・ローランド・エメリッヒ版のハリウッド製ゴジラ。

「スターゲイト」、「インディペンデンスデイ」と続いたデビッド・アーノルドとエメリッヒのコラボレーションの現時点での最終作。

この作品以降、エメリッヒは「パトリオット」のジョン・ウィリアムズを除き、ハラルド・クローサーによる退屈なスコアを受け入れている。


・ゴジラの音楽となると、必然的に伊福部昭による土俗的交響楽の束縛から離れることは容易ではない。


アレクサンドル・デスプラは「ゴジラ(2014年)」においては人間側の緊迫感を演出するスコアを書き、「ゴジラ キングオブモンスター」においてはベアー・マクレアリーはうまく伊福部の音楽との融合を図ったし、最新作におけるトム・ハーケンバーグは効果音に終始しているとの噂があるなど、そのアプローチは多種多様だが、明確なゴジラのモチーフを書くことは避けている。


・本作におけるデビッド・アーノルドは敢えてざっくりと言うならば「インディペンデンスデイ」のシンフォニックスコア+「007」の打ち込みアクションスコアだろうか。


序曲「Begginig」はゴジラの重量感を強調した堂々たるスコア。

伊福部のような土俗的な表現法ではなく、「インディペンデンスデイ」の巨大UFOのテーマを思わせる重厚感でたる。

コーラスを取り入れるあたりはアーノルドらしいが、割としっかりとゴジラのための旋律を書いている。


余談であるが、私がこの旋律を初めて聴いたのはゴジラ映画のベストアルバムである。

アルバム名は失念してしまったのだが、アーノルドによるゴジラのテーマをシンセでしかもアップテンポにアレンジした楽曲が収録されていた。

これがまた非常にカッコ良かった。


しかし、このゴジラのテーマを縦横無尽に駆使したスコアを書いたかというと、疑問符が残る。

確かにゴジラが暴れ回るシークエンスにおいては随所に挿入されているのであるが、割と長めのメロディーラインがアクションのスピードの速さに合わなかったのかもしれない。


ゴジラが走り回るシーンはもっぱら打ち込みのリズムを土台に、007スコアのジャジーさを「インディペンデンスデイ」の重厚さに置き変えたといった印象?である。



一方で、ゴジラのモチーフだけではなく多くのモチーフを作曲しており、全体にメロディアスな点は「インディペンデンスデイ」に共通する。


「Evacuation」で提示される金管を主体としたミリタリックでヒロイックなテーマなどはなかなか高揚感もあるしっかりとした旋律であるし、超生物を神々しく崇高な存在として歌い上げるモチーフ(「The End」など随所で聴かれる)、「Nicks big speech」などは「インディペンデンスデイ」の大統領スピーチのスコアに通じるものがあるし、愛のテーマだってある。


