前作公開の6年後、「アバター」の作曲者であるジェームズ・ホーナーは飛行機事故により亡くなった。

ホーナーはハリウッド映画音楽界においてはジマーやアラン・シルベストリと同等以上の存在であっただけにその衝撃は大きかった。

「エイリアン2」、「タイタニック」、そして前作を共に世に送り出したキャメロンにとってもその喪失は大きかったようで、ホーナーに対して惜別のコメントを発表している。


前作においてホーナーはオーケストラルさよりもパンドラという世界観の構築、そのスピリチュアルさの表現に腐心した。

ホーナーの輝かしいフィルモグラフィーにおいて必ずしも名作とまでは言えないかもしれないが、独特の民族音楽的な楽器、ボーカルを多用したアプローチや、ブロックバスター作品に相応しい躍動的なアクションキューは忘れがたい。


そんなホーナーの後に誰をキャメロンが選ぶかはファンの間でも話題となり、ジェームズ・ニュートン・ハワードの名前も浮上したようだ。

最終的に選ばれたのは、ホーナーをプロデュースの立場から支えていたサイモン・フラングレンであった。

フラングランはフィルムコンポーザーというより、シンセサイザーのプログラミングやアレンジメントの経歴を重ねてきま作曲家であり、この点からホーナーをはじめ、シルベストリらの映画音楽制作に関わっていたようだ。

彼はホーナーの未完成スコア(テーマ曲のスケッチ)から「マグニフィカント・セブン」のサウンドトラックを仕上げ、それが映画音楽作曲家としてのデビュー作となった。

そして、ディズニーランド内のアバターのテーマパーク「パンドラ」の音楽を手掛け、キャメロンの信頼を得た。


本作も基本的には路線を踏襲している。

ホーナーを失ったサントラファンの喪失感を埋めるように随所にホーナーの過去作品のオマージュというべきアプローチをしている。フラングレンはそういう意味で自身に与えられた役割を十分に理解しているのではないだろうか。


加えて、本作のための壮大にモチーフも作曲。このテーマがサウンドトラック全体の屋台骨となって構成されている。ホーナーのモチーフも引用はしているのだが、味付け程度であり、映画本編同様に新機軸を打ち出そうという気概を感じる。

水の世界の表現するにあたって、ホーナー的に神秘的にボーカルに加えて、自身のバックボーンであるシンセのプログラミングスキルは多いに生かした楽曲が提供されており、どこまでも聴き心地がよい。

アクションキューに関してはこれはよくも悪くもだが、いわゆるハリウッドの標準化されたようなアクションスコアのフェノタイプからは脱していない。

前作においてホーナーが書いたドラマティックなアクションスコアの路線は捨てられ、誰が書いても同じようなスコアとも言えるのが残念。このあたりはフィルムコンポーザーとしてのキャリアの浅さも影響しているかもしれない。


としつつも、重要にシークエンスではホーナーの書いたアクションスコアも登場したりする。


Home tree」は本作のフラングレンが作曲したメインテーマで、よく耳に残る旋律である。

神秘に満ちた、原始的なパンドラの世界へ誘うsongcord openingのボーカル部分においてもこの旋律が使用されている。

Sanctuaryのように、映画のドラマティックなシークエンスにおいてはフルオーケストラによって壮大に演奏され、気分の高揚を誘うモチーフとなる。とても爽快な楽曲である。


A New star Mask offHuntなどで聴かれる攻撃的なテーマは、敵のモチーフ。パワフルな金管を押し出し、重量感に富む。

旋律自体にさほどの印象付けられることもないが、それでも本作の絶対的に悪役である人類の傭兵集団の表現としては十分だろう。


rescue and offなどはこの敵モチーフ、パーカッシブでスピーディーなサウンドによるアクションスコア。


海が舞台とあって、水の揺らぎや美しい海の中の世界を表現すべく、ハープなどキラキラ感を押し出している。シンセやボーカルも加わり、誰も見たことのない美しい海の世界を演出。

美しい曲であることに間違いはないが、やや音楽の表現としての目新しさはなく、驚きや鳥肌が立つということもない。


そんな中でも特記するならば、payakanにおけるクジラの鳴き声を模したようなサウンドだろうか。これはとても良い。最も気に入った曲の一つである。

おそらく今後テレビ番組の感動シーンのBGMとして頻繁に使われていくだろう。

ただ肝心のオーケストラのメロディーにもう少しエモーショナルさがあればホーナーならばもうワンランク上の楽曲にできたのではないだろうか。


The tulkun returnFriendsも、同様に美しく、聞いていて幸福感のある楽曲だが、同様のことが言える。悪くはないのだが


The Huntあたりからアクションスコアが多くなる。敵のモチーフを更にバーバリックにアレンジ。


これら終盤のシーンは、現在的にアクションスコアが必要となることは理解できる。

ただ、音の刺激の割に、曲自体のパワーはホーナーほどないようだ、

Navi attackではホーナーのモチーフとフレングランのスコアを折衷させてアクションスコアだが、フレングランはハリウッドアクションスコアのレシピに沿って作った重低音とリズム偏重という印象で、正直両者の実力差が出てしまっているようだ。


