティーンエイジャーの三人兄弟がアメリカの大自然を旅するアドベンチャー&ロードムービー(1997年)。


・音楽は当時、ネクスト・ジョン・ウィリアムズと言われていたジョエル・マクニーリー。


大作ではないので、おそらくいつもよりオケの規模は小さいかもしれないが、それでもマクニーリーのオーケストレーションに掛かればいつものゴージャスなサウンドである。


作品のテーマからは、カントリー音楽やロック調を融合したサウンドを予想していたが、「白銀に燃えて」、「ターミナルベロシティ」などのマクニーリーのパワフルなブラスセクションが特徴的なアドベンチャースコアである。


もちろん、カントリーぽいギターやソロバイオリンのパートもあるが、「On the Fireing Range」、「Adventure Montage」などのような豪快なアドベンチャースコアが主体である。


モチーフもメロディアスでよく印象に残る。

血湧き肉躍るようなヒロイックなテーマ、ストリングスが優しく叙情的なモチーフなどが聴かれる。


アドベンチャースコアは、力みなぎるティーンエイジャーの高揚を表現するように、とにかく元気が良い。ブラス主体にメロディーラインを演奏させつつ、シンバルを打ち鳴らす。

トランペットやホルンによる主旋律の裏では、トロンボーンなどがリズムを刻むことで重厚感を演出。更にはタンバリンが良い味付けになっている。


なんといってもハイライトは「Marshal Flies the Skybot」である。

7分にも及ぶマクニーリーの全力のアドベンチャースコア。

まるでコルンゴルドの海賊活劇音楽を聴いているようだ。

「ターミナルベロシティ」などがまさにそうであるが、マクニーリーは」走らせている」ような演出ができるオーケストレーションにおいては他の追随を許さない。それもテクノを使わずにである。

ただ激しいだけではなく、鉄琴やタンバリンなどの彩りあるサウンドをサラッと入れることで楽曲が瑞々しくなるのがマクニーリーサウンドであり、ネクスト・ウィリアムズと言われた所以であろう。


・メロディー指数: 7/10

・シンフォニック指数 :7/10

・燃え指数 6/10


・007最新作、そしてダニエル・クレイグの最終作。伝統あるシリーズに初めて起用されたのはアクション映画の巨匠ハンス・ジマー。


全体としてジマーの新境地といえるほどの真新しさはないが、純粋に「ダークナイト」「インセプション」のようなジマーのアクションスコアの新作が聴けるというのは喜ぶべきことでしょう。


・基本はジェームズ・バンドのテーマを上手くアレンジしながら、新たなモチーフを織り交ぜつつ展開する。

BGMにはもってこいである。


「Matera」は美しいモチーフ。

デビッド・アーノルドが「カジノロワイヤル」以降の新生007のために作曲したヒロインのテーマ風でもあり、あるいわ元祖007の作曲家ジョン・バリーの作品(「愛と哀しみの果て」、「野生のエルザ」)を連想させるような曲で、潤い豊かな美しいメロディー。


以降、硬質なテクスチュア、シンセの打ち込みがリードするいつものジマーのアクションスコアが続く。

「Norway chase」など、シンセの重低音に男性コーラス交えたいつものジマー節が炸裂。


それこそ「ザ・ロック」や「ドロップゾーン」、「ピースメーカー」のジマー。

極めてスリリングであり聞いていて昂るものがある。


中には「Cuab chase」のようにカリブ海を演出するような陽気なギター、そしてジャジーな響きを織り交ぜたアクションスコアもあり、変化が聞いていてとても良い。


特に終盤はドラマティックなスコアが多い。

「Home」で聴かれるような男泣きのモチーフをオーケストラ主体に聞かせる。

このところ実験的な無機質なスコアの多かったジマーであるが、感情に直接訴えかけるようなスコアの復活に喜びファンとして喜びたい。


・メロディー指数:6/10

・燃え指数:7/10

・奴隷としてイギリスに連行されたネイティブアメリカンの首長の息子が数年後に生還し、部族を守るために活躍する姿を描く歴史アクション。

1994年公開のディズニー映画。


・当時、「ヤング・インディージョーンズ」の主要楽曲を手掛け、ハリウッドの伝統的なシンフォニックスコアを書けることを証明したマクニーリーが、「白銀に燃えて」に続いて担当した作品である。