だがなんといっても、怒涛のアクションスコア。

「1st Helicopter Chase」、「Hes back」などの燃え燃えスコアである。

極め付けは「Big G goes to Monster Heaven」で、デビッド・アーノルドのフルオーケストラアクションスコアの最高峰である。


前作インディペンデンスデイはやや演奏にムラがあった。もっというと、金管が途中でへばっていたが、その点では本作の演奏は終始パワフルさを保つことができたようだ。


・アーノルドとオーケストレーターのニコラス・ドットはこのスコアのために二ヶ月費やした。

スタジオ側は二人のために専用の家、ホテルを用意した。

エメリッヒとディーン・デブリンはゴジラの姿を制作期間の最終盤に至るまで見せることを嫌ったため、アーノルドはゴジラのテーマを捻り出すのに苦労した。

そこで、まずはアクションスコアを書いた。

ついで、愛のテーマやフランス特殊部隊のモチーフなどを先に作曲した。

特にミリタリーテーマは自身でも気に入っていたようだが、後に思ったよりも使用できるシーンが少なくてがっかりしたようだ。


ゴジラの姿を確認した後も、メインテーマはなかなか思いつかなかったようだが、オープニングクレジットから良いインスピレーションを得たことで完成にこぎつけた。


ロスで行われたレコーディングでは98名のオーケストラによって収録された。

今で言うハリウッドスタジオシンフォニーであろう。


・公開当時はスコア版が発売されなかった。

正確には歌もの主体のコンピレーションアルバムに序曲は収録されたものの、興行的失敗ゆえかアーノルドのスコアは陽の目を得ず、プロモ版のみファンの間で流通した。

アーノルドの証言によると、当時サントラ用にミキシングが音源の編集までしていたようだが、どのレコード会社からも声が掛からなかったようだ。

後にLALALANDレコードなどが2枚組で完全版をリリースしている。


・全体として過去のゴジラシリーズのスコアにおいて最も重厚でアクションにキレと動きのあるスコアであり、この点は追随を許さない。

惜しむらくはゴジラのテーマをもう少し盛大に鳴らす機会があればという点か。




・メロディー指数:6/10

・燃え指数:8/10

・シンフォニック指数:7/10

・「風の谷のナウシカ」や「ラピュタ」と同年代、1986年に公開されたアニメ映画。

ギリシャ神話の世界を描くヒロイックファンタジー大作。


・ジブリアニメと同様にイメージアルバム、そしてサウンドトラックが当時発売されたが、現在でも入手可能なのがこの交響組曲である。


全六楽章からなる本格的な楽曲を新日本フィルハーモニー管弦楽団による演奏で録音したシンフォニックスコアである。


・ずばり言うならば、「ナウシカ」に似ている。

ナウシカなどのジブリのファンタジックスコアが好きならば気にいるでしょう。


・メインテーマは第一楽章で提示される。

冒頭はスケール感ある序曲である。これから壮大なる神話が始まるというワクワク感がミクロス・ローザばりに始まる。

ティンパニーのリズム、ブラスセクションの咆哮のテンションが2分かけて最高潮に盛り上がったところで、オケを一度鎮め、ハープ、そして木管に主旋律を歌わせる。

モチーフを提示し終わったところで、ナウシカばりに弦楽器群を総立ちにさせ、再び美しく壮大なる旋律を歌い上げる。


特に曲の終盤になると激しいリズムとコントラスト描くようにフルオーケストラで主旋律を演奏し、劇的なフィニッシュを迎える。

まさに鳥肌立つ展開。


やはり久石譲のメロディーセンスは素晴らしい。


・第二楽章はミクロス・ローザが「イウォーク族のパレード」を書いたような?パワフルでエスニックな楽曲。ブラスセクションのパワフルさは後年の久石の作風に繋がる。


・第四楽章は、久石譲の18番とも言うべき、ピアノが主旋律を奏でる美しくも悲壮なシンフォニー。

久石譲の特徴というべきか、音符数が多くメロディーの主張が強い、それゆえに心揺さぶられる曲である。

クラシカルさは全面には出さないが、展開がピアノ協奏曲風なのが良い。


・第五楽章は、戦闘的な楽曲。

「ベン・ハー」などのミクロス・ローザを意識してことは間違いあるまい。

終始、ブラスセクションの咆哮、ミリタリーリズムが支配する。


・第六楽章は終曲に相応しい壮大なメドレー。

各々のモチーフを融合させつつ、フルオーケストラで情熱的に演奏される。

オーケストラが盛り上がって、メインテーマに戻る展開は「ナウシカ」のエピローグにそっくりである。

ティンパニーに重厚な調べと共にフィニッシュ。

かなり中毒性のある楽曲であり、永遠に繰り返し聴ける。

名曲として演奏会で繰り返しとりあけかられる「ナウシカ」よりもメロディーは陽性であり聞きやすい。


・後年の交響組曲もののけ姫や、交響組曲ハウルと比べるとオーケストレーションが未成熟な感は否めないが、若々しさに溢れた雄大なヒロイックファンタジースコアである。

久石譲のファンとしては聞き逃す訳にはいかない。


スタートレック風のSFドラマシリーズ。

前作に引き続き、メインテーマはブルース・ブロートン、エピソードごとのスコアをジョエル・マクニーリー、ジョン・デブニー、アンドリュー・コッティが交代で手掛ける。


相変わらず80年代のスペースオペラを意識したようなサウンドであり、特にジョン・デブニーはジェームズ・ホーナーの一連のスペースオペラ(スタートレック2、銀河伝説クルール)のサウンドを模倣しているようだ。