もちろん、ナヴィ族という原始的で崇高な存在への対比として、人類を有機的な存在として際立たせるため、敢えてハリウッドアクション映画的に表現したのかもしれないとフォローはできる。


knife fightはホーナーのエイリアン2ぽい部分があり、またフレングレンのモチーフとの掛け合いも良く、好きなスコアである。


クライマックスを飾るFrom darkness to lightThe spirit treeは本スコアの中で最もドラマティックな楽曲である。


総じて、十分に及第点だといえる。いや、それどころかここ最近で本作ほど繰り返し聴いているサントラはない。

フラングレンのモチーフは素晴らしく気に入ったし、アルバムとしてのバリエーションは豊かで、アバターの世界に没入できる100分間のスコアが長いとは思わなかった。


ただ、作曲にかなりの時間をかけたという割には、キャメロンの作り出した映像ほどの革新性はなく、ハリウッドの均質化された映画音楽という印象である。


そういう意味でフラングレンがホーナーに並ぶように突出した才能の持ち主と持ち上げるには至らないが、そもそもホーナーの後釜というあり得ないプレッシャーの中、大きく破綻することなく纏めてくれたと賞賛して良いだろう。


フラングレンのデビュー作を聴く限り、平均的な作曲家だと思っていたので、

個人的には本作にマクニーリーの登板を期待していたし、キャメロンとはプロデューサーとして2作のコラボレーションがあるだけに、一部にはそれを押す声もあった。

しかし、マクニーリーのこのプロジェクトをこなせるだけのスキルがあるかは分からないし、古き良きオーケストラルなスタイルが合う作品とも思わない。


そもそも、クラシックの正当な教育を受けたホーナーに足らない部分を補完してきたのがフラングレンであり、そのフラングレンがホーナーのような叙事詩的スコアの域に達していないからとネガティブに捉えるのは、ホーナーの喪失感から来る押し付けというものだろう。

それに、フラングレンは指揮もしていることから、一定の素養はあるはず。


海外のサントラレビューサイトを覗いてみると、軒並み絶賛である。特にサントラレビューで権威あるfilmtracksでは五つ星を獲得している。

サントラファンとして、必聴の作品にであり、もちろん迷うことなく72分のスコアを含むコンピレーションアルバムよりも、100分超のフレングランのスコアアルバムを選択すべきである。


・メロディー指数:7/10

・燃え指数:6/10

・シンフォニック指数:5/10






若かりし頃に大冒険をしたという二人の叔父の家に預けられた少年の成長を描くドラマ。


本サウンドトラックの特徴を一言で表現するならば、ハリウッド黄金時代の映画音楽の再現、だろうか。


冒頭から、瞬いばかりに色彩豊かで高音のストリングスに修飾されたホルンの音色。

まるでコルンゴルドの冒険活劇映画音楽である。

後期ロマン派の管弦楽の残り香を受け継いだと言えるハリウッド黄金時代に活躍した作曲家たちコルンゴルト、スタイナー、ニューマンとりわけコルンゴルトはマーラーから直接学んだ絢爛豪華なオーケストレーションをハリウッドに持ち込み、海賊活劇、冒険活劇、壮大な時代劇映画を彩った。


本作を担当したパトリック・ドイルはスコットランド出身の作曲家で、クラシカルなオーケストレーションを得意とする。

歴史劇などでその才能を発揮している。ハリーポッター炎のゴブレットではジョン・ウィリアムズ以上にシンフォニックなスコアを書いて見せた。

本作では、サントラマニアを自称する監督の要望を踏まえてコルンゴルト風の楽曲を作曲したようだ。


当時の録音の質感を再現する意図なのか、アメリカのスタジオではなく、スロヴァキア放送交響楽団の演奏で、スロヴァキアコンサートホールで録音されている。


ウォルター少年のテーマというべき上昇志向の明るくや駆動的にメロディーを中心に、剣術シーンでは煌めく金管を主力とした昔ながらの活劇アクションスコア、時に優しく、悲しく色彩豊かにスコアである。


