【1】「いさぶろう」「しんぺい」とは
「いさぶろう」と「しんぺい」は、南九州の山の中を走る肥薩線を走る列車だ。
肥薩線の中でも、人吉から吉松の間は、1日3往復の普通列車だけ運行するローカル線となっている。
険しい山地を走っているのに加えて、熊本・宮崎・鹿児島の3県にまたがるため、通学の高校生も利用しない区間となっているという事情があるからだ。
このうち2往復の普通列車には、「いさぶろう」「しんぺい」という名前がついている。
鉄道建設の功労者の名前だ。「しんぺい」の名前は、鉄道院総裁の後藤新平からつけられた。
後藤新平は、東京市長・内務大臣を歴任し、関東大震災後の東京復興を進めた政治家だ。
「いさぶろう」と「しんぺい」は、普通列車だが、熊本発着の2本は、熊本~人吉だけは特急扱いになっている。
【2】赤い車体
「いさぶろう」「しんぺい」は、基本的には2両編成の気動車だ。
多客期には、3両編成で運転されることもある。
古い気動車を改造した車両だが、急勾配が多い山岳区間も問題なく走っているように思う。
【3】ボックスシートが基本
もともと普通列車として作られた車両だけに、リクライニングしない座席だ。
熊本~人吉間は、新しい「やませみかわせみ」が豪華な座席だけに、天と地の差が出てしまう。
4人掛けボックスシートは、前の席との間隔がほどよくあるため、狭いとは感じにくい。
テーブルもあるが、4人で弁当を広げるには、狭いテーブルだ。
2人掛けの席もある。こちらは、4人掛けのテーブルとほぼ同じ広さだから、弁当を食べやすい。
ただし、2人席は、開閉する扉の位置で、景色が見にくい可能性がある。
公式HPには、景色が見にくい席が明示されているが、編成が変わることもある。
基本的には指定席だが、地元の住民が利用しやすいように、一部だけ自由席がついている。
ソファー席にも、自由に座れる。
【4】車内販売で弁当
「しんぺい2号」に、吉松駅から乗車した。
すぐ車内販売がやってきた。
カゴではなくて、お盆に乗ってやってきた。
カゴなら片手で提げやすいのに、お盆とは丁寧だなあ。
買った弁当は「栗めし」だ。
ビールも一緒に買った。昼間っからビールが飲めるぞ!
1100円で、ちと高いが、大きな栗が入った素朴な味は、たまらない。
栗の形をした入れ物も、かわいくてポイント高い。
この弁当を作っているのは、人吉駅前の「やまぐち」だ。
立ち売りの方が、観光客に手を振って、古き良き時代の風情を保っている。
本当は、この方から買いたかったけど、車内販売にならないから、まあいいや。
ちなみに、全国的にも有名で、京王百貨店の駅弁大会にも招かれたレジェンドだ。
【5】グッズもあるよ
車内販売では、お茶140円、チップスター130円、クリアファイル260円、ストラップ720円からなど、品数は限定されるが、一通り用意されている。
この日は、乗客が少なかったため、客室乗務員(アテンダント)は一人乗務。
一人で頑張って仕事をしていた。
【6】記念乗車証
記念乗車証は、ハガキの大きさ。
紅葉のイラストだが、1年を通して、このデザインだ。
【7】記念撮影ボード
ひとりで奮闘する客室乗務員さんは、わたしのところにも来てくれた。
記念撮影用のボードを用意してくれたので、遠慮なく撮らせてもらった。
私が撮る際は、たいていボードだけ撮らせてもらう。
【8】全面モニター
車内には、列車の全面を映すモニターがある。
正面の運転席横から直接見ることもできるが、画面から見ることもできるわけだ。
一部の席からは、座りながら先頭かぶりつき状態となる。
【9】矢岳第一トンネル
2096mの長いトンネルが矢岳第一トンネルだ。このトンネルの出口・入り口には、4文字の石碑が埋め込まれている。
熊本県の人吉側には「天険若夷」(てんけいじゃくい)、吉松側には「引重致遠」(いんじゅうちえん)という文字だ。
以前から、4文字熟語が埋め込まれていると知っていたが、通り過ぎていた。
そこで「今度こそ!」という気持ちで、先頭かぶりつきで待ち構えた。
雨も降っていて、写りはよくないが、とらえた!
「引重致遠」だっ。・・・わかるかな?
昔の文字なので、4文字が、右から左に並んでいるので注意。
【10】日本三大車窓
景色が美しいので有名な場所では、列車が一時停車する。
高い場所から、見下ろす景色は雄大だ。
この日に限らず、私が乗った際は、天気がイマイチで、感動まではできなかったけど。
分かりやすいように、看板ができていて、その前で停車してくれる。
それぞれの駅も、非常に魅力的だ。
駅の話だけでも相当な分量になるので、駅についてはまた今度。