シーズン1はデブニーのスコアが目立ったような印象だったが、本作では断然ジョエル・マクニーリーが目立っている。


80年代のジョン・ウィリアムズのアドベンチャースコアをそっくりそのまま復活させたようなアクションスコアを連続である。

更に具体的に言えば、マクニーリーの黄金期?のスコア(「ターミナルベロシティ」「ソルジャー」)のようなド派手なフルオーケストラスコア。


特に10分にも及ぶ「Battle for Earth」はとてつもないスコア。

マクニーリーの最良のアクションスコアである「ターミナルベロシティ」を越えていきかねないような血湧き肉躍る楽想。


マクニーリーは良くも悪くもも作風が若い頃から全く変わらない。

今となってはこの手のスコアは時代遅れであろうが、そのギャップ感こそ製作者サイドが求めていたものだろう。

マクニーリーの今後の躍進を保証するものではないのが悲しいが、ファンとしては嬉しい。

やはりマクニーリーは良い。


同じくマクニーリーが「Hope for alara」は、ジョン・ウィリアムズの「七月四日に生まれて」がテンプトラックであったことは間違いないだろう。

マクニーリーにしか描けないような美しいオーケストレーション。

2020年に発売されたMOHシリーズの最新作で、VRを導入したゲームのようだ。
MOHシリーズは、主に第二次世界大戦ヨーロッパ戦線が舞台であるが、今作は諜報機関の工作員が主人公のようだ。

作曲は久しぶりにマイケル・ジアッキーノが帰って来た。
正確には共作であり、ジアッキーノはサントラの冒頭五曲を担当している。

・本作の為に新たにメインテーマを書き下ろしている。
これまた久しぶりのジョン・ウィリアムズスタイル(というかプライベートライアンスタイル)の鷹揚とした、そして朗々とした英雄讃歌。
MOHの第一作のメインテーマ、そして「Frontline」のメインテーマに近い。
旋律は後者のイメージに近い。

ホルンを基調とした温もりのある金管楽器に朗々と歌わせ、瑞々しい木管楽器に弦楽器で彩りを加えていく。
そこにスネアドラムのリズムを加え、オーケストラ全体で壮大に合奏していく。
そして、ほんのりと第一作のテーマを加える。
これぞ、アメリカの正義、背筋が伸びるような楽曲である。

・「Juliette's theme」は、前半こそ美しく物悲しいトーンであるが、一転してフルオーケストラが立ち上がり唸りを上げ戦闘的楽曲に。
ヴァイオリンソロや鉄琴の高音を背景に、金管楽器をバンバン鳴らすコントラストがワクワクするような重厚感、音の深みを構築する。
メインテーマでは抑え目にしていたフルオケ感をここで一気に解き放つ。

「Marcel」「Louise」は、工作員的な?緊迫感の演出を主体とした楽曲で、MOHシリーズのアンダースコアの伝統を引き継いでいる。

・「Dr Gronek」は金管を主体としたパワフルでスピード感のある楽曲で、「Drストレンジ」のようだ。ワクワクするようなモチーフであり、以降のアクションスコア群において挿入され、楽曲に高揚感を与える。

・以降の楽曲はNami Melumadとの共作としてジアッキーノがクレジットされているが、実質はMelumedが作曲したのであろうか。
彼女はイスラエル出身の作曲家で、30台前半と非常に若い。これまでメジャー作品はないもののスタートレックなどのテレビ作品にも関与してきたようだ。
「キャプテン・マーベル」のピナー・トプラクのようにアクションも書ける女性作曲家として今後の活躍に期待したい。

全体のトーンは、過去のジアッキーノのMOHシリーズのスコアに合わせており、ジアッキーノの作品と言われても違和感ない出来栄えであり、フルオケを縦横無尽に走らせる迫力あるスコアである。

モチーフは、上記のジアッキーノ五曲で提示されたものの他は第一作のモチーフから引用されている。
特に引用が目立つのは第一作の敵のモチーフ。


細かい点ではジアッキーノとはクセが違うというか、逆にジアッキーノのような独特の音の配置やオーケストレーションではなく、割と標準的とも言える。
それでも、映画音楽を凌駕するようなドラマ性を持たせた楽曲が多く、個人的には他の作曲家が手がけたMOHシリーズよりも好き。

「Armored Chess」、「Dive Dive Dive」など激燃えスコア多し。

全体に荒涼としたトーンに、アクションスコアはパワフル且つキレキレという、第一作への回帰と言っても良いだろう。

・メロディー指数:7/10
・シンフォニック指数:7/10
・燃え指数:9/10



2020年に発売されたPS4用のゲーム。

元寇をテーマとしており、文永の役の元朝襲来により壊滅した対馬で唯一生き残った武士を主人公としている。


本作の作曲者に当初単独で選ばれたのは梅林茂である。「LOVERS」、「陰陽師」などで世界的に知られた我が国が誇るコンポーザーだ。

しかし梅林だけでは必要な楽曲制作を網羅できないと判断され、追加で召集されてのは「47Ronins」で日本を舞台とした時代劇のフィルムスコアを経験済みのイーラン・エシュケリであり、両者は過去に共同制作を行ったことがあったようだ。