Sheik swordfight」ではコルンゴルトの「シーホーク」などのスワッシュバックラースコアを彷彿とさせる激しく、ヒロイックな主題が登場する。


前半は世界中で繰り広げる冒険をブライトなオーケストラスコア、エキゾティックなスコアで盛り上げるが、後半は落ち着いたトーンの曲が多い。

劇的にフィナーレと、ピアノソロによる「Piano suit」が印象的。



メロディー指数 6/10

シンフォニック指数 9/10

燃え指数 5/10

1982年公開の米国イタリア合作。

有史以前の世界が舞台のヒロイックファンタジーである本作は、ベイジル・ポールドゥリスの「コナン・ザ・グレート」や、ハリウッド黄金時代の大型史劇の音楽を手掛けたミクロス・ローザのようなパワフルな音楽が想起される。


・序曲にあたる「Legend of Dar」は史劇調の雄大で勇壮な楽曲。

なんとなくRPGなどでありそうな旋律である。美しいストリングスの調べが良い。

同じモチーフを用いた「Sord and an eagle」などでは金管を中心にスケール感ある楽曲が随所で聴かれる。


The Hord」は、バーバリックなリズムを従えつつ強大な管楽器群が咆哮しあうローザやポールドゥリス調のパワフルな楽曲。

敵のテーマだと思われる。「ロード・オブ・ザ・リングス」の黒騎士のテーマに迫るようなパワーである。

このモチーフを用いた「The Horde Attack」など「ベン・ハー」クラスのパワフルなアクションスコア。なかなか聴かれないような緊迫感あるオーケストラスコアである。


A Sword and an Eagle」や「The new kingdom」はメインテーマを格式高く祝典的にスローテンポで歌い上げる。非常に高揚感ある楽曲。


The Battle on tke Pyramid」はメインテーマとファンファーレを多用したワクワクするような楽曲。

トランペットなどの楽器の生の音響を生かしているのが良い。


The Great Battle


A New King」から「Finale」に至るフィナーレはドラマティックに聴かせるシンフォニーであり、ファイナルファンタジーにありそうな楽曲である。


更にはボーナストラックとしてコンサート組曲が収録されているが、パワフルな熱演である。


各々の楽器セクションがうねり合うように重なり合いハーモニーを形成していくという実にシンフォニックな響きが堪能できる古き良き時代のサウンドトラックである。


演奏はローマ放送管弦楽団及びサンタ・チェチェリア・アカデミー管弦楽団。

眩しいくパワフルな金管楽器の演奏が聴かれ、まるで演奏会場で聴いているような臨場感に溢れる。


音楽を書いたリー・ホールドリッジはハイチ、コスタリカ出身の作曲家。

あまり有名な作品の担当はないようだが、多くの映画やテレビ音楽の作曲を手掛けている。

全曲正統派オーケストラスコアであり、ハリウッド黄金時代の史劇のような格調高さ、そしてRPG系のゲーム音楽のような活力と高揚感に溢れたサウンドトラックである。


・メロディー指数:7/10

・シンフォニック指数:9/10

・燃え指数:8/10


今年で90歳を迎える映画音楽のマスター、ジョン・ウィリアムズ。

スターウォーズの九作品を全て完成させ、そして、スピンオフの「ハンソロ」や「オビ・ワン」に素晴らしいテーマ曲を提供しつつ、次回作「インディジョーンズ5」でサウンドトラックからの引退と、以後は演奏活動に専念することを発表している。


そんなウィリアムズはこれまで様々なベストアルバムが発売されている。

特に網羅的という意味で凄いのが、プラハ市交響楽団のアルバム。


しかし今回取り上げるのは、2022年にベルリンフィル、2020年にウィーンフィルという世界最高峰のベスト2オーケストラと共演したライブアルバム。


どちらかを選ぶというのは難しい。

それぞれに特徴があり、二枚でお互いを補完してるいる。敢えてそうしたのだろうか。

無論、重複している曲も少なくないが、


ただ、初心者向けにどちらか一枚と言われればベルリンフィル版だろう。


ベルリンフィル版はテーマ曲が主体で、親しみやすいメロディーの曲が多く、演奏はよりパワフルである。


ウィーンフィルは、バイオリン独創にムターを迎えていることから、クラシカルな曲が多く、比較的マイナーな映画の楽曲や、有名どころでも敢えてテーマ曲でない楽曲のチョイス(例えば、ジョーズからは「Out to the sea」だったり、シンドラーのリストからは「Rememberance」だったり。)があり、どちらかというと玄人向け、通向けである。


ベルリンフィル版は、個人的に大好きな「スーパーマンのマーチ」が入っているのが大きい。

これまで様々な指揮者、オーケストラの録音を聴き比べてきましたが、このベルリンフィル版を聴いてからは、ジョン・デブニー指揮ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル・オーケストラ版がベストという私見が覆りました。

