【散り逝く桜】
今年は少し遅く咲いた桜ですが、週末の都内の桜は散り始め、葉桜になりました。
桜前線の北上にともない、東北地方ではこれからが満開となります。
桜の花びらを見ると、つくづく日本に生まれてよかったと思います。
良寛(りょうかん)禅師は、辞世の句にこのような詩を詠んでいます。
散る桜 残る桜も 散る桜
良寛
越後(新潟県)に生まれた良寛は、良寛和尚(おしょう)さんと呼ばれて、地元の人々から慕われていました。とりわけ子どもたちは、良寛が大好きだったようです。良寛もまた、子どもたちを愛しました。それは良寛は、「子供の純真な心にこそ誠の仏の心が宿る」と考えていたからでした。
ですからいつも衣の懐に手毬やおはじきを入れて、無邪気に子どもたちと遊んでいたといわれています。
このような逸話が残っています。
ある日の夕暮れ時です。良寛は子どもたちと隠れん坊をして遊んでいました。いつもは鬼役をかって出るのですが、その日は自分も隠れることになり、田んぼの納屋に実にうまく隠れました。日が暮れてすっかり暗くなりましたが、鬼だけでなく、子供たちみんなは、良寛だけを探すことができません。諦めた子どもたちは家に帰ってしまいました。翌朝早くに農夫が田んぼに来ると、そこに良寛が居たので、驚いて大きな声を出してしまいました。そうしたら良寛は、「静かに!そんな大声を出せば、子供たちに見つかってしまうではないか」と言ったというのです。
いかがです。良寛にはこのような類いの話がたくさん伝えられています。子供向けの童話などにも紹介されることによって、良寛和尚に対する親しみ深い印象は、現在にもこの地方にしっかり伝わっています。
良寛は人生の儚さをよく知っていました。
先の詩は、私たちの命を散り逝く桜に例えているのです。命が燃え尽きようと、永らえようと、それもまた散り逝く命に変わりはないと言い切っているのです。
桜は咲いた瞬間から、やがて散りゆく運命を背負っています。人の命とて同じなのです。
今週の日曜日、調布市にて龢法(茶道)の教授をしてまいりました。そのお宅のお茶室からは、見事な桜が見えるのですが、あいにくの葉桜となりかけていました。しかし私には、一枚一枚とゆっくり散る小さな桜の花びらに、なんともいえぬ哀愁を感じるのでした。
亭主が用意してくださいました和菓子の名は、「葉桜」。如何にも叙情的な嗜好に感服いたしました。
私は満開の桜より、その命を精一杯生き抜いた散り際の桜や、残りし桜に日本人の潔(いさぎよ)さなる「武士(もののふ)」の気概を惟います。
「咲いたからには散るのは覚悟」とは、実に厳粛な道理なのです。
さて、良寛は「桜」を通して、人生の「諸行無常」を言い残しています。
どんなに愚かな自分でも、生かされている限り、命が尽きるまで、精一杯生きてやる。その覚悟を持ちなさい。と、自分にも人にも言わんとしているのです。
良寛の師である国仙(こくせん)和尚は、良寛に印可(師家と呼ばれる禅宗に於る師が、弟子がその道に精通したと認めた場合に与える許可のこと)を与える際に「良寛」と「大愚」という二文字を入れて、「良や愚の如く、道うたた寛し」と、「大愚(だいぐ)良寛」と名付けました。
良寛和尚はその「大愚」の名をとても気にいっていたといわれます。「大きな愚か者」一般にはそのように解釈されるでしょうが、「執着すべきものは何も無い」と自覚して、妄想煩悩の無明の境地から脱した良寛和尚こそ、人生の達人だったのです。
合掌
災難に逢う時節には、災難に逢うがよく候。
死ぬ時節には、死ぬがよく候。
うらを見せおもてを見せてちるもみぢ。
良寛大愚
釈 正輪 拜
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