サントラの構成は、前半がイーラン・エシュケリのスコア。

後半が梅林茂による組曲である。

実質、エシュケリが全体の7割のスコアを書いたようである。




昨今の画一的なアクションスコアにやや食傷気味になっていたところに素晴らしい拾い物をした。


クラシックと和楽器の融合と謳われているが、本作はクラシックというよりハリウッドのアクションスコアに和楽器を融合させたといった方が適切である。


イメージとしては、「Great Wall」+「ラストサムライ」か。

メロディーラインはジマーの悲劇的な旋律を和風にした感じ。

以下は主にエシュケリによるスコアについて触れていきます。


モチーフは四つほど。

メインテーマ、仁のテーマ、マサコ?のテーマ、カーンのテーマなど。

これらを駆使し、シンセを一切使わず、和楽器と管弦楽、そしてボーカルで構成される。


メインテーマ「The way of ghost

おそらくエシュケリは日本の音階を研究して作曲したものと思われる。

管弦楽が短歌か俳句を謡っているようだ。

主人公のテーマである「Jin Sakai」は

強大な元帝国に立ち向かう小国の武士の悲壮感に寄り添った旋律で、これぞ和製史劇音楽。



The way of samurai

は特に印象的。

「そーれ!よっこいしょ!」という威勢の良い掛け声の挿入が印象的なスコアで、かなり燃える。

GODZILLA King of the monster」でも同様のアプローチがあったが、諸に武士をテーマとした本作の方がしっくりとくる。


lady Masako

前半の悲しくも美しいスコアから一転、フルオーケストラが盛り上がり、立ち向かう御家人たちのヒロイズムを悲哀に満ちながらも歌い上げる見事なスコア。


A Recking in Blood

The tale of Sensei Ishlkawa

太鼓をフィーチャーし、和のリズムに乗せたジマーサウンドとでも呼ぶべきか。

金管のパワーも合わさった見事な音場を構築している。


sacrifice of Traditionは涙無くして聴けないようなドラマティックなスコア。タイトルから推察するに自らの命を捧げた武士の為のレクイエムであろうか、緊迫感溢れるアクションスコアを交えながらも悲劇的シンフォニー。


The way of ghostはメインテーマの旋律を女性ボーカルが和歌を歌い上げる。

川井憲二の「Ghost in the shell」を彷彿とさせる。鳥肌が立つ。


カーンのテーマは、特にモンゴル風、大陸風味は効かせていない。

強大さ、恐怖といった情動を表現しており、はっきりとした輪郭の旋律を与えられていない。

同じく元寇をテーマにした「北条時宗」とはこの辺りが違うか。


一方で梅林茂のスコアは、交響組曲という体裁を取っている。

エシュケリがアクションゲームとしてのベクトルとして働いたらことに対して、梅林のスコアは深淵な世界観を表す役割を担ったと推察される。

エシュケリのスコアと比べると印象は薄いとも言えるが、それは役割の違いと理解できる。

ハリウッド的な律動とは一線を画して、これこそオーケストラと和楽の見事なる融合である。

鬼武者の交響組曲が、ややすると管弦楽も和楽が分離して混じり合わなかった印象であるのに対して、本作は高尚すぎることなく程よいブレンド感である。


とはいえ、第二楽章「襲来」の真に迫った迫力はゲーム音楽としては特筆すべき。

特に第五楽章「聖域」は素晴らしく、じっくりと噛み締めるように聴きたい楽曲群である。


アイラン・エシュケリはイギリスの作曲家。

「スターダスト」(2007年)において当時としても珍しく正統派で色彩豊かなオーケストレーションを聴かせた期待の作曲家であった。

私もエシュケリの将来を嘱望していたのだが、その後は作品数こそ多いが大作や良作に恵まれていない。

47Ronin」も悪くはないのであるが、ややテーマ性が弱く、アクションスコアは迫力はあるものの量産型スコアという印象であった。

しかし本作では久しぶりにその才能を再発見させてくれる傑作を書いてくれた。


・メロディー指数:6/10

・シンフォニック指数:7/10

・燃え指数:8/10

1993年公開。魔女三姉妹の活躍を描くディズニー作品。

当初はジェームズ・ホーナーがリクルートされており、劇中歌を作曲したが、急遽降板することになった。
そこで召集されたのがデブニー。
デブニーにとってこれが初めてのメジャースタジオ作品で、初めて90名ものフルオーケストラを使用できるチャンスを得た。