躍動的でパワフル、金管の伸びが実に良い。


「ハンソロ」のテーマが収録されているのも嬉しい。サントラではあまり注意がいかなかったのですが、臨場感あるライブ版を聴いて思ったのですが、この曲、トランペットしんどいだろなぁ笑 トランペット奏者に拍手したくなりました。サントラ版以上に、燃えます。


ジュラシックパーク、未知との遭遇、レイダースのマーチ、帝国のマーチと、どの録音版よりもパワフルで最高の演奏です。


ウィーンフィルと重複している楽曲でも、ハリーポッターはベルリンフィル版がオリジナルサウンドトラックに近い。ウィーンフィルはムター演奏のために、バイオリン協奏曲風にアレンジされている。

「遥かなる大地へ(Far and away)」もしかり。ウィーンフィル、ムター演奏版は超絶技法メインに対して、ベルリンフィル版は実に感動的なメロディーで構成されたシンフォニー。

遥かなる大地へはあまり有名な映画ではないが、ウィリアムズ本人も思い入れがあるのでしょう。個人的にも大好きなサントラです。


一方でウィーンフィル版の良いところも数多あります。

「フック」や「戦火の馬」が入っているのが良い。

戦火の馬は感動的なオーケストラサウンドであることが再認識できました。


通向けと表現したが、「サブリナ」だったり、特に「シンデレラリバディー」「イーストウィックの魔女たち」など、サントラファンでもあまり馴染みのない楽曲が入っていることがありがたい。


アンネ・ソフィー・ムターという世界的なヴァイオリン奏者を迎えての楽曲は以下の通り。

ハリーポッター

サブリナ

遥かなる大地へ

イーストウィックの魔女たち

シンデレラリバディー

シンドラーのリスト

タンタンの冒険


最も感激したのはシンドラーのリストである。咽び泣くようなヴァイオリンに胸が打たれた。オリジナルサウンドトラックの演奏はイツァーク・パールマンとボストン交響楽団でしたね。


スターウォーズの楽曲に関しては、ウィーンフィル版では、「最後のジェダイ」からThe rebellion is reborn、「ジェダイの復讐」からルークとレイア、そしてメインタイトル。

シークエル三部作からのチョイスがThe rebellion〜というのが不思議ですが。

確かに重要な曲だし、名曲だけど、レイのテーマをはじめ他にも良い曲は沢山あるので、ウィリアムズがなぜ選んだのか知りたいところ。

ルークとレイアは名曲なので、久しぶりに素晴らしい演奏で聴けて嬉しい限り。


ベルリンフィルとウィーンフィルの演奏の細かい違いは分からないが、なんとなくベルリンフィルはパワフルで、ウィーンフィルは伸びやかで上質抽象的な表現で申し訳ない。


惜しいのは、JFKが入っていないことか。


出来れば、スターウォーズから、「運命の闘い」はコーラスが必要なので難しいかもしれないが、アクロス・ザ・スターズは収録して欲しかったところ。

やはりコーラスが必要なので、プライベートライアンは難しいだろうが、他にも演奏が聴きたい名曲は沢山ある。

今後のライブ活動に期待したい。




ジュラシックワールド3部作の完結編。

ジアッキーノはその全てで音楽を担当することになった。

結論から言うと、アルバムとして聴く場合の評価では、2作目>1作目>3作目ということになる。

一作目において素晴らしいモチーフを提示し、2作目では重厚でシンフォニックなスコアを提供した。

本作においてジアッキーノは他のアクション映画でも汎用性の高いスコアを書いたが、これが伝統あるジュラシックシリーズの映画音楽だろうかという疑問符もつく。

もっとも、監督の意図としてミッションインポッシブルのようなスパイアクション用のスコア、ワイルドスピードのようなカーアクションスコアを望んだという背景もあると推察はできる。

