・ローランド・エメリッヒ版のハリウッド製ゴジラ。
「スターゲイト」、「インディペンデンスデイ」と続いたデビッド・アーノルドとエメリッヒのコラボレーションの現時点での最終作。
この作品以降、エメリッヒは「パトリオット」のジョン・ウィリアムズを除き、ハラルド・クローサーによる退屈なスコアを受け入れている。
・ゴジラの音楽となると、必然的に伊福部昭による土俗的交響楽の束縛から離れることは容易ではない。
アレクサンドル・デスプラは「ゴジラ(2014年)」においては人間側の緊迫感を演出するスコアを書き、「ゴジラ キングオブモンスター」においてはベアー・マクレアリーはうまく伊福部の音楽との融合を図ったし、最新作におけるトム・ハーケンバーグは効果音に終始しているとの噂があるなど、そのアプローチは多種多様だが、明確なゴジラのモチーフを書くことは避けている。
・本作におけるデビッド・アーノルドは敢えてざっくりと言うならば「インディペンデンスデイ」のシンフォニックスコア+「007」の打ち込みアクションスコアだろうか。
序曲「Begginig」はゴジラの重量感を強調した堂々たるスコア。
伊福部のような土俗的な表現法ではなく、「インディペンデンスデイ」の巨大UFOのテーマを思わせる重厚感でたる。
コーラスを取り入れるあたりはアーノルドらしいが、割としっかりとゴジラのための旋律を書いている。
余談であるが、私がこの旋律を初めて聴いたのはゴジラ映画のベストアルバムである。
アルバム名は失念してしまったのだが、アーノルドによるゴジラのテーマをシンセでしかもアップテンポにアレンジした楽曲が収録されていた。
これがまた非常にカッコ良かった。
しかし、このゴジラのテーマを縦横無尽に駆使したスコアを書いたかというと、疑問符が残る。
確かにゴジラが暴れ回るシークエンスにおいては随所に挿入されているのであるが、割と長めのメロディーラインがアクションのスピードの速さに合わなかったのかもしれない。
ゴジラが走り回るシーンはもっぱら打ち込みのリズムを土台に、007スコアのジャジーさを「インディペンデンスデイ」の重厚さに置き変えたといった印象?である。
一方で、ゴジラのモチーフだけではなく多くのモチーフを作曲しており、全体にメロディアスな点は「インディペンデンスデイ」に共通する。
「Evacuation」で提示される金管を主体としたミリタリックでヒロイックなテーマなどはなかなか高揚感もあるしっかりとした旋律であるし、超生物を神々しく崇高な存在として歌い上げるモチーフ(「The End」など随所で聴かれる)、「Nicks big speech」などは「インディペンデンスデイ」の大統領スピーチのスコアに通じるものがあるし、愛のテーマだってある。
だがなんといっても、怒涛のアクションスコア。
「1st Helicopter Chase」、「Hes back」などの燃え燃えスコアである。
極め付けは「Big G goes to Monster Heaven」で、デビッド・アーノルドのフルオーケストラアクションスコアの最高峰である。
前作インディペンデンスデイはやや演奏にムラがあった。もっというと、金管が途中でへばっていたが、その点では本作の演奏は終始パワフルさを保つことができたようだ。
・アーノルドとオーケストレーターのニコラス・ドットはこのスコアのために二ヶ月費やした。
スタジオ側は二人のために専用の家、ホテルを用意した。
エメリッヒとディーン・デブリンはゴジラの姿を制作期間の最終盤に至るまで見せることを嫌ったため、アーノルドはゴジラのテーマを捻り出すのに苦労した。
そこで、まずはアクションスコアを書いた。
ついで、愛のテーマやフランス特殊部隊のモチーフなどを先に作曲した。
特にミリタリーテーマは自身でも気に入っていたようだが、後に思ったよりも使用できるシーンが少なくてがっかりしたようだ。
ゴジラの姿を確認した後も、メインテーマはなかなか思いつかなかったようだが、オープニングクレジットから良いインスピレーションを得たことで完成にこぎつけた。
ロスで行われたレコーディングでは98名のオーケストラによって収録された。
今で言うハリウッドスタジオシンフォニーであろう。
・公開当時はスコア版が発売されなかった。
正確には歌もの主体のコンピレーションアルバムに序曲は収録されたものの、興行的失敗ゆえかアーノルドのスコアは陽の目を得ず、プロモ版のみファンの間で流通した。
アーノルドの証言によると、当時サントラ用にミキシングが音源の編集までしていたようだが、どのレコード会社からも声が掛からなかったようだ。
後にLALALANDレコードなどが2枚組で完全版をリリースしている。
・全体として過去のゴジラシリーズのスコアにおいて最も重厚でアクションにキレと動きのあるスコアであり、この点は追随を許さない。
惜しむらくはゴジラのテーマをもう少し盛大に鳴らす機会があればという点か。
・メロディー指数:6/10
・燃え指数:8/10
・シンフォニック指数:7/10