TSミュージカルはこれで4作目かな
前回のは見損ねたんだけど、今回は現在、私のイチオシ俳優の相葉裕樹くんが出てたので、是非観なくては!と張り切って3回公演中2回観てきました
いやぁ、いい芝居でした
最初は千秋楽だけのつもりだったのが、結構評判も良かったし、途中で1回増やしたんですが、大正解いや、むしろ3回全部観ればよかったかも。
ストーリーの骨子は、当時波が荒くて港が築けないといわれていた大輪田(現在の神戸港)に港を築くために、若者たちが力を尽くす、というもの。多くの犠牲を払って、人柱まで立てて、ようやく波を緩和する波除島を築き上げた、という史実を、実際に働いていた者たちの立場で描いたお芝居です。
こうかくと、かなり重い内容なのは想像がつくところ。しかも、港を築けと命令したのは平清盛で、平氏はこの後滅亡します。当然のことながら、登場人物もそれに巻き込まれるわけで、完成して大団円、皆ハッピー、という終り方はしません。ですが、TSは、きっと主宰で演出家の謝先生の人柄というか思想というかからくるのでしょう、毎回、どんなに重くて暗い内容でも最後に希望を残すというか、未来を見つめる眼差しを感じさせる終り方をしてくれるのがすごいところ。
今回も、同じく。登場人物それぞれの人生を考えれば、若くして亡くなったり、敗残者として生き延びたり、誰一人、個人的な幸せや栄達を掴んだ人はいないんですよね。けど、希望がある。それも短期的な、一人の人生の中での希望じゃなく、もっと長期的な、源平合戦の時代から現代へと続き、そして更に未来へと続くだろう、そんな長い長い歴史の中に見える希望。一度は時代を制した一人の人間・平清盛の欲?野望?から始まったそれを、自分のものとして受け止め、純粋な夢へと昇華した若者たちが描いた壮大な夢が現代へと続いている。それを実感させてくれる舞台でした。
あの時代を描いた舞台としては異色なのは、有名な武将も貴族も政治家も、一人として出てこないこと。清盛の名前は出てきても、彼自身は出てこず、一貫して舞台に出てくるのは彼の命を受けて働く若い見習い武士や半漁半兵の平民だけ。清盛の代弁者として陰陽師が出てきますが、彼も歴史的有名人ではない。見習い武士の中で「若様」と呼ばれる者もいますが、それとて地方豪族の息子という、中央貴族からすれば低い身分に過ぎない。そういう、ある意味底辺の者達が、それでも港を築く夢を見て力を尽くし、大きなことを成し遂げようとする様が、力強く描かれます。
友との絆、信念、奪われることへの恨み、親しい者を亡くす悲しみ、新たな時代を夢見ること、自分がなすべきことは何かという苦悩。自己犠牲。様々な苦難の中で、それでも諦めなかった彼らの生き様に、涙せずにはいられませんでした。
……お話の内容に関しては、このくらいで。
演じた役者さんたちについての感想ですが……
主役の不動丸を演じた東山義久さん。「眠れる雪獅子」の時も思ったんですが、繊細そうな外見に似合わない力強い声の持ち主ですよね、彼。CLUB SEVENの時は軽妙なイメージが先行してたし、雪獅子の時はあまり悩まない役だったのでそこまでじゃなかったんですが、今回は非常に男らしくて雄雄しい印象。ダンスも、非常に滑らかで艶めかしい踊り方をする人だという印象が強かったけど、今回はそれに加えて力強さというかズシンとくるものがありました。特に、苦悩する心を歌い踊るシーンは、素晴らしかった。心の内から滲み出る苦悩がそのままダンスのステップに現れているようで、胸に迫ります。
獅子丸役の上原理生さん。彼はロミオ&ジュリエットでティボルトを演じているのを見たことがありまして、その時から非常に男性的な力強い歌声の持ち主だなぁと思っていましたが、更に磨きがかかっていたように思います。冒頭、導入の後、彼の独唱で物語が始まりますが、ゾクリとして、一気に物語の世界に引き込まれました。あの力強さは、他の人にはないものだと思います。また聞きたいなぁ。
五郎丸役の藤岡正明さん。彼の声を聞くのも、演技を見るのも初めて(大嘘「風を結んで」に出てはったの観たじゃん、私