全体の雰囲気としては、ダニー・エルフマン調のカラフルでドタバタとした管弦楽であるが、メロディーラインはしっかりとしている。

メインテーマは美しく流麗な旋律、正統派のオーケストラサウンドでオーケストレーションのイメージはジェームズ・ホーナー、ジョエル・マクニーリーといったところ。


全体的に各楽器の音色を生かしたクラシック調、交響曲風で金管楽器が元気で良い。

デブニーらしいダイナミックなスコアも少なくない。

witches flight, winnie catches up, witches capture dani, witches demiseなどはこれぞデブニーというべき畳みかけるようなダイナミックアクションスコア。

特にresurrectionにおける壮大なフィナーレは、ジョン・ウィリアムズばりと言って良く、初のフルオケに燃えたデブニーの熱い想いが想像されるようだ。

情緒豊かにフルオケで歌い上げるエンドクレジットは◎。

後年の「Go Goガジェット」「スポンジボブ」あたりがサウンドの質感としては近いか?
・ムーランの音楽と言えば、ジェリー・ゴールドスミスによるアニメ版のスコアが想起される。
ゴールドスミスのキャリアの中でも屈指のメロディアス且つオーケストラルなスコアであった。
ゴールドスミスにしてはモチーフが多め(しかも全て俊逸な旋律)であり、戦闘スコアの迫力も半端ではなかった。

その影に隠れがちであるが、ジョエル・マクニーリーによる「ムーラン2」も好スコアであった。
かつてネクスト・ジョン・ウィリアムズと呼ばれたマクニーリーはリッチなオーケストレーションによるフルオーケストラスコアを書いた。
コーラス、二胡を使用してメインテーマは歴史大作に相応しい壮大さであったし、アクションスコアの密度の高さはまるでコルンゴルドである。


さて、2020年公開の実写版のスコアはハリー・グレッグソン・ウィリアムズに託された。
HGWはアクション映画においてはセンスの良いスコアを書く。歴史劇においては「ナルニア国物語」や「キングダム・オブ・ヘブン」ような好スコアも書いているが、期待外れの作品も珍しくなく、期待半分不安半分というところであった。

結論から言うと及第点というべきか、期待外れというべきか…。

幾つかのモチーフは、ゴールドスミス版ムーランの残香を感じるようだ。
ムーランの主旋律は華やかさよりも物悲しさや宿命感を背負った中華風の旋律。一転、爽快感のある「Mulan Rides into Battle」で聴かれるモチーフもゴールドスミス版に雰囲気は似る。
オマージュと考えるべきだろうか。

合戦シーンと思われるアクションスコアは残念ながら目新しさはない。

全体的にオーケストラを前面に出すスタイルではなく、中華風をぜんめんに出すでもなく、歴史劇としての特色はあまりなかったようだ。


カットスロートアイランドの通常盤は既にレビュー済みであるが、フルスコアが収録されま完全盤はこれまでに複数発売されている。

通常盤も70分を超える収録時間で、ハイライトはほぼ網羅されているので、完全盤に付加価値があるのだろうかと長年思っていたが、いざ聞いてみると、これまでスルーしてきたことを後悔するような内容であった。

まず、リマスターされているので音が良い。
通常盤の録音もかなり良かったが、よりシャープになった。
このカットスロートアイランドにおけるロンドン交響楽団の演奏は、同楽団が手掛けた数多の映画音楽の録音の中でも特筆すべき熱演であった。
重なり合う金管楽器群の細部のサウンドを聴き分けることができる。

カットスロートアイランドは最初から最後まで怒涛の燃えアクションスコアの連続であるが、こんな熱い曲がまだあったのかと思える収録曲が追加されている。
それも、Morgan Battle Dawgのようなクライマックスのバトルスコアが多いのが嬉しい。
この頃のデブニーは本当に盛大に鳴らすなぁ。
金管楽器の鳴らし方もどこか品があって、リズムと重低音重視の最近のデブニーと比べてクラシカルと言える。

wedding waltzという曲は、未使用曲であろうか。
どこかバロック的で物悲しい旋律を持ちながら、素晴らしく盛大に鳴らす。
メインのモチーフをファンファーレにアレンジしたクロージングなど、やり過ぎの感すらある。

