【釈 正輪 メルマガ 4月2日号】 日々是好日 | 自灯明寺

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釈 正輪 オフィシャルブログ


【災害に於ける心のケア】

 能登半島地震の被災者の方からの相談です。
これは珠洲市で激しい揺れを経験された檀家さんの話です。

 自宅は幸い無事でしたが、今までに経験したことのないような揺れで、十一歳の娘はそれ以来一人で留守番が出来なくなり、親と離れるのを怖がるようになりました。また、五歳の息子も、スーパーなどの大きな建物の中に入ることを怖がり、「早く出たい!」と言います。
子どもたちには、どのようにケアをしてあげたらいいのでしょうか教えてください。

          (五十代女性)

 新年早々能登半島を中心に、日本海側最大級といわれる大きな揺れと津波に襲われました。
被害に遭われた方々には、心よりお見舞いを申し上げます。

 子どもの心のケアは、これからが大切です。必要なインフラの復旧、食糧や生活必需品の調達とともに、必要となってくるのが、心のケアです。大人でさえ大変な恐怖感に襲われたのですから、子どもたちの不安や恐怖は計り知れません。そのうえ子どもたちは、なかなか自分の辛さを言葉にして表現することが出来ません。

その結果、何ヶ月、さらには何年もしてから、その時のトラウマ(精神的な外傷)が表面化してくるということがあります。
事実、東日本で被災された方々も、未だ言うに言われない不安に襲われています。

 地震からすでに二ヶ月あまり経とうとしていますが、心のケアは寧ろこれからが本番と言えるのです。

 このような大きな災害に見舞われた時の子どもの心のケアについて、わたくしはこのようにお話をしました。

 先ず、少しでも安心感を与える、子どもに分かる言葉できちんと状況を説明する。
このような災害時の心のケアのために、何より大切なのは、「安心・安全」という感覚です。
子どもが不安がったり、怯えたりした時には、抱きしめたり、側にいたりするようにして、少しでも安心感を与えてほしいと思います。

 一人で留守番ができなくなることも、このような災害に遭えば当然有り得ることです。
子どもには分かる言葉で、現在の状況を説明してあげてください。
大人はニュースなどで、それなりに現在の状況を把握していますが、特に小さい子どもは、何も知らされていませんから、子どもに分かる言葉で、

「大きな地震で家が壊れちゃうかもしれないから、避難場所に行くからね」とか、「ここは海からだいぶ離れているから、津波は来ないから大丈夫だよ」など、状況を説明してあげてください。それによって、過剰な心配をしなくてすみます。

 このような災害に遭った時に、子どもが出してくる特徴的な行動があります。

 特に小学生の低学年までに、そのような傾向が見受けられます。
一つは、甘えが酷くなります。親からくっついて離れない、親がトイレに行くにも後をついてきます。
保育園でも先生の側を離れない。抱っこを求めたり、赤ちゃん返りをすることもあります。或いは、急に喋れなくなる。おむつが外れたのに、おねしょをするようになるなどは、子どもの不安の表れなので、しっかり受け止めて、安心感を与えることが必要です。

「甘えるんじゃないの!」とか、「自分で出来るでしょ!」などと、突き放すような言葉を言うと、かえって甘えが酷くなったり、長引いたりすることがあります。寧ろ、そのような甘えをしっかり受け入れて、安心感を与えると、早く回復していくことが多いのです。

 またもう一つの傾向は、逆に、災害の後に、我儘になったり、怒りっぽくなったり、癇癪を起こしたりするようにもなります。

 このような行動は、災害のストレス反応とは考え難いため、親もただでさえ精一杯なので、子どもの我儘に、ついつい腹を立てて叱ってしまいます。子どもは不安な時には、我儘や癇癪という形で、サインを出してくることもあると知っておくとよいでしょう。

 他に気をつけることは、災害のテレビや動画を頻繁に見せないことです。
わたくしは以前、東日本の避難所で、幼児が地震ごっこや津波ごっこをしている様子をよく見かけました。親は止めなさいと注意をするのですが、それは子どもたちが、自分の辛い体験を、遊びの中で浄化して、不安を和らげようとする行動でもありますから、あまり禁止しないほうがよいのでは、と話をしたことがありました。

 子どもたちが登校をしぶったり、不登校になったり、腹痛、頭痛を頻発に訴えるようにもなります。

 いままで子どもについて話をしてきましたが、実は被災者、被災地の大人も、多大なストレスを抱えています。

 この原稿を書いているわたくしは、丁度、福島県南相馬市に慰問で来ているところです。
被災者の方々は、二ヶ月、三ヶ月と時間の経過とともに、複雑な精神状態に落ち入ります。
その頃には、心の疲れが顕在しやすく、災害が起こって間も無くは、同じ被害を経験した者同士の連帯感が生まれ、それが強くなります。一種の高揚した「ハネムーン期(ハイテンションの状態))になるようです。
能登半島で被災された方々は、その時期に差し掛かっていると思います。

 ところが、そのような時期が過ぎて、インフラも復旧し、元の生活が始まろうとした時に、今まで蓄積した心の疲れが出てきます。
絶望感にとらわれたり、国や行政、近隣住民に対して怒りが湧いてきたりします。いわゆる「幻滅期」の状態に落ち入ります。

 最近聞いた言葉ですが、「はさみ状格差」といわれる、地域によって、インフラの整備の復興格差が、広げたはさみのように時間とともに拡大を生じる現象が起こるのです。その結果、今度は、人と人との怒りのぶつかり合いが起こってしまいます。
メンタルヘルスにも多大な影響が及ぶこともあります。

 この相談をされた方のように、わたしたちは、子どもの被災やトラウマを心配しますし、それは大切なことなのですが、実はこの相談をされた親御さんも、また被災者なのです。
子どもと同時に、大人の心のケアも、忘れてはならない大切なことなのです。

 大人が倒れてしまっては、子どものケアが出来ません。ですから大人のケアも大事だとわたしは考えます。
そのためには、人に話を聞いてもらう、人に助けを求める。ときには負担を肩代わりしてもらう、そしてしっかり休みを取る。自分自身を癒す時間を持つことが、子どものためにも必要なことなのです。

              合掌

 被災した地域が一刻も早く復旧され、被災された人々が一日もはやく安寧に暮らせ、親子ともに心穏やかに過ごせる日々が来ますよう、心より念じております。

       釈 正輪 九拜





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