令和最初の観劇は、ユゴー原作の「笑う男」
ホントはチケット取ってなかったんだけど、運よくおけぴで譲渡を見つけて行ってきました。
浦井くん、好きなんだよね。
いわゆる三大プリンス(井上・山崎・浦井)の中じゃ、一番演技力もあると思う。
実際演じた役を見ても、シャルル王子から月まで、すごい振り幅だよね~
井上くんや山崎くんだと、月は出来てもシャルル王子は無理だろうな。いや、シャルルができる役者の方が少ないから、それは仕方ないか。
私一推しの相葉さんならできそうだけどね、シャルル。
それはともかく、笑う男観て最初に思ったのは、ユゴー先生、心底権力者のこと嫌いなのね、ってことだ。
下層民の世界と貴族の世界が交互に出てくるんだけど、下層民たちは皆基本的に心優しくて一生懸命精一杯生きてるのに対して、権力者側の貴族たちは自分勝手で傲慢で思いやりや人間性の欠片もない人間として描かれてる。
体制の中から変革しようとしても一笑に付されて握りつぶされるだけって示してもいて、哀れで可哀想な下層民たちを救うには革命しかないって思ってたのがありありと分かるなぁと。
同時に作品の中で純粋で清らかな愛に満ちたキャラとして描かれているデアという女性と主役は死んじゃうわけですが、綺麗なものはさっさと殺しちゃったほうがいい、って心情も見えてきたり。
そういやレミゼでも、ひたすら美しいと褒め称えていたアンジョルラスはさっさと殺してたよな、ユゴー先生。
放っておけば権力者や悪徳が栄え、美徳の持ち主や権力のない人々は踏みつけられるばかりだから、革命しかない!っていうユゴー先生の主義主張がはっきり分かる作品でございました。
話は変わって、キャストの感想です。
我ながらびっくりだったのが、祐さまこと山口祐一郎氏に泣かされたこと。
実は私、祐さまに感心したことが殆どなくてですね……
いつも同じポーズで平坦な声で歌ってらっしゃるなぁ、それでも集客力は段違いにあるんだから不思議だよなぁ、と思ってました。
一番しっくりきた役が「王家の紋章」のイムホテップ役だったりして、まあ、過去の栄光がまだ幅を利かせてるんだろくらいに思ってたんですよ。
この「笑う男」でも最初の登場シーンでの歌も、相変わらずのポーズだなぁとボーッと聞いてたわけですが、2幕始まってしばらくしてのシーン、グウィンプレンが死んだと聞かされ、デアには知らせたくないと心を砕き、気付いて嘆き眠ってしまったデアに膝枕をしながら歌う場面ですね、そこでめちゃくちゃ泣きました。
まさか祐さまに泣かされるとは!ですよ。
細く高い声で、拾い子の二人、グウィンプレンとデアを思い歌う歌は、まるでレミゼにおけるBHHのよう。
祐さまは長くバルジャンをしてた人ですよね。全盛期の歌声でBHHを聞いてみたかった。心底そう思いました。
それから、ジョシアナ女公爵のまなとさん。わがままで高慢で退屈が大嫌いな、金と身分だけは腐るほど持ってるどうしようもない女。けれど、心の奥底に癒えない孤独を抱えている女。そういう女を見事に演じておいででした。
あの女公爵、これから長い孤独な人生を一人きりで歩いていくのかと思うと、ちょっと可哀想でしたね。
そんでもって、主役の浦井くん。デアとのデュエットは甘く優しく、いかにもプリンスで、まあ安定はしてるけどそんなに面白みもないなぁと思ってたら、2幕ラスト近くのクライマックスシーンで度肝をぬかれました。
貴族院の議員となったからには自分がこの腐った残酷な世界を優しい世界に変えるんだと決意する歌声、議会で女王の目の前で慈悲と寛容をもって下層の貧民達を救うべきだと説く歌声は、明るく強く清らかで、希望を見据える瞳はキラキラと輝いて、思わず見惚れる素敵さ。それを一笑の元に伏されて、一転、世の醜さと薄情さ残酷さを怒りと憎しみを持って歌う声の迫力。
この役、すごい難しい。下層民としての卑屈さや自信のなさ、愛する相手がいるからこその純粋さ、誘惑されてぐらついたりお金持ちになったと知って有頂天になったりする当たり前の人としての感性、貧民を踏みつけにしてはばからないものに対する怒りや憎しみ、最後はただ愛する者と共にいたいと死を選ぶ真っ直ぐさ。
そういったいろんな面を一人の人間の中にあるものとして観客に提示し、違和感を持たせないように表現するって、相当な演技力と役への理解がないとできないよね。
すごいな、浦井くん。
やっぱり好きだわ。
それから、リトルグウィンプレン役の下之園嵐史くん。
綺麗なボーイソプラノで、めっちゃ歌上手かった!将来有望な子だと思われます。