「大規模なオーケストラ作品を描きたかった」と後に語ったマクニーリーは、ジョン・ウィリアムズスタイルのゴージャスでカラフルなオーケストラルスコア、そして希望に溢れたメロディーを書いた。

アクションキューにおけるスコア群も実にダイナミック。

ネイティブアメリカン・フレーバーの楽曲も、木管やパーカッションをうまく使って表現している。


メインテーマは、アップリフティングなメロディーラインを有し、勇壮感に溢れる。

マクニーリーは必ず流麗なメロディーを書く。例え「ソルジャー」や「ヴァイラス」のようなSFアクションであってもオーケストラが唸りを上げるようなメロディーを書くのである。

本作のような歴史劇であれば尚更であろう。


この主題は「Horse Race」では、より煌びやかな管楽器を強調したゴージャスなオーケストレーションで装飾されている。


更には美しい愛のテーマも随所に挿入してスコアリングを展開する。


アクションキューのスコアは相変わらずのクオリティである。

マクニーリーはジョン・ウィリアムズスタイルの楽曲を書くが、アクションスコアに関しては彼の方が上ではないかと本気で思ってしまう。

スピーディーで軽快さを要するアクションスコアにおいて、オーケストラの重厚感を維持するのは簡単なことではないが、マクニーリーにはそのスキルがあるようだ。


そんなマクニーリーのエピックスコアは公開当時サントラがリリースされず、唯一「Hollywood 94」というアルバムにおいて、マクニーリー自ら指揮でメインテーマのみ収録されている。

その後Intrade社がディズニーからライセンスを得てフルスコアをリリースしている。


・メロディー指数:7/10

・シンフォニック指数:10/10

・燃え指数/7/10

 本作はジョエル・マクニーリーが示した最高のアクションスコアである。

後述する「Cadillac freefall」の燃え度たるや、尋常ではないレベルで、個人的なアクションスコアに限定した燃えスコアの十傑どころか、5本の指に入るかもしれない。


本作は1994年のチャーリー・シーン主演のスパイアクションスリラー映画であり、スカイダイビングと犯罪アクションを融合させた内容で、クライマックスの空中落下シーンが見もの。


この当時、ネクスト・ジョン・ウィリアムズとして大いに期待されていたジョエル・マクニーリーが音楽を担当した。


冒頭のオープニングタイトルから、パワフルなブラスセクションを響かせ、アクションシーンではフルオーケストラを鳴り響かせる。


まずテーマ曲が素晴らしい。

主にスカイダイビングシーンに流れるが、高揚感満点の雄大なフルオーケストラ。


サスペンスモチーフも実に印象的で、時にシャープに、そして必要とあればフルオケで鳴り響く。


敵のテーマは、さすがはジョン・ウィリアムズを崇拝するマクニーリー、ダースベイダーのマーチから着想を得たと思われるミリタリーなリズムにパワフルな管楽器を響かせる。


そして極め付けは、クライマックスのアクションシーンを彩る「Cadillac freefall」。


開始直後から6分間に渡ってジェットコースターに乗ったかのようなテンションのとてつもないアクションスコア。

これまでに提示したモチーフを一堂に会して、それをよりパワフルにした管楽器群、激しいリズムセクション、動き回る弦楽器群。

それも、全て交響楽で表現しているところが素晴らしい。

これは演奏している側も燃えているに違いない。

ジョン・ウィリアムズでもここまでキレのあるアクションスコアは書いていないと思うし、ジアッキーノやデブニーですらこのクォリティに達していないのではないかと個人的には思う。


例えば、マクニーリー、デブニー、ブロートンといった作曲家がオムニバス的に各エピソードを担当する「Orville」を聞いていると、マクニーリーがこれらの作曲家の中でも突出して燃えるアクションスコアを書くことに気づく。


そのマクニーリーの最高の楽想が本作である。


Cadillac freefall」の1:25-はモロにダースベイダーのマーチ風。

シンバルを打ち鳴らす徹底ぶりである。


そして、エピローグはメインテーマを壮大に歌い上げる「Russian Gold」、そして「End credit」。

美しく、情感たっぷりにメロディーを歌い上げる。鳥肌が立つ高揚感とはまさにこのこと。

フィニッシュも極めて交響楽的で思わず拳を握りしめてしまうようだ。


・メロディー指数 10/10

・シンフォニック指数 8/10

・燃え指数 10/10



日本のアニメクリエーターが創作したスターウォーズシリーズのスピンオフ作品。


音楽に起用されたのは戸田信子と陣内一真。


録音に関する情報はあまりないが、どうやらスタジオミュージシャンおよび、戸田が代表を務めるフィルムスコア・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーによる演奏のようだ。