作品の舞台に合わせてエキゾティックな雰囲気を加味したり、パーカッションを重ねてみたり、BGMとしての手数は豊富。

ただそれは期待していたものではなかったというのが個人的な感想。


映画自体が色んな意味でバラエティ豊かな作品なので、ジュラシックシリーズで期待するような雄大なスコアになる余地が少なかったというのが実情でしょう。


12などはかなり緊迫感のあるアクションスコアである。

しかし、ジアッキーノの持つ特性を活かしたとは言えない。

フルオーケストラの響きを残しつつキレのあるハイテンションスコアを書くと言う意味において。

どちらかというとブライアン・タイラー的なスコアというべきか。


新しいモチーフも提示しているが、悪くはないがやや弱いか。エンドクレジットの冒頭に提示されている時が最も雄大に聴かれる。


ライスシーンはオーケストラを立ち上げて壮大に鳴らすシーンであるが、もう少し盛大に鳴らしても良かったのではないか。

2作目の壮大なフィナーレと比較すると似ている部分もあるが、オケの響きのインパクトが欲しいところ。




・メロディー指数:6/10

・シンフォニック指数:5/10

・燃え指数:5/10

春先に発売された鎌倉殿のサントラVol.1は、間違いなく2022年のサントラベストワンであろう。

エバン・コールという若き才能の登場に拍手喝采を送ったものです。


さて、このVol.2は前作で収録出来なかった楽曲、及びドラマの中盤以降の楽曲を中心に構成されているのであろう。


Vol.1は、テーマ曲を始め、中心人物のモチーフ、そしてドラマ性とスペクタクル性を兼ねた楽曲が多かった。

それもそうだろう、若き主人公と源頼朝が平氏打倒を掲げて挙兵、義経という英雄の登場と源平合戦…と高揚感しかない展開を彩った楽曲たちであったのだから。


一方、源平合戦が終わった後は陰鬱な人間ドラマが中心となるため、音楽も暗くなる。

比較的小品が多く、アンダースコアという楽曲が続く。


それでも、やはりエバン・コールという作曲家の実力を知ることができる。

前作がフルオーケストラならば、シンセやソロ楽器を駆使したスコアは主張しすぎずドラマをよく下支えしている。引き出しの多さが伺い知れる。


そんな中でも、義経を彩る「戦神」は出色の出来である。

パワフルな楽曲であるが、独特な楽器の配色が良く、スピーディーで且つ荘厳。神話的な英雄を彩る楽曲としてこれ以上はない。

アメコミ映画のサントラのように、安易に特徴のないブラスとシンセでヒロイックさを演出する向きには見習って欲しいものである。


また「そして戦は始まった」では、ロードオブジリングスの黒騎士のテーマを彷彿とさせるパワフルなスコア。重厚なスコアを書けることを示してくれた。


「四面楚歌」は打ち込みも加えた緊迫感溢れるスコア。実に器用な作曲家である。


大河紀行も美しい。

メインテーマのアレンジであるが、

エバン・コールの秀でたエモーショナル演習能力が伺える。


エバン・コールは今後邦画での成功、そしてそれを足がかりに母国アメリカでも活躍する作曲家になるのではないだろうか。

この作曲家の前途に期待したい。

2003年の戦争ゲーム。第二次世界大戦の欧州戦線を一兵士として参加するという内容で、大ヒット。続編も制作され人気シリーズとなった。


このコール・オブ・デューティーとライバル関係にある「メダル・オブ・オナー」の作曲者であるマイケル・ジアッキーノが音楽を担当している。

メダル〜はジアッキーノにとって出世作であり、ジョン・ウィリアムズスタイル、インディージョーンズスタイルのアクションスコアが評判を呼んだ。


メダル〜では主にノースウェストシンフォニアの演奏であったが、本作はハリウッド・スタジオ・シンフォニーである。


メインテーマはジアッキーノの特徴が色濃く反映されている。

主旋律こそ美しさ、勇壮さを歌わせつつ、その背景にある律動はコントラストのように不穏、不安、緊迫感を演出するような律動を奏でさせる手法である。

これは特にジアッキーノのゲーム音楽作品でよく使う方法であるが、他の作曲家ではあまり見られない。

メインテーマは冒頭から緊迫感あるオスティーナから始まる。いきなり戦場である。ティンパニーや金管の叩きつけるようなリズムに伴われて、スリリングなモチーフのパートを経たのち、不穏な空気感が残るなか、メインのモチーフが演奏されるが、この時点ではまだヒロイズムより不安感の方が強い印象を与える。

そこから一転、美しいストリングスにより引き継がれる転調。不退転の決意を示すような勇壮感を次第に帯びていき、フルオーケストラによる英雄讃歌へと引き継がれる劇的な展開。

激しいリズムを伴いながらも金管楽器が咆哮する終盤の興奮は素晴らしい。


ジアッキーノは、インディージョーンズ的アクションスコアを書くという点でジョン・ウィリアムズの後継者として相応しい一方、ウィリアムズが書くような潤いのある瑞々しいストリングスのオーケストレーションは不得手な印象がある。

ウィリアムズのスコアはいつもシンフォニーホールの天井に舞い上がるようなストリングスアンサンブルがある。

その点、本作のメインテーマのストリングスパートは本家に並ぶような素晴らしい響きである。


また、ジアッキーノは良くも悪くもメロディーラインがシンプルである。勿論、現在の映画音楽においてウィリアムズが書くようなロマンティックで複雑な旋律は必須ではないが…

