読書録:「花咲舞」シリーズ 池井戸潤 | 隠居ジイサンのへろへろ日誌

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九州北部の街で、愛するカミさんとふたり、ひっそりと暮らしているジイさんの記録

バブル崩壊直後の大手都市銀行を舞台に、花咲舞という跳ね返りの事務指導行員が、銀行内部に巣喰う悪行や隠蔽工作、醜い足の引っ張り合い、目に余る出世競争を、正義感と正論・忖度なしで暴いていく痛快ミステリーエンタメ小説です。1話が30分ほどで読める短編連作集です。

小説を読みながらの、わたしの中のイメージでは、主役の花咲舞は黒木華さんでしたが、テレビドラマでは杏さんが主役だったようですね。なるほど、杏さんもイメージに合いますね。テレビドラマは未見です。

 

1作目は「不祥事」。

東京第一銀行事務部調査役の相馬健。事務処理に問題を抱える支店を指導する彼に念願の部下がつけられるという。しかし、そこにやってきたのは、スーパー問題女子行員・花咲舞だった…。(ネットからお借りしましたm(_ _)m)
 

続編の2作目。

東京第一銀行に激震が走った。頭取から発表されたライバル行との合併。生き残りを懸けた交渉が進む中、臨店指導グループの跳ねっ返り・花咲舞は、行内に巣食う巨大な不正に巻き込まれることに! 
 

テレビドラマが人気を博したので、1作目の「不祥事」の数年あとに、ドラマと同じ題名で発表された中短編、と解説にありました。

なんと、最後の最後、あの「半沢直樹」が、合併予定のライバル銀行の調査役として登場します。舞が突き止めた上役の悪行を暴くため、舞の銀行に乗り込んで、無責任で恥知らずな奴らをバッサ、バッサと斬りまくります。

スカーーーーっとするなぁ。

花咲舞が、組織のしがらみを越えて、銀行と、銀行を利用してくれる顧客のために、持ち前の正義感と正論で悪行を暴き、腐った奴らを撃破していくのは、今野敏「隠蔽捜査」の主人公・竜崎警視長になんとなく似ています。顧客の経済活動を支えるのが銀行の目的であり、市民の安全を守り犯罪を未然に防ぐことが警察の目的。その目的を阻害するような組織の論理、上役への忖度は百害あって一利なし。まあ、現実には、そういった割り切れる人は少ないでしょうけどね。だからお話の中で活躍してくれるとスカッとする。

 

主役は違いますが、同じテイストの物語として、テレビドラマ「花咲舞」の原作にも使われた連作集「銀行総務特命」も、銀行不正→勧善懲悪。解決逆転満塁ホームランでスカッとします。

行内の不祥事処理を任された指宿修平。顧客名簿流出、現役行員のAV出演疑惑、幹部の裏金づくり。腐敗した組織が罠を用意しているとも知らずに、指宿は奔走する。「総務特命担当者」の運命はいかに!? (ネットからお借りしましたm(_ _)m)

 

著者の池井戸潤さんは、大学卒業後、三菱銀行に勤務していた元銀行マン。銀行の業務内容や組織・人事・上下関係・業界慣行なども詳しく書かれていて、臨場感たっぷりです。

さすがに人気作家だけあり、手に汗握るストーリー展開も、銀行マンの人間関係の機微の描写も、読後の余韻も一流ですね。

「半沢直樹」「下町ロケット」「空飛ぶタイヤ」など、多くの作品が映画化やドラマ化されるのがわかります。

エンタメ小説として、5点満点で★★★★★。