二人ともはっとする。

「シオンはまさか、天界にいこうとしてるのか?それでシャナンはあんなことを・・・」

リークは、考え込んでしまった。


「ファル、貴方は火の精霊王だったのね。どうりで、熱く感じたはずだわ。でも、火王がなぜ、ラディスト国に仕えているの?お父様達は、知っていたの?」

次々と質問するユナにファルは困惑しながら

「たぶん、知らないと思いますよ。ユナ姫様、私は、この国を守ろうと決めてからずっと、仕えさせていただきました。これからも、その思いはかわらないでしょう。」

優しい目でユナをみる。


「クウナのことケンタのこと貴方にまかせていいのよね?私、クウナのことが心配で・・・」

「お任せ下さい」

「ありがとう」


大きなため息と共に、リークは

「ユナ姫、まずは、伝説の書を読みましょうか・・・・そうすれば、おのずと、自分の事がわかると思いますよ。」

「伝説の書?!あるのですか?お父様達に探せといわれているのです!」

思わず、リークに近寄るユナに

「落ち着いてください、順番に話しますよ。」


召使達は、忙しく動き回り、壊れかけた家や庭をきれいに元通りの姿に戻しつつあった。

「ファル、ユナ姫、まずは、家の中で、ゆっくり話しましょうか。」

ユナとファルは、顔を見合わせて、リークと共に、家の中へ入っていった。


「はるか昔、天界竜王の争いがあったのです。1人の女性をめぐってね・・・」

静かに話し始めるリークに、二人は静かに聞き入っていた。


「普通、竜王になるべくして生まれるのは1人、だが、そのとき二人生まれたのだ。一人は、そのまま天界に、もう1人は、精霊界で育てられた。二人は会うことも無く、別々に育てられたにもかかわらず、同じ女性を愛したのだ。だが、その女性が選んだのは、精霊界で育てられたほうだった。竜王は怒り、二人を人間界に追放、それだけではなく、ラディスト国とタウオン国、それぞれ別に、閉じ込めた。

「私と同じ姿の女性が、ここにくるように、問いかけたのです。」

すっと降り立ち、二人の前に、現れたユナは、戸惑っていた。

「ファル、ただ、ここにくるように言われたけれど、ここは、いったい?この方は、誰?」

「ここは、私の家ですよ、ユナ姫。私は風王リーク。以後お見知りおきを・・・」

深々とお辞儀をしながら挨拶をするリーク、ファルはそれを見ながら、やっと落ち着きを取り戻したようだ。


「はじめまして、風王リーク。」

また、漆黒の髪に戻ったユナを見て

「なるほど・・・似ている。髪の色こそ違うが本当に、よく似ている。」

「リーク、今日、俺が来たのは、ユナ姫様のこと頼みたかったのだ」

すっかり落ち着きを取り戻し、話し始めた。


「どういうことだ?ラディスト王が亡くなった今、ユナの力は、必要なんじゃないか?

クウナ姫とケンタでは、まだ無理だと思うが?それとも、俺の力が必要だとでも?」

ちらっと、横目でユナを見たが、すぐファルに視線を戻した。

「全然わからないわ・・・・わかるように説明してくれないかしら?私、本当に目覚めてから、まだ、そんなにたっていないのよ。起きたと思ったら、シャナンにつれてかれようとして、自分の力もわからないのに、ロバートの傷治したし、繭に閉じこもっていると、あの女性が現れて・・・・しかも、他の人の精を吸い取るなんて・・・自分のこともよくわからないわ。やっと生まれてからの記憶戻ったところなのよ?勝手に話を進められても困るわ」

ちょっと、すねたように顔を曇らせる。


「まったく・・・そんなところまで似ているな・・・わかったよ、ファル。連れて行けばいいんだな?」


「すまない。俺はあいつとは相性悪いからな。それを頼みたかったんだ。それにしても、シャナンが地王だとはな。どうりで、見抜けないわけだ」

「シャナンが地王ですって?!」

驚きをかくせないユナに

「あの子は、精霊の中ではまだ子供なのです。姿は大人ですがまだ、これから、たくさんやらなければならないことがあるんですよ」

「シャナンが地王・・・では、闇の王と地王が結びついたってことよね?」

二人の力をかき消すように風が舞う。

「リーク!お前はわかってて、こいつをユナ姫の召使にしたのか?!返答しだいでは、お前もゆるさんぞ!」

「いったい、何を言っている!?シャナン、お前は何かしたのか?」

「リーク・・・ごめん・・まさか・・この人が火王だって知らなかった。私・・・」

そういうと、シャナンは土の中に姿を消して、そのまま、いなくなった。

綺麗な庭は一瞬で、あらされてしまった。


「ファル、説明してくれ。俺が、ここに篭っている間に、いったいなにがあった?」

まだ、おさまらない怒りを、無理やり押しとどめ、全身にまとっていた炎は消えかけていた。

「ユナ姫が目覚めて、あいつは、連れ去ろうとしたんだ。そのときに、ロバートに怪我を負わせ、ラディスト王を死に追いやった!15年間、ラディスト国にいたのに、気づかなかったとは!」