本作のメインテーマもシンプルではあるが飽きさせないオーケストレーションのテクニックがある。


メインテーマ以外のスコアは主に戦闘シーンの楽曲。激しいスコアが多いが、ジアッキーノはフルオーケストラを実に小気味良く鳴らしている。

燃えるようなカッコ良いモチーフが登場することはないがかなり緊迫感がある。

確かに金管の鳴らし方などはウィリアムズ的だが、スピード感やキレという点ではゴールドスミスに迫るものがある。

鉄琴など様々な音色を導入しており、管弦楽としても興味深い。


全体的にドラマ性は乏しいため耳障りは良いとは言えないが、

クレジットにおける鎮魂歌的なメインテーマのシットリとした演奏は素晴らしい。




ピクサーの新作。

トイストーリーに登場するキャラクターを主人公としたスピンオフ作品。

不時着した謎の惑星からの脱出を図るというSFアドベンチャー。


音楽はマイケル・ジアッキーノ。

本作、ジュラシックワールド新作、マーベルのソーの新作、と直近で三作品のサントラがリリースされている。


SF活劇版のメダル・オブ・オナーとするのが適切か分からないが、シンプルなフレーズのヒロイックテーマ、キレと迫力あるアクションスコア、ナチス風の敵テーマのオンパレードである。


冒頭曲でメインテーマを提示した直後、

「Initial Greetings」でガツンとハイテンションなアクションスコアをぶつけられ、アニメ作品だとして侮れないことを思い知らされる。

過去のジアッキーノのアクションスコアのエッセンスを詰め込んだようなパワフルなスコア。


更に続く「Light year」はメインテーマのファンファーレ風の楽曲で、ワクワクするような躍動感。

こういった曲はメダル・オブ・オナー、シークレットウェポンオーバーノルマンディなどで何度も書いてきているので手慣れたものである。

「The Best Laid Fight Plans」「Home on the Space」はヒロイックな主題。

ちょっとおどけたような雰囲気があるところがジアッキーノらしい。

印象に残るメロディーの創出という点がジアッキーノの課題の一つであるが、少しインパクトは弱いか。ただ、金管楽器を時に明朗に、時にパワフルに鳴らす高揚感は十分効果的。

個人的にはメロディーラインこそ全然違うが、渡辺俊幸の「宇宙兄弟」の雰囲気を彷彿とさせる。


「Zurg onomics」「Oh、Hover」のようにコーラスを導入したパワフルなアクションスコアの迫力はさすがである。


咆哮する金管楽器に弦楽器との掛け合いがグラデーションのように絡み合うといった凝ったオーケストレーションは少なく、割と金管楽器の一本調子なスコアが目立ったか。

リズム偏重でドラマ性に乏しいという点はゲーム音楽的になってしまっている。

こういった傾向はしばしば、ジアッキーノのスコアでみられるマイナス部分であるが、今回は特に作曲時間が十分に取れなかった可能性がある。


それでも、終曲は10分超の聞き応えある交響組曲で、シンフォニックに聴かせる。


・メロディー指数:5/10

・燃え指数:7/10

・シンフォニック指数:6/10





バットマンシリーズの最新作。
これまで「ドクターストレンジ」「スパイダーマン」シリーズでアメコミ作品に登板を重ねてきたマイケル・ジアッキーノにとって最もメジャーなキャラクターの作品に起用されたことになる。
そして、ジアッキーノにとっては、「クローバーフィールド」、「猿の惑星 新世紀」、「猿の惑星 聖戦記」で組んだマット・リーブスとの再タッグになる。

過去のシリーズにおいて、ダニー・エルフマン、エリオット・ゴールデンサル、ハンス・ジマー&ジェームズ・ニュートン・ハワードといった作曲家たちがそれぞれのタッチの楽曲を提供してきた。
エルフマンはダークな中にも高らかに金管を鳴らすシンフォニックスコアであったし、ジマーは律動と重低音を駆使したテクスチャーなアクションスコアであった。

ジアッキーノは、近年こそ印象は薄れているとはいえ、どちらかというとジョン・ウィリアムズタイプの作曲家であり、どうダークヒーローを表現するか期待していた。
一方で、この直近にリリースした「スパイダーマンノーウェイホーム」が期待外れであったことから、今回も特徴のないスコアになるのではないかという不安もありました。

結論としては、力作であり、期待以上の世界観のあるスコアを書いてくれたと思う。
全体として、オーケストラルなエルフマンと無機質なジマーの折衷という見方もできる。
ジマーほどテクスチャーではなく、基本はフルオーケストラで表現している。ただ、エルフマンほど陽性な配色はしていない。

