2019レミゼラブル・トリプルキャストの印象その2 | シャオ2のブログ

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最近は着物と舞台に夢中

さて、トリプルキャスト、全員見たのはあとはファンテーヌとコゼット。

今日はファンテーヌについて。

 

プレビューで観たのは二宮ファンテ。

2017でも思ってたんだけど、二宮ファンテは『若く美しく愛情深く、けれども愚かな』女っていう私のファンテーヌのイメージそのもののファンテ。

美人だけどあんまり深く物事を考えない、容姿以外はごく平凡な女の子が、うっかり男の甘言に乗ったばかりに転落していく様子をこれでもか、と見せてくれるファンテで、だから観ているほうはとても怖い。

彼女の気質があまりにも平凡すぎて、小奇麗な女の子なら誰でも陥る可能性のある地獄を見せてくれるから。

だって、イマドキの女の子って、大抵小奇麗じゃない?

そして、これは男の子も女の子もなんだけど、若い子は大抵無鉄砲だし、自分だけは大丈夫だって根拠のない自信がありますよね。

「若く勇気溢れ」ってファンテは歌うけど、その勇気は若さゆえの無鉄砲さと同義だと思わせられるのが二宮ファンテ。

あまり深く物事を考えないところから、つい人の神経を逆なでするような発言を繰り返して、結果、工場の仲間からそっぽを向かれたんだろうな。工場をクビになった後、目の前のお金につられて大事なものを手放し続けて、ついには娼婦に身を落とす羽目に陥ったのも、その思慮のなさが原因なんだろうな。そういう想像が容易にできてしまう。

原作ではファンテは美しい髪と歯の持ち主で、困窮して髪だけじゃなく歯も売ったっていう描写があるんだけど、二宮ファンテなら納得。

自分が生きていくためにも、コゼットのためにもお金が必要で、でも工場をクビになってどうやってお金を稼げばいいかもわからない。

目の前に現金をぶら下げられたら、後のことも考えず飛びついてしまう。そうしてどんどん身を落としていって、最後に行き着いたのは、自分を切り売りする娼婦という職業。嫌で嫌でたまらないけど、目の前のお金には逆らえず、他にどうしていいかも分からなくて、流されるままに身を売ることに頷いてしまう。

二宮ファンテから感じられるのは、そういう愚かさなんですよね。

現代人である私には、当時の女が働ける職場は限られていて、だから娼婦になるのも仕方がないことだ、という知識はあっても感情的な理解が及ばない部分があるのだけれど、二宮ファンテの場合、こういう女だからなんだと理解できてしまうのが、ある意味恐ろしい。

2019でも変わらず二宮ファンテはそういうファンテで、変わったとすれば、コゼットへの愛の大きさくらいかな。

2017では逃げてしまった男への未練の方が大きく感じられたんだけど、2019では娘への愛情の大きさの方が勝ってるような印象で、より『母親』としての側面が強調されているように私には感じられたかな。

とにかく、三人のファンテの中で一番気が弱くて儚げなんだけど、個人的には一番観ていて怖いファンテが二宮ファンテです、はい。

 

二人目は濱めぐファンテ。

実は結構好きな役者さんで、観る前から期待値はかなり高かった私。

はい、歌唱力は流石でした。元四季の役者さん全般に言えるんですが、滑舌が良くて歌詞が聞き取りやすく安定した歌唱、役に対する理解、芝居として成り立つ演技力、そういったものの基礎がきちんとしているので、安心して観られるのが、彼女の良いところ。

ですが、その結果は、今回の場合思わしくない方向へ働いたような気が……

というのも、濱めぐさんは二宮さんや知念さんに比べても些か年齢が高い。それもあってか、ファンテーヌ、という役に合わせて声や仕草をかなり若作りしてるわけですよ。で、結果として全体に無理してる感が……

4月の感想にも書きましたが、儚げに見せようとしている割に、バルジャンを弾劾してるようにさえ見える箇所があるのがなんとも違和感。

なんていうか、本来の声が強いというか、最近「強い女」を演じすぎて「弱く儚い」女が出来なくなってるんじゃないかしら、彼女。

恐ろしく自覚的なファンテだったしなぁ。目がね、強いんですよ。泥を啜っても、地獄を這いずっても、娘のために金を稼ぐ!っていう決意が瞳に現れてて、哀れな被害者にはとても見えない。

最近見た友人によると、儚げ路線を捨てて強いファンテになりつつあるそうなんで、それを観たら多分感想は変わると思う。

強い女が社会の圧に負けて死んでいく、っていう路線のファンテなら、きっとぴったりくるんじゃないかな~。

次に濱めぐファンテを観るのは名古屋なんで、路線変更したファンテを観られることを楽しみにしています。

 

三人目が知念ファンテ。

知念ファンテは気が強いよね~と2017の時から思ってたんですが、やっぱり気が強いファンテでした。

女子には珍しくぼっちでいることが平気で、だから人に合わせないとなんて考えない。そういうところが一部の女子からはめちゃくちゃ嫌われるんだけど、それを気にも留めない、そういう女の子。それが知念ファンテの印象。

あと、手紙を読まれて子供がいるってばらされた時に、「あんた達には関係ないわ」っていうんだけど、その歌い方というか言い方がもの凄くカチンとくるんですよね、知念ファンテ。

それまではどちらかというと同情的な子もいただろうに、あれで工場の女全員敵に回した感が強い。あの場面、二宮ファンテの場合、元々苛めっ子のターゲットだったのが虚勢を張るから余計に鼻であしらわれる結果になったように見えたし、濱めぐファンテの場合、強くて近寄りがたかった女の弱みを見つけたと思ったらそんなこというもんだから余計に憎たらしいと思われたように見えたんだけど、知念ファンテは一気に全員敵に回った感がすごくて、(自分も女だけど)女の集団怖い!って震えがきたわ(笑)

知念ファンテは最初の躓き(うっかり実のない男に惚れて子供作っちゃった)がなければ、それなりにいい人生送れそうなファンテだなぁと思います。

 

 

てわけで、三人の印象は、

 

二宮ファンテ→あまりにも普通の女過ぎてみてて怖い

濱めぐファンテ→儚げ路線が違和感。強いファンテならいいかも

知念ファンテ→気が強くて、でもめぐり合わせ悪すぎたよね

 

でした。

ファンテに関しては、2017の和音ファンテ千秋楽があまりに歌唱演技共に圧倒的過ぎて、いまだに和音ファンテ最高!状態なので、誰が一番とか言えません。多分、私が生きてる限り、最高のファンテは和音ファンテだと言い続けると思います。

だって、いまだに思い出すと涙出るもの……