「ラディスト王が死んだのは、風が教えてくれた。シオンが殺したのだろう?シャナンじゃない!」

睨みつけるようにリークを見る。


「闇に仕えているのだろう?なら、同じことだ!精霊王として、許しがたい事実だぞ!」

「シャナンが殺したのなら、わかるが、やったのはシオンだ!」

また、炎が全身にまとい始める

「リーク!お前はそれを知ってて眺めていたのか?!」

「落ち着け!さっきもいったが、風が教えてくれたんだ!知っていたなら、止めるにきまっているだろう?」

リークの周りにも、風が舞い始める。

風と炎が入り混じって、空気は、熱せられ始めた。

「ファル!いいから落ち着け!」

その瞬間!

池の水が舞い上がり、二人の上に落ちてきた!

二人は、びしょ濡れになった。

「誰だ!」

「ファル!」

そこに、虹色に輝く、ユナの姿があった。

「いったい、どうやってここに!?」

リークは、驚いたようにユナを凝視する

リークの澄んだ空気と違って、そこにいるだけで、熱さを感じるような風貌は、

まさに、火の精霊王として文句などだれもいわないだろう。


「あぁ、そういえば、いってたな。なんだその子が来ているのか?」

「そうだ。」

「ほう。それは挨拶しなくてはならないな。」

「わざわざ、ここに来るって事は、話があるのだろう?大丈夫か?」

「大地の王がいるなら、話は早いからな。問題ない」

一瞬風が舞って、きがつくと、家のそばに立っていた。


「お茶の用意はできてるか?今日は天気がいい。庭で話そうか」

そういうと、庭に向かって歩き始めた。


手入れされたその庭は、見るだけで価値がある。

「あいかわらず、すごいな。リーク、お前の趣味か?」

「これが、楽しみだからな」

その笑顔は親しいものにしか見せない笑顔だった。

「そこに座っててくれ。連れてくる。」

そういうと、リークは、家の中に入っていった。


調和の取れた庭を見ていると、本当に心が和む。

ラディスト王が亡くなって、すさんでいた気持ちもおさまるような気がした。


「ファル、つれてきたぞ。この子が、地王シャナンだ。」

「な!なんだと!」

ファルは、全身に炎をまとい始める


「リーク!この人が火王なの?」

先ほどまでの、かわいらしい姿ではなく、本来の姿に戻り、土が、生き物のようにシャナンの周りを囲い始める。

オレンジの髪と瞳、髪がうごきゆらめき、その姿は、15歳位にしか見えない。


「リーク!どういうことだ!こいつが地王だと?!何の冗談だ!」

ただ、そこにいるだけなのに、二人の力が、ぶつかり合い始める。

「やめろ!この家を壊すきか?!二人ともやめろ!」

「シャナン、どんなにシオンを愛しても報われない。シオンはユナと結ばれる運命にあるはずだ。そして、それは天界の意思でもあるはずだ。今まで光と闇に分かれているこの国々を元の姿に戻すために」

「受け継いだときに全ての記憶は受け取ったわ・・・」

「伝説の書とは俺達長のことだ。天界の道を開くには、俺達4人全て集まらないとできない。シャナン、いったい何がしたいんだ?天界に戻って長の地位を誰かに譲るのか?」

「私は、ずっとシオンのそばにいたいだけ・・・だから」

思わず、シャナンを見る

「まさか・・・おまえ・・タウオンの生贄になるというのか?」

悲しい顔で

「タウオンの地下に閉じ込められている者はもうあまりもたないわ。たぶん、ラディスト国の生贄も・・・」

「そうか・・・・・しかし、天界竜王も酷なことをする。」

「リーク・・・なぜ生贄が必要なの?天界から連れてこられたのでしょう?」

沈黙が流れる。

「そうか・・・記憶を受け継いだとはいえ、天界の事情までは知らないか。」

「私、天界にはまだ、行ったことが無いわ。どんなところなの?竜王ってどんな人?」

「お茶を入れなおそう。すっかりさめてしまった」

しばらく沈黙が流れた。

話そうか話すまいか、悩んでいるようにも見える。


「リーク様、また誰か来ているようです。どうなさいますか?」

「まったく、今夜は客人が多いな。シャナン、ちょっとまっててくれ」

「うん。まってる」


風を操りながら、ふわりと空を優雅に飛んでいる姿は

風の王にふさわしく、威厳と気品があふれでている。

「熱いとおもえば、おまえさんか。」

「ほんとうに、ここの結界はあいかわらずだな。」


苦笑しながらリークは

「まったく今日は、客人が多い。」

「俺のほかにもいるのか?それはめずらしい」

「前に話したと思うが、大地の長が亡くなったとき、受け継いだ子供がいるといっただろう?」