バットマンのテーマにおいて思いきったアプロ―チを見せた。
ひたすら4音の短いフレーズを繰り返すのである。
低音で不気味な響きのピアノの音型をひたすら繰り返すという行為だけを切り取ればミニマムミュージック的といえる。
ピアノの音響は数ある楽器の中でも最も安定しているため、安心感をもたらすが、これが繰り返されることで逆に不安感を表現できているようである
これは「ディープブルー」においてトレバーラビンがとったアプローチにも似ている。

その基本音型をピアノから金管や鉄筋、ティンパニーといったように楽器を入れ替えたり、そのリズムを早めたりすることでそのシーンごとに表現を変えていく手法である。
ジアッキーノの映画音楽作曲家としてのアプローチ方法の成長を感じるようだ。



実際、アクションスコア(「Highway to the anger zone」、「A Bat in the rafters」)では半端ではない迫力の緊迫感のあるスコアを提供している。

惜しむらくは、基本となる音型をすこしづつ崩していき、展開発展していってくれれば良かったが、それはジアッキーノが意図するところではなかったのかもしれない

この繰り返しフレーズを聞いていると、「このあと素晴らしいメロディーが飛び出すのではないか」と期待させるが、そこで寸止めする感じ(笑)。
しかし、ダークヒーローに対してありきたりな旋律をあてがうより今回のアプローチは適正だったと支持したい。

無機質な表現法と対極をなすのがブルース・ウェインのテーマである。
「Funeral and far between」、「All's Well That Ends Farewell」などで提示されるオーケストラルで感情的なスコアである。
アルバムの2枚目「Sonata in darkness」(0:13-3:16)においてそのメロディーラインの全貌が提示されるが、非常にクラシカルで叙情的な旋律である。
ひたすらダークな雰囲気の楽曲の中で唯一の光といえるような感触であり、そして体の深淵から湧き上がるような力強さが付与された旋律である。
シンフォニストとしてのジアッキーノの本分が色濃く表れている。

その他にも、キャットウーマンのテーマ、敵役リドラーのテーマなどが用意されている。
キャットウーマンのテーマは登場頻度は高くないようだが、ピアノを基調として憂いを帯びた内面的な曲である。ジャジーな雰囲気で、とても良い出来だと思う。ジアッキーノもこういったメロディーを書けるのかとファンとしては嬉しくなった。

リドラーのテーマは、不気味な雰囲気からジュラシックワールド的な破壊力あるスコアに発展する。特に旋律を強調したものではない。

サントラは2枚組とかなりのボリュームがある。
前半はひたすらダークな雰囲気であり、正直聴きごたえに乏しい。2枚目はクライマックスに近づくにつれドラマティックなスコアが増え、再度の4曲はボーナストラックと思われ、テーマ曲が続くため聴きやすい。

ちなみに、サントラ専門サイトとして権威あるFILMTRACKSのmodern soundtrack reviewsにおいて本サントラは星5つ中2つである。
理由はさまざま挙げられているが、端的にいうと繰り返しばかりで退屈ということのようだ。同じリズムや旋律のといったジマー的なアプローチをレビューワーが嫌ったということだろう。

個人的に最も気に入ったスコアは最後のトラックである「Sonata in darkness」。
劇中においてはむしろ不気味さや不安定さを表現したピアノソロによるメロディー集である。超絶技法とまではいかないが、クラシッカルな表現方法を取っており聞きごたえがある。
オケを使わなくてもドラマティックに聞かせることで、メロディーのすばらしさを証明している。