おそらくスタジオ録音で、50人強ほどのオーケストラ編成と想像される。


そのような録音環境だと仮定すると、ハリウッドの大編成、録音設備による楽曲と見劣りすることが多いが、本作品のオーケストラの響きはかなり健闘していると思う。

録音のエディターの頑張りなど様々な要素はあるだろうが、戸田らのハリウッド仕込みのオーケストレーションも一因と思いたい。


楽曲の方であるが、特別に印象に残る旋律を提供するには至っていないものの、本家のサウンドに負けない迫力とフィルムスコアリングされたキレのあるアクションスコアは聞き応えがある。


「Spidebike chase」などは過去のスターウォーズシリーズのアクションスコアをよく研究している楽曲。金管のパワフルさと、弦楽器群の軽妙さ。


特に「The Battle of Jedi」などは、エピソード1のドローン軍団を彩るスコアを彷彿とさせるパワフルな楽曲である。

楽曲のフィナーレもジョン・ウィリアムズよろしく管楽器を強調した壮大なフィニッシュで素晴らしい。


このスターウォーズ・ヴィジョンズの他のエピソードは戸田らの担当でないのが残念であるが、大島ミチルなどが起用されているようだ。


戸田信子は、ジョンのウィリアムズらの音楽に感銘を受け、バークレー音楽院で映画音楽を学んだ後、米国LAおよび東京を拠点に活躍する作曲家である。

映画音楽に特化したオーケストラ、フィルムスコアフィルハーモニー管弦楽団を設立し、その音楽監督を務め、これまでに数々の感動的な公演を行ってきた。

日本の映画音楽の普及において果たしてきた役割はとてつもなく大きい。

本業の方は、今の所はまだ邦画の大作への起用はないが、年齢も若く今後に期待される。


確か戸田は「ジョン・ウィリアムズファンクラブ」の会報誌においてジョン・ウィリアムズとのツーショット写真が掲載されていた記憶がある。

その際に戸田が持参した譜面をウィリアムズに賞賛されたというが、やはりウィリアムズの見立て通りのスケールの大きな作曲家であることは本作からも窺える。


三枝成彰が札幌交響楽団に依頼され作曲したヴァイオリン協奏曲。

シベリウスをイメージしたとのことだが、無調音楽が芸術だとされていた時代にロマンチックなメロディーを書いたがために当時正統に評価されたなかった作曲家たちへの墓碑銘として作曲したようだ。

タイトルにあるように、冬の厳しい、長い雌伏の時間を経て生まれる美しいメロディーというコンセプト通り、前半はどちらかというと暗めのトーン。

雪に耐えて梅花麗しという言葉があるが、まさしく雪に耐えている段階である。

高音を讃えたヴァイオリンの響きは美しいが、旋律は敢えてはっきりとしすぎないようにしている。

しかしこれは来るべきクライマックスのための助走といったところ。


最後の8分頃になりやっとメインテーマの輪郭が見えてくる。それまでにもモチーフの断片は散りばめられていたが、敢えて流麗になり切らないようにバラバラにして抑えていたものが、繋がる爽快感。