オープニング曲「メインタイトル」のシンセデモが収録されているが、興味深い。
ロンドン響のゴージャスの演奏と比べれば
当時のシンセのクオリティーでは安っぽく聴こえてしまうのは致し方なく、これで採用か不採用か判断されてしまうと思うと聞き手の想像力も必要であったろう。

2008年公開の「ハムナプトラ」シリーズの第3作。

当初作曲家として雇われたのは、ランディ・エデルマン。本作の監督ロブ・コーエンとは傑作「ドラゴンハート」などで組む盟友である。

エデルマンは本作のために朗々としたヒロイックなメインテーマを提供した。

しかし、結果的にアクションシーンの多くはエデルマンのスコアが使われることはなく、ジョン・デブニーが書き換えることになる。
エデルマンのスケジュールの都合なのか。
あるいは史劇アクションの経験が浅く、骨太のアクションスコアが書けなかったためなのか。

兎に角、公開スケジュールが迫る中で急遽呼ばれたのは、ハムナプトラのスピンオフ「スコーピオンキング」で、モーリス・ジャールばりの雄大な史劇スコアを書いた実績のあるデブニーである。

エデルマンのスコアと整合性、バランスを取った形跡はなく、思いっきりデブニーによる別作品のスコアのようになっている。
フルオーケストラを打ち鳴らすデブニーのスコアに。

・メインタイトルテーマは、コーラスを従えたスピーディーな楽曲で、どことなく輪郭ははっきりしないところがあるが、メインのモチーフというより、アクションテーマというポジションであろう。

その後も、「スコーピオンキング」や「Lair」で聞かせたような血湧き肉躍るフルオーケストラアクションスコアを聞かせる。
自身がメインクレジットではないため、敢えて明確なメロディーラインを提示しなかったのだろう。その分、パンチに欠ける印象だ。
それでも、一部のスコアは「カットスロートアイランド」のデブニーである。

金管を潤沢に使いつつ疾走感あるアクションスコアが聴けるだけでもデブニーがこの映画の追加スコアを手掛けてくれて感謝したいくらいである。
ブライアン・タイラーが起用された「ザ・マミー」をデブニーが手掛けておればどのような結果になったであろうか。そう思わずにはおれない。

・スピルバーグ製作総指揮のテレビドラマで、海洋SFアドベンチャー。
潜水艦シークエストと海賊との闘いを描く。

・音楽に抜擢されたのは当時無名のジョン・デブニー。
彼の最高傑作、海洋アドベンチャー「カットスロートアイランド」(1995年)より以前に手掛けた作品で、メインのメロディーこそ違うが快活なヒロイック調である。

「カットスロート〜」がロンドン交響楽団によるフルオーケストラの演奏で、オーケストレーションも重厚かつクラシカルに作り込まれているのに対して、本作品は最大で60名ほどのオーケストラ編成で、オーケストレーションもどこかもっさりとしているが、初めての大作としては上出来でしょう。

デブニーといえば重厚でバーバリックなアクションスコアが持ち味ですが、この頃は比較的平凡なリズムに乗せたよくあるアクションスコア。
ただ、ホルンの咆哮など後年発揮される才能が垣間見える。

面白いことに、メインテーマのシンセモック(デモ)の方がスピーディな為か、メロディーに勢いや鋭さがあり、コルンゴルドなどの海洋アドベンチャースコアの精神を感じる。

この当時はテレビドラマを中心に手掛けていたデブニーであるが、同じくスピルバーグ製作の南北戦争ドラマ「class of 61」のスコアを気に入ったスピルバーグは本作の作曲候補としてデブニーにデモの作成を依頼した。
通常であればシンセでデモを作成するところであるが、デブニーは30名編成のオーケストラで録音したいと希望し、製作会社であるAmblinは理解を示し許可を与えた。
そのデモ曲は、海洋アドベンチャー映画の伝説的作曲家であるエーリッヒ・ヴォルフガング・コルンゴルドを彷彿とさせるファンファーレ調のメインテーマを挿入した楽曲であった。
デブニー自身、「コルンゴルドやゴールドスミス、ウィリアムズにインスピレーションを受けて書いた」と語っている。

デブニーの快進撃はここから始まったと言っていいでしょう。