)。というわけで訂正。二度目ましてですが、前回より今回の方が、ご本人の声の質や雰囲気にあった役だったと思います。なんか、受ける印象が全然違ってて、前回の役はあんまり思い出せないのに、今回はとても感動させられました。五郎丸の真っ直ぐさと優しさが、まんま声に現れていて、最後のシーンでは涙が自然と溢れてくるほど。おっかけたい役者さん、また増えちゃったなぁ。
常世丸役の渡辺大輔さん。骨太で男らしい役者さんですねぇ。武士を恨んで清盛を殺そうと企み世の中を斜に見ていた時と、自らの使命を自覚して船を操っていた時では、表情すらガラリと変わっていて、清清しいほど。それだけに、最期の場面では彼の人生の哀れが際立つようでした。
達若役の良知真次さん。この人、少年ぽいのにすごい声してますね。お腹の底に響き渡るような声です。こんな声の持ち主と知ってたら、スリル・ミー、観に行ったのに!あの時はニイロさんのペアだけ観て満足しちゃったんだよね…惜しいことしたわ…。彼は、武士への恩と命の恩人・常世丸との間で揺れる気持ちを言葉ではなく表情で演技してたのが印象的でした。後ろの席で細かい表情が分からなくても滲み出てくるのは素晴らしいなぁと。…次のスリル・ミー、出ないって聞いてショック!以前ペアだった小西さんが出るから、彼もてっきり出るもんだと思ってチケット取ろうと決めたのにさ。チケット情報見に行ったら名前ないんだもん…出ておくれよぅ!スリル・ミーで「私」役してるの観たい!絶対はまり役だよ、彼……
さて、最後は松王丸役の相葉裕樹くん。彼はね、シンケンジャー以来、ずっとおっかけてるんですけど、更に上手くなったね!←ファンの贔屓目?
演技で言えば、静の演技に深みが出てきた。元々、動いてる時は非常に魅力的な人なのに、静の演技は今ひとつと思ってたんですが、それがなくなって、動いてよし止まってよしになってきたなぁと。そしてダンス。CLUB SEVEN以降、バレエのレッスンを始めたと聞いていましたが、それが結果になって現れたなという感じ。相葉くんのダンスは、小気味のいい切れ味が持ち味だと思うんですが、時々、ポーズとポーズの間が乱雑になるところがあったんですよね。それがなくなって、持ち味はそのままに動きそのものが丁寧に綺麗になったなと思います。歌も、よく声が伸びて響いてて聞いていて気持ちよかった。リトルショップの時よりも低音に力が出てきたし、歌に心情を乗せるのが上手くなったように思いました。こうやって観るたび成長していってくれる人を応援するのは本当に楽しい!これからも応援していきたいと思います。
ミュージカル歌唱の上手下手って、歌手としての上手下手とはちょっと違うと思うのですよね。
例えば、歌手として歌うなら、本来の音程を外しちゃダメっていうのは大原則だったりするけど、ミュージカルの場合、歌は台詞でもあるので、人物の心情によっては外す方が伝わりやすかったりする。
歌手が音楽に乗せていかに自分の世界を作り上げるかが大事なら、ミュージカルは音楽に乗せていかに人物の心情を伝えるかが大事なわけで。
つまり、上手い歌手=上手いミュージカル俳優にはならないわけです。その意味で言えば、今回は、皆、上手なミュージカル俳優ばかりで、素晴らしかった。TSらしく、ダンスも凄かったし。というか、今回も東山さん、踊りっぱなしだったような…。なのに、息も切らさずに歌いきるのって凄いですよね。
いい舞台観た後って、もの凄く幸せ
まだ耳の奥に彼らの歌声が残っていて、しみじみとした幸福感でいっぱいです。
ホンマ、ええもん観させてもらいました。
ありがとう
つけたし
そいや、最後の挨拶で、相葉くんが「また次の機会があればTS出たい」ってことを言ってた時、藤岡さんが何か言いかけて「シーッ」とかやってたけど、もしかして、決まってるor声かけられてるのかな?だとしたら、次のTSは11月~年末でキャストもだいたい決まってるみたいだし、その次か次くらい?舞台って実は公演の2年前とかからキャスティング始まってるらしいから、決まってても不思議じゃないのは不思議じゃないんだけど…