メロディーラインは、三枝成彰らしい。

強いて言えば千住明の「ピアノ協奏曲宿命」の感じだろうか。

非常に美しく、力強い。

同じメロディーを強弱をつけて引き分けるヴァイオリンの音色に聴き惚れる。


協奏曲の最大の聞きどころは壮大なオーケストラサウンドに凛とした独奏楽器の音色が

絡み合うことだと思うが、ヴァイオリンの独奏の間隙を縫ってオケを思いっきり良く鳴らすことで効果が高まる。

その点、三枝成彰氏はオーケストレーションが巧みだ。

オーケストラを鳴らす際の打楽器の使い方が上手いと思う。


終盤は大河ドラマのテーマ曲の最後の一分がひたすら続く感じ。

ドラマティックにおせおせでオーケストラを鳴らし劇的なフィニッシュに至る。


非常にドラマティックな楽曲であり、映画音楽愛好家にも親和性が高いと思われる。

敢えて言うならば、もう5分くらい短くても良かったかと思う。



大友直人指揮東京交響楽団の録音、札幌交響楽団の録音が発売されている。

2021年公開のディズニーの冒険活劇で、ドゥウィン・ジョンソンが主演を務める。


音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード。

海外のサントラレビューサイトでは概ね高評価を得ている。


純然たるオーケストラ作品であり、古き良き時代の活劇スコアの復活がサントラファンから歓迎されたのであろう。


確かにコルンゴルドやジョン・ウィリアムズ的なスコアでもあり、

明朗な活劇調のファンファーレによるメインテーマはむしろジョン・パウエルの「ヒックとドラゴン」が想起される。


ジャングルが舞台なだけにパーカッションによる打ち込みが強調される点もパウエルぽい。


ジェームズ・ニュートン・ハワードはハリウッドで確固たる地位を築いている映画音楽の巨匠であり、これまでにも数々の活劇映画をスコアリングしてきた。

個人的には「ウォーターワールド」の海賊活劇調のスコアが思い入れがあるし、ディズニー映画にも良質なスコアを提供し続けている。


ただ、ゴールドスミスやウィリアムズ、ジマーといった同時代の巨匠たちと比べるとずば抜けたメロディーメーカーとまではいかない印象がある。

本作も良いスコアであるが、もう一歩、惜しいというところか。


いずれにしても現在では貴重なフルオーケストラによる活劇スコアに拍手を贈りたい。

古代史ドラマスペシャルシリーズとして制作された「大化の改新」。


飛鳥時代における緊迫する東アジア情勢を背景に行われた朝廷内のクーデター、大化の改新を描く。


中臣鎌足と蘇我入鹿が親友という設定で、単なる政治劇に収まらず友情と改革の間に揺れるドラマ構成となっている。


音楽に起用されたのは大島ミチル。

後にNHK大河ドラマ「天地人」なども担当することになる。

当時の大島は映画「プライド」や「ゴジラ対メカゴジラ」においてロシア録音を行っているが、本作の録音でも手兵モスクワ・インターナショナル・シンフォニー・オーケストラを起用している。


・個人的に本作は大島のベスト作品の一つだと思っている。

彼女の作品の中でも際立ってメロディーラインがしっかりしており、そして心揺さぶるパワーを秘めた楽曲を提供しているからである。


オープニングのナレーションに被せる序曲「メインテーマ」が素晴らしい。

改革への大志を抱く主人公中臣鎌足の断固たる心情を歌い上げるメロディーが力強い。

ホルンの独創から始まり、弦楽器と合流、そして管楽器と打楽器群を従えるパワフルなタイトルテーマへと発展する。

これぞ史劇の音楽である。


・残念なことに、サントラは発売されなかった。

大島ミチルの作品集に同オケの演奏で唯一聴くことができる。

もちろん、オリジナルスコアを演奏したオケなので同質の録音だと思うが、熱気という点ではオリジナルには及ばない。


大島はどちらかというと細かいオーケストレーションをしないタイプであり、アンサンブルの精細度よりも、ブラスの音圧を強調したロシアのオケが合っていると思う。

それが成功したのが、「ゴジラ対メカゴジラ」である。

本作においてもこの重々しい演奏はなんとなくドラマの時代感と合っているように思う。


このメインテーマだけでなく、山背大兄王子襲撃シーンなどの激しいアクションスコアは「ゴジラ〜」と同等のパワフルさがあったし、クーデター決行シーンの緊迫のフルオーケストラ、そして鎌足・入鹿・ヨシコの青春時代を彩る楽曲も素晴らしいメロディーであり、忘れ難い。


同じく古代史ドラマスペシャル」大仏開眼」の千住明のサントラはリリースされていただけに、本作のサントラが世に出なかったことは雑に惜しい。


蛇足になるが、千住明の大仏開眼は日本のスタジオオーケストラによる演奏でありパワフルさはないが、大河ドラマ「風林火山」を彷彿とさせるヒロイックテーマや、読経によるメインテーマも素晴らしい出来であった。

ただサントラとしては短い曲が多く、やはりドラマ性という点では大化の改新には劣る印象である。