普通列車グリーン車で、車内販売の売れ行きが良い時の一つに、夕方の帰宅ラッシュ時がある。
午後5時~6時ごろだと、乗客は多いが飲み物は案外売れない。酒を飲むなら自宅に直行してからという人が多いからのようだ。
午後8時過ぎると、ビールなどの酒を飲む人の割合が増える。東京駅・上野駅の売店では、ビール・チューハイ・ハイボールなどの酒が、どんどん売れる。グリーン車に乗るくらいだから、売店の方が安いためという人もいるが、売店の方が品数が多いという事情で売店利用の乗客も多い。
しかし、買う時間がない人、私のように車内販売で買うのが好きな人も結構いる。
準備室から4号車に向かう。グリーン車2両のうち、先に車内販売に向かうのは、準備室があってトイレがない方の車両であることが多い。20分以内の短時間乗車の時は、準備室側、空いていれば定員8人の平屋に、たいてい私は座る。
売れる時は、ほんとによく売れる。カゴには、お茶・コーラ・じゃがりこ等も乗せるため、ビールは3本くらいしか乗せられない。3本全部売れて、次の客にビールが欲しいと言われたら、準備室に戻ることになる。
ただ、準備室に戻るのが、実はうっとうしい。乗客に「申し訳ありません。持ってまいりますので少々お待ちください」と説明し、定員8人の平屋を通り往復4回「失礼いたします」と言い、準備室の鍵を開けて閉めて・・・手間がかかるのだ。更に戻る途中で「おつまみください」と言う客が「どれにしようかな。これ美味しいの?」などと迷われたら、待たせた客のことを思い、イライラしてしまう。
そこで「二段積み」の技を使うアテンダントさんがいる。カゴの中に350mlのビールを乗せるが、その下に、横にしたビールを4本くらい収納する技だ。(↓こんな乗せ方だ)
上に乗ったビールは、上の方がカゴから はみ出るが、落ちはしない。4本多く積むと、重さにして約1.5kg重くなって大変だ。しかし、待っている乗客がいるわけだから、頑張って二段積みをするのだと、グリーンアテンダントさんから聞いたことがある。
こういう技を活用して頑張るアテンダントさんに、拍手(パチパチ)
実は、更に上を行く技を見たことがある。私が認定(?)したカリスマアテンダントさん4人の中の一人だが、正立二段積みとでも言う技を使っていた。
下のビールを横にしないで、タテに2段に積むのだ。タテに2段積むとカゴから落ちてしまいそうだが、カゴの中央にビールの2段積み、カゴの端に「水やオレンジジュースなど背が高い飲み物」と「背が高いおつまみ」を乗せて、落ちないような壁にするのである。
こんな技も駆使して、20分の乗車時間に2周巡回して、3周目に入ろうとしていた。金曜夜でほぼ満席の下り列車で、1人で2両回らなくてはならない環境なのに。新人だと1周回りきれないのに、凄すぎだ。
残念ながら、このカリスマアテンダントさんは、もう退職してしまった。この「幻の技」を使える人は、現在いないようだ。