・メロディー指数:6/10 
・シンフォニック指数:6/10
・燃え度:6/10
*全体としての評価。個々の楽曲はこの限りではない。

三谷幸喜の大河ドラマといえば、服部隆之であった。

「新撰組!」、「真田丸」と格調高い名作を提供された三谷幸喜の新作にあるべき三度目のコラボレーションと思われたが、意外な人選であった。


早速メインテーマであるが、この10年の大河でベストではないだろうか。


もっとも、最初の1-2回を聴いてみた印象は「雰囲気重視の猛々しいパーカッションとコーラスで旋律が霞んでる」と感じた。

豪奢なオーケストレーションというより、モックと呼ばれるシンセサイザーの音を重ねたような印象である。

大河ドラマで聞きたかった、ブラスの高鳴り、唸るようなストリングス…というより

ハリウッド映画音楽の典型のように思えたのだが、メロディーを覚えると随分とイメージが変わった。


正直、新作でこのように力強く、燃えるメロディーを聞いたのは数年ぶり。

先の猛々しいパーカッションやコーラスはこのパワー溢れるメロディーを下支えするためにあったと思うとこれほど頼もしいことはない。

そうすると自ずと印象が霞んでいたブラスパートもくっきりと聴こえてくる。


メインメロディーのAパートは、男臭く、燃えメロである。

続いて現れるBパートが、上昇型のメロディーラインで、武士を鼓舞するような実にヒロイックさ。高揚感は満点である。

その後、ストリングスや女性コーラスによる束の間のクールダウンを経て、再度Bメロをより盛大にかき鳴らす。


燃え度で言えばここ数年のサントラ界隈でベストではないだろうか。


そんな楽曲を提供したのはアメリカ出身のエバン・コール。

大河ドラマ史上三人目の外国人コンポーザーである。年齢も30代と若い。

数々の名フィルムコンポーザーを輩出したバークリー音楽院出身の卒業したという俊英。

Wikipediaによると、母国で映画音楽の道に進むか悩んだ末、日本のサブカルチャーに興味があったことから日本での活動を選択したようだ。


観光ビザで来日し、当初は英語教師などをしていたというから、ジャパンドリームを掴んだといっても過言ではない。


これまでは主にアニメやゲームの世界でキャリアを重ねて来たようだが、ついに大作、それもNHK交響楽団に自作を演奏させる願ってもないチャンスを得た。


劇中曲も非常に器用な作曲をしている。

通常の大河ドラマであれば、劇中曲は小編成のスタジオオケの演奏となり、メインテーマと比べると随分とパワーダウンするのであるが、本作では東欧ブタペスト録音を敢行したことで、パワフルなブラスサウンドを劇中に展開することができた。

過去にも劇中曲のパワーダウンを防ぐべく、ローマ交響楽団(「武蔵」)、ワルシャワフィルハーモニー管弦楽団(風林火山)などの例があるが、東欧は映画音楽の録音が盛んであり、国内でホールを貸し切って都内のクラシックオーケストラに演奏してもらうより録音コストが安いと言われている。


男臭さ満点でファンファーレ、「いざ鎌倉」はタイトル通り力が入る俊作。

哀愁合わせつつパワフルに聴かせる。ジマーですら腰抜かすほどの漢讃歌。

北条義時のテーマと思われる「後に執権と呼ばれる男」はメインテーマに負けないドラマティックなメロディー。

よく耳に残るうえに、あまり聞きなれないような旋律からは作曲者の非凡さが伝わる。


冒頭のこの三曲は、燃え度100%である。


「大願成就」も美しく雄大なメロディー。


「魂の行進」はミクロス・ローザ+ラミン・ジャワディのようなパワフルなマーチで、鎌倉武者の荒々しい息遣いのようなコーラスが良いアクセントになっている。大変な燃え度である。


「木漏れ陽」「安堵の息」「八重」を始めとした胸を打つ美しい曲も多く、メロディーメーカーであることを確信。


「坂東武者」の高揚感も忘れがたい。


「天命の時」はコーラスも配したパワフルなアクションスコア。

テンプトラック?の影響か、モロに「ロード・オブ・ザ・リングス」の黒騎士のテーマが透けて見えてしまうのがマイナスだが、ドラマに重厚感を与えるスコア。

エバン・コールはまだキャリアが浅くオーケストラを使いこなせていないのか、どことなくシンセサイザーぽい音になってしまっている。

この辺りは近年の若手作曲家の共通した特徴だが、それが作風と言われればそうなるかもしれない。

本作についてはフルオーケストラでない(と思われる)中、むしろよく鳴らしたスコアでしょう。


賛否両論あるのが、「震天動地」におけるドボルザークの交響曲「新世界より」の大胆な使用である。

おそらく、平氏の天下から源氏の新世界を創るというコンセプトに懸けているのであろう。

これは作曲者のアイディアか、製作者サイドからの要望だろうか。

意図は伝わりやすいが、あからさますぎるとも言える。個人的には映画音楽的に高揚感溢れるアレンジとなっており気に行っているが、このレベルのモチーフをコール自身で作って欲しかった気持ちもある。

大河紀行には驚かされた。

過去の大河においても、この紀行のテーマは様々なクラシックの名手が器用されてきた。

千住真理子のヴァイオリン、辻井伸行のピアノといった具合に、メインテーマのメロディーのアレンジを独奏楽器で演奏するのが習わしである。

今回起用されてのポール・ギルバート、ロックバンドMr Bigのギタリストである。

本国よりむしろ日本で人気を博し、第二の故郷と呼ぶ彼に演奏を託すあたり、エバン・コールの日本に賭ける想いと重なるのではないだろうか。


今後も将来が嘱望される作曲家である。


・メロディー指数: 9/10

・燃え指数: 9/10

・シンフォニック指数: 7/10